戻る

日本の貧困を考える

                                                                 2009.1.23


1 日本の現状

はじめに

日本において、貧富の格差が拡大している。90年代半ば以降、所得分配の不平等度が高まっている。95年〜98年の間にかけて、日本の貧困レベルが頻度、強度、不平等度、所得格差も同時に拡大している。

就労世代に関していえば、92年から01年にかけての10年間は、多くの所得を手にする「富裕層」と、わずかの所得しか手にできない「貧困層」の所得格差に拡大が見られた10年間であった。

現在の日本の状況は、民間労働者の1,022万人(22.8%)が年収200万円以下となっています。全世帯の3割、稼働世帯の2割がワーキング・プアという状況です。国民健康保険の滞納世帯が、2006年時点でも481万世帯、全世帯の約2割という状況です。国民年金の未納率も全体の4割近い実態にあります。

生活保護受給者も大きく増加する傾向を示しています。

  また、多重債務者の存在も2005年では5件以上の債務者230万人、これら平均負債額230万円となり、自己破産者も2005年では約18.4万人 1995年時の約4.3万人から大きく増加しています。

  自殺者も2005年で全国で約3.2万人が自殺しています。

  このような状況が私たちの周りにも大きく顕在化してきています。

 問題点を整理すると

@     年間所得200万円以下の非正規雇用労働者が1,300万人に増加・・・その実態は、生活保護受給世帯を下回る暮らし 6世帯に1世帯が貧困ライン以下

A 低い捕捉率

1億2,000万人の15.3%  =  1,800万人  貯蓄ゼロ世帯 23% 

生活保護受給者150万人

    1,000万人生活困窮者がいるとしても内850万人は生活保護を受けていない。

B 国民年金の未納率 2004年現在 36.6%までに上昇

C 国民健康保険制度の揺らぎ

  増え続ける国保加入者と増える未納者 国保の未納者・滞納者は480万人

                    市町村加入世帯の約20%

  国保財政の問題           国からの補助金が減少

                    国保税の引き上げ

  国民健康保険証の未交付問題     資格証明書と短期交付証の発給

 貧困を考察する場合は、生きていくうえで、最低限必要な額はいくらかという視点だけではなく、健康で文化的な生活水準を維持するにはどうすればいいかという視点や、貧困層が貧困から脱出するための展望を抱けるような社会環境が整っているかどうか、あるいは、非貧困層が貧困層に比べてどれだけ富を得ているのかといった視点も重要である。

2 日本と世界の貧困率

2004年OECD調査 日本の貧困率 2000年度15.3% 

【2004年OECD諸国の貧困率】

国 名

貧困率 %

備  考

1

メキシコ

20.3

2

アメリカ

17.1

3

トルコ

15.9

4

アイルランド

15.4

5

日本

15.3

※先進国中2番目の貧困率

6

ポルトガル

13.7

7

ギリシャ

13.5

8

イタリア

12.0

9

オーストラリア

11.9

10

スペイン

11.5

11

イギリス

11.4

12

ニュージーランド

10.4

13

カナダ

10.3

14

ドイツ

10.0

15

オーストリア

 9.3

16

ポーランド

 8.2

17

ハンガリー

 8.1

18

ベルギー

 7.8

19

フランス

 7.0

20

スイス

 6.7

21

フィンランド

 6.4

22

ノルウェー

 6.3

23

オランダ

 6.0

24

スウェーデン

 5.3

25

チェコ

 4.4

26

デンマーク

 4.3

  平  均

10.3

○ アメリカ社会の貧困の特色

@     アフリカ系を初めとする多様な人種・民族 マイノリティに貧困が集中

A     相対的に移民の貧困率が高い。

B     激しい競争社会で貧富の差が拡大

C     努力に報いる思想に経目する人が多く、貧富の格差が大きいことに抵抗感がない。

D     小さな政府を国是とするので、福祉制度を含めた社会保障政策は質量ともに小さい。

○      イギリスの貧困

 絶対的貧困 相対的貧困 社会的排除

 貧困のキーワード ・・・ @女性  A人種差別 B高齢化 C障害者 D下層階級

○ 北欧で貧困者の少ない理由

@     高成長(マクロ経済)

