合併は市町村破壊のリストラ
露骨な合併誘導
いま市町村合併が、「平成の大合併」を国が煽りながら、「アメとムチで進めていく」(小泉首相・01年9月全国知事会議)という事態になっています。
合併とは、端的に言って地域の中心となっている役場をつぶすことです。地域から直接はたらく場を奪うだけでなく、関連職場・職業をもつぶします。仕事は合併後の中心部の業者へと流れ、社会福祉協議会や一部事務組合は再編されます。臨時職員やパートには、解雇が待っています。
郵便局、電電(現NTT)、農漁協、小中学校、等々が消え、ついには役場が消えるのです。合併は、文字どおり町や村、地域の破壊といってよいでしょう。
自治体が大きくなれば、役場は住民から遠くなり、顔が見えなくなります。住民の目線から離れた行政は、権力化し官僚化します。
合併反対は、地方自治、住民自治を守るたたかいであり、地域のはたらく仲間、農漁民、小経営者の共闘の課題となっています。
合併をめぐる綱引き
なぜこれほど合併が急がれるのでしょう。2005年3月までの時限立法である『合併特例法』の期限前に合併すれば、10年間は合併前の市町村に交付されていた「地方交付税」の合算額が保障されます(その後5年間も逓減措置)。また、合併にともなう建設事業に対して「合併特例債」が認められ、返済の7割を国が負担します。一方、合併を拒否すれば、小さな町や村ほど段階的に多く配分されていた交付税が削減される、「段階補正の見直し」というムチが用意されています。
地方自治体の側も、「地方分権」の推進によって、地方交付税や国庫補助金に頼れなくなる、「地方の自立」が避けられないのだから、「もらえる時に合併しておこう」という動きになっています。
いずこも危機的な財政状況のなかで、総務省ホームページ『試算してみよう!合併特例債』で、アメの部分が即座に計算されるのですから、優遇策は魅力であるに違いありません。しかし本来は、財源の分権など地方の財政基盤の強化が基本のはずです。
自治体再編は何を目指すか
産業の衰退・空洞化と都市部への人口流出によって、地方自治体は厳しい状況に置かれています。
市町村合併は、民間リストラ同様、カネのかかる弱小自治体は整理統合してつぶし、大きくて「競争力」のある自治体に集中的に資金投入するというものです。東京・大阪・名古屋など巨大都市圏の「再生」、その先に、道州制を念頭においた都市再編と周辺部の切
り捨てという構図が見えます。
さらに、市町村合併と並行して「県」も空洞化しています。それも、市町村へ事業が移譲され、離島山間地を管理する一方、「総合的な企画と調整」と称して、ますます国の代官化していくのです。市町村合併の次は、その県同士の合併なのです。
このような国のための効率論としての自治体再編は、「官と民との役割分担」「公益の民間開放」と一体となって進み、規制緩和・広域化によって、あらゆる公益部門が儲け・投資の手段となり公的責任は放棄されるのです。その頂点に、外交・軍事・司法などに特化した「強い国家」があります。
巨大資本は、活動の基盤をますます海外に移転するなかで、地方経済や国内統治にカネと時間をかけるのではなく、海外を中心とした多国籍的な企業活動のバックアップを求めるようになります。自治体再編とは、これに応えながら国内統合のほころびに対処する統治の再構築にほかなりません。
合併がもたらすもの
このような動きは、自治体に住む者・働く者にとっては、何をもたらすのでしょうか。
国の責任を棚上げにし、地方の「自立」が強制されても、結果は住民と自治体労働者を犠牲とした安上がり行政でしかありません。
「特例債」といっても、しょせんは借金です。それも、この間の公共事業と同様の土建関係に使われて、維持管理費の負担だけが残る、というのが関の山です。
総務省が宣伝する「サービスは高く、負担は低く」は幻想でしかありません。規模が大きくなることで新たに適用となる税金もあるし、合併後の公共料金の改定値上げも行われています。すでに財政危機の下で、自治体労働者には、人員削減・賃金抑制などの合理化が進んでいますが、合併はこの動きをさらに強めるものです。
自立した自治体同士であれば、合併などしなくても、住民参加に留意しながら、課題ごとに「一部事務組合」や「広域連合」という広域的な制度を使って協力しあうことも考えられます。
ごく一部だけで決められたり、住民に知らされないまま進められている合併は認められません。バラ色の宣伝に惑わされたりしないためにも、後年度の負担を明らかにする上でも、早い段階からの情報公開が不可欠です。
何よりも住民の意思による決定が確保されることが必要です。
(平成17年3月31日までに行われた市町村の合併について適用)
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(第1条) |
市町村行政の広域化の要請に対処し、自主的な市町村の合併を推進し、あわせて合併市町村の建設に資することを目的とする。
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(第3条) |
合併をしようとする市町村は、合併の是非を含め、市町村建設計画の作成やその他合併に関する協議を行うための協議会を設置する。
合併協議会の会長及び委員は、関係市町村の議会の議員、長、その他の職員、学識経験者の中から選任する。このほか、委員については、請求代表者又は同一請求代表者を加えることができる。
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(第4条、第4条の2) |