A     所得分配の平等性

B     福祉政策の成功

3 社会保障における最後のセーフティネット生活保護制度

1)生活保護制度とは

生活保護法第1条

 憲法第25条の理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

憲法第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 最低生活の保障

@      資産、能力等をすべて活用することが保護の前提    

・    不動産、自動車、預貯金等の資産

・    稼働能力活用

・    扶養義務者からの扶養

・    年金、手当等の社会保障給付等

      保護の開始時に調査

       (預貯金、扶養義務者の状況及び扶養能力、年金、手当等の額、

        傷病の状況等を踏まえた就労の可否)

     保護の適用後にも届出を義務付け

A      支給される保護費の額

   厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費から収入を差し引いた差額   

  を保護費として支給

最  低  生  活  費

収     入

保 護 費    

  収入は、就労による収入、年金等社会保障の給付、親族からの援助を認定する。

 自立の助長

・    世帯の実態に応じて、年数回の訪問調査

・    就労の可能性のあるもの者への就労指導

2) 生活保護基準の内容

生活を営む上で生じる費用の例

扶助の種類

支  給  内  容

日常生活で必要な費用

(食費、被服費、高熱水費等)

生活扶助

@     食費等の個人的費用(年齢別に算定)

と A 光熱水費等の世帯共通的費用(世帯人員別に算定)を合算して算出。

また特定の世帯については加算が上乗せされる。(母子加算(段階的に2009年で廃止)、障害者加算、児童養育加算等)

(老齢加算(段階的に2006年で廃止))

アパートの家賃、地代、住宅補修、

住宅扶助

定められた範囲で実費を支給

義務教育を受けるために必要な学用品、教材費、給食費

教育扶助

定められた基準額と必要な額を支給

医療費、治療材料費

医療扶助

費用は直接医療機関に支払う。(現物支給)本人負担なし

介護サービスの費用

介護扶助

費用は直接介護事業者に支払う。(現物支給)10%の自己負担分を保護費で支払う。

本人負担なし

出産費用

出産扶助

定められた範囲内で実費を支給

就労に必要な技能の習得等に係る費用

生業扶助

定められた範囲内で実費を支給

2005年から高等学校の就学費用が認定

葬祭費用

葬祭扶助

定められた範囲内で実費を支給

3) 生活扶助基準の例(平成20年度)

 地域における生活様式や物価差による生活水準の差を生活保護基準に反映し、全国の市町村を6区分に分類し、それぞれに基準を設定している。

2級地―1

(富山市、高岡市)

3級地―1

(左以外の市町村)

1級地―1

(東京都区内等)

標準3人世帯(33歳、29歳、4歳)※

150,770円

136,350円

165,180円

高齢者単身世帯(68歳)

72,370円

65,210円

79,530円

高齢者夫婦世帯(65歳、65歳)

109,440円

98,620円

120,270円

母子世帯(30歳、9歳、4歳)※

157,900円

143,480円

172,340円

 ※ 児童養育加算、母子加算を含む。 冬季加算を除く。

4) 生活保護の手続

                         要否判定 

   事前の相談     ⇒  保護の申請       ⇒  保護費の支給

・生活保護制度の説明

・生活福祉資金、障害者施策等各種の社会保障施策活用の可否の検討

・預貯金、保険、不動産等の資産調査

・扶養義務者による扶養の可否の調査

・年金等の社会保障給付、就労収入等の調査

・就労の可能性の調査

・最低生活費から収入を引いた額を支給

・世帯の実態に応じて年数回の訪問調査

・収入・資産等の届出を義務付け、定期的に課税台帳との照合を実施

・就労の可能性のある者への就労指導

5) 保護の実施機関 社会福祉法第14条〜第21条

1)福祉事務所

 生活保護の決定と実施に関する権限は、都道府県知事、市長、福祉事務所を設置する町村の長が有し、多くの場合、その設置する福祉事務所の長に権限を委任している。

 福祉事務所は生活保護を担当する第一線の行政機関として、その管内に居住地または現在地を有するよう保護者に対する保護を行っている。

 福祉事務所の数(H18.4.)

  全 国 1,233(内都道府県246、 市979、 町村8)

  富山県    12(うち県2、 市10)

2)現業員(ケースワーカー、地区担当員)

 福祉事務所は、所長のほか指導監督を行う所員、現業員、事務職員を置くこととされている。そのうち、生活保護の業務は社会福祉主事の資格を有する現業員が担当し、被保護者に対し担当の現業員を設定。

   配置標準   市部=被保護世帯80世帯に対して 1人

          郡部=被保護世帯65世帯に対して 1人

6)費用負担

  保護費は、国が3/4 、実施機関の自治体が 1/4 を 負担。

7)生活保護の基本原理及び基本原則

1 生活保護の基本原理

1) 国家責任の原理

第1条  この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

2) 無差別平等の原理

第2条  すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。

3) 最低生活保障の原理

第3条  この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。

4) 捕捉性の原理

第4条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。

2 民法(明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。

3 前2項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

 

2 生活保護の基本原則

1) 申請保護の原則

  第7条       保護は、要保護者、その扶養義務者又はその他の同居の親族の申請に基いて開始

するものとする。但し、要保護者が急迫した状況にあるときは、保護の申請がなくても、必要な保護を行うことができる。

2)基準及び程度の原則

第8条 保護は、厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする。

2 前項の基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであつて、且つ、これをこえないものでなければならない。

3)必要即応の原則

第8条       保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実際の必要の

相違を考慮して、有効且つ適切に行うものとする。

4)世帯単位の原則

第10条 保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする。但し、これによりがたいときは、個人を単位として定めることができる。

8)被保護者の権利及び義務

1 被保護者の権利

1)不利益変更の禁止

第56条   被保護者は、正当な理由がなければ、既に決定された保護を、不利益に変更されることがない。

2)公課禁止

第57条   被保護者は、保護金品を標準として租税その他の公課を課せられることがない。

3)差押禁止

(差押禁止)

第58条   被保護者は、既に給与を受けた保護金品又はこれを受ける権利を差し押えられることがない。

4)不服申立て

(審査庁)

    第64条    第19条第4項の規定により市町村長が保護の決定及び実施に関する事務の全部又は一部をそ   の管理に事する行政庁に委任した場合における当該事務に関する処分についての審査請求は、都道府県知事   に対してするものとする。

(裁決をすべき期間)

第65条 厚生労働大臣又は都道府県知事は、保護の決定及び実施に関する処分についての審査請求があつたときは、50日以内に、当該審査請求に対する裁決をしなければならない。

2 審査請求人は、前項の期間内に裁決がないときは、厚生労働大臣又は都道府県知事が審査請求を棄却したものとみなすことができる。

(再審査請求)

第66条 市町村長がした保護の決定及び実施に関する処分又は市町村長の管理に属する行政庁が第19条第4項の規定による委任に基づいてした処分に係る審査請求についての都道府県知事の裁決に不服がある者は、厚生労働大臣に対して再審査請求をすることができる。