有権者の50分の1以上の者の署名をもって、市町村長に対して、合併協議会の設置の請求を行うことができる。
全ての関係市町村で同一内容の請求が行われた場合には、全ての関係市町村長は、合併協議会設置協議について、議会にその意見を付して付議しなければならない。
合併協議会設置協議についての議会審議においては、請求を行った代表者は意見を述べる機会を与えられなければならない。
議会の審議において合併協議会設置協議が否決された場合には、市町村長による請求又はこれがなかった場合における有権者の6分の1以上の署名による請求により、合併協議会設置協議について選挙人の投票に付するよう請求することができる。有効投票総数の過半数の賛成があったときは、議会の議決があったものとみなす。
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(第5条) |
合併市町村がハード・ソフト両面の施策を総合的かつ効果的に推進するため、合併市町村、都道府県が実施する事業等を内容とする計画を作成する。
また、合併市町村は、あらかじめ都道府県知事に協議し、議会の議決を経て、計画を変更することができる。
なお、住民発議により設置された合併協議会においては、市町村建設計画の作成等の状況を、合併協議会の設置の日から6ヶ月以内に請求代表者に通知するとともに、公表しなければならない。
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(第5条の2、第5条の3) |
平成17年3月31日までに、合併する場合に限り、市制施行のための要件を、人口3万以上とするとともに、連たん要件等の人口以外の要件を不要とする。
なお、市の全域を含む区域をもって平成17年3月31日までに行われる新設合併にあっては、市制施行のための要件をいずれか備えていない場合でも備えているものとみなす。
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(第5条の4) |
合併前の関係市町村の協議により、旧市町村の区域ごとに、合併市町村の長の諮問により審議又は必要な事項につき意見を述べる審議会(地域審議会)を置くことができる。
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(第6条、第7条) |
(1) 新設合併の場合
1) 定数特例を活用する場合(設置選挙を実施)
合併市町村の議員定数の2倍まで定数増(最初の任期)
2) 在任特例を活用する場合
合併前の議員が2年までの期間在任が可能
(2) 編入合併の場合
1) 定数特例を活用する場合(増員選挙を実施)
増員選挙及び次の一般選挙による議員の任期まで定数増が可能
定数増:(編入先の旧定数)×(被編入の旧人口)/(編入先の旧人口)
増員選挙による任期:編入先の市町村の議員の残任期間
2) 在任特例を活用する場合
編入先の議員の任期まで在任が可能
さらに次の一般選挙による議員の任期まで定数増が可能
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(第7条の2) |
関係市町村の議会の議員のうち、合併がなければ退職年金の在職期間の要件(在職12年以上)を満たすこととなる者は、当該要件を満たしているとみなす。
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(第8条) |
選挙による委員は、一定数以内、一定期間に限り、引き続き在任することができる。
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(第9条) |
一般職の職員が引き続き職員の身分を保有するようにし、また公正に取り扱わなければならない。
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(第9条の2) |
一部事務組合又は広域連合の構成団体のうち一団体以外のすべての市町村が、新設合併又は編入されることにより廃止される場合には、関係地方公共団体の協議による規約の改正等によって、合併後も当該一部事務組合又は広域連合が存続することができる。
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(第10条) |
合併が行われた日の属する年度及びこれに続く5年度に限り、課税をしないこと又は不均一の課税をすることができる。
合併により新たに人口30万以上の市となった場合における当該市に対する事業所税の課税団体の指定は合併の日から起算して5年間は行わないものとする。ただし、合併市の人口が、30万を合併関係市町村の人口のうち最も多いもので除して得た数値に、合併市町村の人口を乗じて得た人口以上となった場合はこの限りでないものとする。
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(第11条) |
合併が行われた日の属する年度及びこれに続く10年度について、合併関係市町村が合併しなかった場合と同様に算定し、その後5年度については段階的に増加額を縮減する。
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(第11条の2) |
(1) 市町村建設計画に基づく次の事業又は基金の積立てで特に必要と認められるものは、合併が行われた日の属する年度及びこれに続く10年度に限り、地方債を充当でき、元利償還金の一部は、基準財政需要額に算入する。