2 前条第1項の規定は、再審査請求の裁決について準用する。この場合において、同項中「50日」とあるのは、「70日」と読み替えるものとする。

2 被保護者の義務

1)譲渡禁止

第59条   被保護者は、保護を受ける権利を譲り渡すことができない。

2)生活上の義務

第60条   被保護者は、常に、能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、その他生活の

維持、向上に努めなければならない。

3)届出の義務

第61条   被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があつたとき、又は居住

地若しくは世帯の構成に異動があつたときは、すみやかに、保護の実施機関又は福祉事務所長にその旨を届け出なければならない。

4)指導又は指示に従う義務

第62条 被保護者は、保護の実施機関が、第30条第1項ただし書の規定により、被保護

者を救護施設、更生施設若しくはその他の適当な施設に入所させ、若しくはこれら

の施設に入所を委託し、若しくは私人の家庭に養獲を委託して保護を行うことを決

定したとき、又は第27条の規定により、被保護者に対し、必要な指導又は指示をし

たときは、これに従わなければならない。

2 保護施設を利用する被保護者は、第46条の規定により定められたその保護施設の管理規程に従わなければならない。

3 保護の実施機関は、被保護者が前2項の規定による義務に違反したときは、保護の変更、停止又は廃止をすることができる。

4 保護の実施機関は、前項の規定により保護の変更、停止又は廃止の処分をする場合には、当該被保護者に対して弁明の機会を与えなければならない。この場合においては、あらかじめ、当該処分をしようとする理由、弁明をすべき日時及び場所を通知しなければならない。

5 第3項の規定による処分については、行政手続法第3章第12条及び第14条を除く。)の規定は、適用しない。

5)費用返還義務

第63条 被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。

4 先進国の公的扶助と日本の生活保護の比較

先進国の公的扶助

日本の生活保護

共通点

社会保障の位置

最後のセーフティネット

財   源

租   税

要   件

資産調査付

相違点

方   式

カテゴリー別扶助

一般扶助

扶助の対象

制限的扶助

包括的扶助

保障の対象

最低限の所得保障

生活の最低限保障

資産調査の対象

簡素化、緩和化

厳格化


5 生活保護の状況

生活保護世帯数は、1980年以降は、84年度の79万世帯をピークに減少の傾向を減少の傾向を見せていたが、93年度以降、再び上昇している。

1)1980年代前半から急激に保護者の数が減少したのは、次の二つの理由がある。

  第一に、経済が好調だった。(『平成景気』(1986〜1991))

バブル経済は、1986年11月から1991年2月までの51ヶ月間続き、1987年度から

4年間の実質GDP伸び率は4%を超えた。

  

第二に、生活保護制度の適正化、すなわち厳しい審査が課されるようになった。

70年代後半に暴力団の保護費不正受給が表面化したことから、81年(昭和56年)

に保護費の適正化対策として「生活保護の適正化の推進について」いわゆる「123号通知」を出し、その結果、非貧困層への濫給が沈静化した。

※ 1981年(昭和56年)11月17日付け社保第123号

厚生省社会局保護課長・監査指導課長通知「生活保護の適正実施の推進について」

・近時、暴力団関係者等による生活保護の不正受給事件が再三発生

        ・保護適用者の資産及び収入の把握を適切に、不正受給の防止…

2)1990年代後半以降、生活保護の受給を余儀なくされる世帯の拡大が急速に進行している。受給世帯の拡大の原因は、

  第一に、高齢化の進展(被保護世帯に占める高齢世帯の割合は、1975年は4.9%だったが、2003年には19.2%と急増している。)被保護世帯に占める高齢者世帯の割合は、46.3%(2003年)。

    高齢者世帯(とりわけ単身の高齢者世帯)に生活保護基準を下回る多数の貧困世帯が存在している。日本の高齢化社会は高齢の貧困者を多数生んでいる。

  第二に、高齢者世帯についで多く、生活保護世帯の増加に影響を与えているのは、傷病・障害者と母子世帯である。

  第三に、保護開始理由に占める「働きによる収入減少・喪失」の割合が近年大きく増加している。90年代後半以降、景気の低迷を背景にして、多くの企業が労働者の解雇・減給、正社員比率の縮小など本格的な人件費削減に着手したが、そのしわ寄せが、「その他の世帯」の生活保護受給の増加に現れた。

  90年代半ば以降、世帯主の年齢が30歳未満の若年層、30〜49歳の壮年層の貧困率が上昇し、所得格差も拡大傾向にある。

高齢者世帯、母子世帯、傷病・障害者世帯が、被保護世帯総数の約9割を依然として占めていることからみて、「健康だけれど職がない」、「健康で働いているけれど最低限必要な収入には達しない」、若年、壮年の世帯主で構成される低所得世帯は、基本的には生活保護制度で十分にカバーされていない。

3)捕捉率が低い原因としては、

@       相当厳格な資格審査、所得調査、資力調査が課されること。特に、この間の『水

際作戦』とも言われる状況下では、地域差はあるものの全国的に、さらに厳しい傾向にあると想定される。

A       「家族、親族に経済支援の能力があれば、生活保護の受給資格が認定されない。」

といった誤った認識が一部ではなされている。

B       そもそも生活保護に対する十分な情報を低所得世帯が入手できておらず、そのこ

とから申請を躊躇している可能性が高い。

C       権利を行使しない人が多い。(「恥」の文化?)

「生活保護を受けているものは社会からの落伍者であり、実際に生活保護を受けると福祉事務所からは自助努力の足りない怠け者というレッテルを貼られた上で、行動は事細かに監視され、生活の自由は失われる。そんな制度であれば保護を受けないで自助努力で何とか頑張るべきである」という生活保護に対する強いスィグマ(恥の烙印)の意識が醸成されている。

4)都道府県別に見た保護率 (平成19年10月現在)

※0/00=人口千人に対する保護受給者の割合

保護率の高い県(0/00)

保護率の低い県(0/00)

@ 大阪府 25.7

@ 富山県 2.3  

A 北海道 24.5

A 福井県 2.8

B 高知県 21.7

B 岐阜県 3.3

C 京都府 19.4

B 長野県 3.3

D 福岡県 18.8

D 石川県 4.1


5)富山県の保護率が低い要因については、

 1 持ち家率(79.1% 全国第1位 2005年)、

住宅面積(146.3u 全国第1位 2005年)

   勤労世帯の実収入(547,178円 全国第3位 2004年)

    が高いことに見られるように、生活の基盤がしっかりしている。

 2 離婚率(1.61‰ 全国第46位 2006年)が低いこと

 3 近年、家族意識が薄れてきているといわれるなかにあって、3世帯同居率(19.0%

 全国第5位 2005年)が高く、親類縁者で助け合う関係が比較的続いていること

などが考えられると県厚生部厚生企画課は分析している。

6 機能不全にさせられている生活保護制度
          生活保護をめぐる昨今の諸問題

経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006

骨太方針2006年  <生活保護>

・ 以下の内容について、早急に見直しに着手し、可能な限り2007年度に、間に合わないものについても2008 年度には確実に実施する。

− 生活扶助基準について、低所得世帯の消費実態等を踏まえた見直しを行う。

− 母子加算について、就労支援策を講じつつ、廃止を含めた見直しを行う。

− 級地の見直しを行う。

− 自宅を保有している者について、リバースモーゲージを利用した貸付け等を優先することとする。

・ 現行の生活保護制度は抜本的改革が迫られており、早急に総合的な検討に着手し、改革を実施する。

 地方分権推進本部「地方分権改革推進要綱(第1次)」抄 平成20年6月20日

 【生活保護】

  ○ 国と地方の協議の場を早急に立ち上げ、地方自治体が主体となった自立支援の取り組みの推進や医療扶助の在り方などぃ勝保護制度の全般について、国が責任を持つべき部分と地方が責任を持つべき部分との役割分担を踏まえた総合的な検討に着手し、平成20年度中を目途に制度改正の方向性を得る。

 地方分権推進委員会「第1次勧告」抄  平成20年5月28日

【生活保護】

制度創設以来50 年以上が経過しているが、この間大きな制度改革は行われて    

   こなかった。少子高齢・人口減少社会の到来、家族形態の変容、就業形態の変化等の社会状況の変化に現行制度は十分対応できていない。このため国・地方を通じて適正化対策を引き続き行うとともに、抜本的な改革に向けて検討を開始すべきである。                     〔厚生労働省関係〕