1) 一体性の速やかな確立・均衡のある発展のための公共的施設の整備事業等
2) 地域住民の連帯の強化・旧市町村の区域の地域振興等のための基金の積立て
(2) 「市町村建設計画」を達成するための事業に要する経費に充当する地方債について特別の配慮をする。
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(第13条) |
災害等に対する国の財政援助につき、合併市町村が不利益とならないようにする。
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(第14条) |
流域下水道の関係市町村が、合併により一の市町村となった場合、都道府県と関係市町村の協議により、合併の日から起算して10年を経過する日の属する年度の末日までの範囲で当該協議で定める期間に限り、当該下水道を流域下水道とみなし、下水道法の規定を適用する。
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(第15条) |
一定期間に限り、従前の選挙区によるか、または合併市町村が従前に属していた郡市の区域を合わせて一選挙区を設けることができる。
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(第16条) |
(1) 国の役割
1) 都道府県及び市町村の自主的合併に関する助言、情報の提供等を実施
2) 合併市町村の建設に資するため必要な財政上の措置その他の措置
(2) 都道府県の責務
1) 市町村の自主的合併に関する助言、情報の提供等を実施
2) 市町村の求めに応じた市町村相互間の必要な調整
3) 市町村建設計画の達成のための事業の実施その他の必要な措置
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(第16条の2) |
都道府県知事が公益上必要と認める場合に、関係市町村に対し合併協議会の設置の勧告をする場合には、あらかじめ関係市町村の意見を聴くとともに、勧告した場合には、その旨を公表しなければならない。
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(第17条) |
この法律の規定は、地方交付税の額の算定に関する規定(第11条及び第11条の2第2項)を除き、特別区にも適用される。
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(第18条、第19条) |
合併協議会の設置の直接請求における署名の収集については、署名に関する自由妨害、署名の偽造、署名数の増減、関係書類の抑留・毀損・奪取、違法な氏名代筆行為、違法な手続による署名収集を行った者に対して罰則が適用され、署名の効力を市町村選挙管理委員会において決定する場合には、出頭・証言の拒否、虚偽の陳述を行った者に対して罰則が適用される。
[参考]過疎地域自立促進特別措置法(過疎法)(平成12年法律第15号)上の合併特例
(平成12年4月1日から平成22年3月31日まで)
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(過疎法第33条第2項) |
過疎地域の市町村を含む合併があった場合には、合併市町村が過疎地域に該当しない場合であっても、合併市町村のうち旧過疎地域のみを過疎地域とみなして、過疎法上の措置をすべて適用する。
平成の大合併とは何だったのか??
一つには小さな政府をめざし、浮いた金で企業に投資すること。その延長に道州制がある。保守の知事ですら反対する始末である。
二つには過疎過密を奨励し、より効率的な政府をめざし、そのことが国土崩壊を招くこと。対極に福祉切捨てが出てくる。
三つにはファシズムに走り戦争への道に進むこと。徹底的に強行することで、他人の言葉に耳を課さない国会運営など。
四つには強行採決を繰り返すこと。支持(人気があるとき)が上がっているときに、徹底的にファシズムに進むこと。
五つには反対するものには処分などを乱発することで強行することなどである。
六つには排外主義(ナショナリズム)を利用すること。拉致問題である。
などではなかろうか。このような政権には「民主主義」のかけらもない。
現に地方自治体が赤字再建団体の危機にせまられている。自治体のせいではないのである。資本主義たる所以である。このような不安定な社会は必要ないと思う。夕張市では職員を減らし、福祉を徹底的に切り詰めている。
地方債とは
地方公共団体が国や金融機関から借り入れる資金のうち,1会計年度を越えて返済される債務のこと。証書借入れと証券発行の2形式があり,また都道府県債・市町村債等の区別がある。
地方公共団体の歳出は原則として地方債以外の歳入を財源としなければならないが,地方財政法に基づき,公営企業費,出資金,貸付金,災害復旧費等の財源の場合に限り地方債をあて得る。
また,1970年代中頃から一般財源の不足を補うための財源対策債も発行されている。起債には地方議会の議決と自治大臣および知事の許可が必要であるが,以前から自由化が要求されている。
その総額と種類は自治・大蔵両省が毎年策定する地方債計画により規制され,資金源の大半は国の財政投融資。
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