○  国と地方の協議の場を早期に立ち上げ、地方自治体が主体となった自立支援の取組みの推進や医療扶助のあり方など生活保護の制度全般について、国が責任を持つべき部分と地方が責任を持つべき部分との役割分担を踏まえた総合的な検討に着手し、平成20 年度中を目途に制度改正の方向性を得る。

1)老齢加算の廃止問題

生活費に相当する生活扶助に上乗せする形で、原則70歳以上の生活保護受給者に

  支給された。高齢者は、かむ力が弱いため食事への配慮が必要なほか、慶弔費が増えるなどの理由から1960年に設けられた。

地域によって支給額は異なり、東京都区部に住む単身者の場合、

2003年度は月額17,930 円だった。

04年度    9,830円
      05年度    3,760円と減額され、
      06年度に廃止された。

2008/06/26-18:55 老齢加算廃止は適法=「生存権侵害」認めず

−生活保護受給者ら敗訴・東京地裁  

70歳以上の生活保護受給者に上乗せ支給されていた老齢加算の廃止は、憲法が保障する生存権を侵害するなどとして、東京都内の受給者12人が居住地の7区 3市に加算打ち切り決定の取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は26日、「廃止には合理的な根拠があり、憲法に反するとはいえない」として訴えを棄却 した。同様の訴訟は、ほかに7地裁で争われているが判決は初めて。原告側は控訴する方針。
 訴えていたのは73〜84歳の男女各6人。
 大門匡裁判長(岩井伸晃裁判長代読)は「現実の生活水準を無視した著しく低い基準を設定したとまではいえない」と述べ、憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を下回る困窮を余儀なくされたとする原告側主張を退けた。

2)母子加算の段階的廃止  老齢加算の廃止に続いて

  → 進む生活保護基準の切り下げ

生活保護訴訟 「退くわけにいかぬ」 原告ら判決に怒り

 「子にひもじい思い」原告女性「私と子どものために闘いたい」と語る原告の多比良さん(左)と加藤団長(25日午後0時26分、広島市中区で) 「人間らしい生活を送るなというのか」――。生活保護の老齢・母子加算の減額、廃止は適法とした地裁判決に、原告らは怒りと悲しみに震えた。判決言い渡し後、地裁前で弁護士が「不当判決」と書かれた紙を掲げると、原告や支援者らは深くため息をつき、泣き出す人もいた。

 判決後に広島市中区で開いた報告集会で、加藤清司原告団長(82)は「正しく理解されれば勝てるはずだった。今は怒りしかないが、退くわけにはい かない」と激しい口調で語った。集会に参加した原告の松浦けさのさん(80)は「お正月に食べるものさえない」と窮状を訴えた。一方、判決は、厚生労働省 の専門委員会が老齢加算の減額・廃止の代替措置を求める提言をしていたことに触れ、地裁は代替措置を取らなければ提言に違反するとした。弁護団は記者会見 で、「代替措置を取っていない国の責任は重大」と非難した。

 原告の無職、多比良佐知子さん(46)は4年前に夫と別れて以来、広島市西区の借家で21〜11歳のA男A女と暮らす。両足に障害があるため働けず、「生活保護だけが頼り」と訴える。受給額は、母子加算の減額で4年前より約9万円少ない月約21万円。家賃と光熱費を払えば、残りは約10万円。「切りつめられるのは、食費だけ」。食卓に並ぶおかずは1品になった。小学5年の次男(11)に「サッカーを習いたい」とねだられた。でも「スパイクを買う余裕がないんよ」と諭した。「わかった」。次男が我慢しているのが手に取るようにわかったが、「ごめんね」と繰り返すしかなかった。来年4月の母子加算全廃でさらに8,360円が打ち切られる。「子どもたちにひもじい思いをさせてしまう」。不安が募る。老齢加算を打ち切られた無職新谷ハツヨさん(76)が1人で暮らす、尾道市内の県営住宅の部屋は夜も真っ暗だ。「電気代を節約せんといけんけえ、 電灯はつけられん」。月収は生活保護と年金の約7万円。減額で16,000円減った。朝は菓子パンとコーヒー、昼はお茶漬け、夕食はご飯と缶詰が半分だけだ。20歳で結婚して3男1女が産まれたが、後に離婚。溶接工として働き、引き取った息子2人を育てた。だが、過酷な労働で体を壊し、仕事を辞めて生活保護を受給するようになった。それでも、まだ余裕はあった。孫やひ孫に恵まれ、一緒にアイスクリームを食べた生活。でも、老齢年金の減額・廃止はそんなささやかな楽しみも奪った。最も辛かったのは仲の良かった友人の葬儀に出られなかったこと。近所の人から亡くなったと聞いても香典を用意できず、会場に行けなかった。「あんなに仲良くしていたのに……。情けなかった」と涙ぐんだ。

 大友信勝・龍谷大教授(社会福祉学)の話:「衣食住にも事欠く原告らを助けるのは国家の義務なのに、判決は生活保護受給者を師走の寒空に放り出すようなもの。貧困が広がる中、最後のセーフティーネットでる生活保護を減額してもよいとした判決は、国民を不安にさせる」(2008年12月26日  読売新聞)

3)通院移送費問題 

北海道滝川市での通院交通費(移送費)の不正受給事件を受けて、平成20年4月4日付け社援保発第0404001号厚生労働省社会援護局保護課長通知

 ・受診医療機関は原則福祉事務所管内

 ・給付内容に適正な審査(交通手段・受診日数)通院証明書の提出 レセプトとの照合

平成20年3月 厚生企画課地域福祉・保護係の説明

 「地域の実情・ケースごとに判断」を

平成20年4月25日(金)開催 全国福祉事務所長会議で社会援護局:保護課長の説明

「機械的一律に判断しない。きちんとした手続を踏んで福祉事務所が判断する」給付対象となる医療機関の適否、徒歩や自転車利用で通院可能な医療機関の検討。原則福祉事務所管内の医療機関に限る。 

福祉事務所管内の医療機関への受診が必要な場合その必要性を十分検討。

 給付対象となる交通機関の適否

    一般世帯の通院手段と被保護者の状況・障害等の状況に照らして判断する。

4)北九州市における連続餓死事件 水際作戦 ヤミの北九州方式

 北九州市の餓死・孤独死事件  『闇の北九州方式』 水際作戦

 申請の意思を有す者に対して、「保護申請書」を渡さない。

「保護辞退届」の強要   結果として、餓死事件が頻発

 ○ 2005年1月 八幡東餓死事件 68歳男性孤独死

 ○ 2006年5月 門司餓死事件  56歳男性孤独死

○ 2007年6月 小倉北自殺事件 61歳男性首吊り自殺 

「働かんものは死ねばいい」(担当CW)

○ 2007年7月 小倉北餓死事件 「辞退届」を強制的に書かされた男性が餓死 

遺書に「オニギリ食いたい」と。

5)今後予想される政策メニュー

最後のセーフティネットとしての生活保護制度はどうなる

・    さらなる生活保護基準の切り下げの動き

・    有期保護

・    医療扶助の自己負担

・    リバースモゲージ(逆担保)の本格的推進

     リバース・モーゲージとは、高齢者が居住する住宅や土地などの不動産を担保として、一括または年金の形で定期的に融資を受け取り、受けた融資は、利用者の死亡、転居、相続などによって契約が終了した時に担保不動産を処分することで元利一括で返済する制度である。

    ■「長期生活支援資金貸付(リバース・モーゲージ)制度」
同制度の目的は、貸付要件として対象世帯を市民税非課税程度または均等割程度の低所得世帯としており、生活保護、福祉的色彩が色濃く出ている。そのスキー ムは、低所得者の高齢者の自宅を担保に生活費を貸し付け、死亡等により自宅を売却などで精算する制度とし、貸付要件は、世帯の構成員が原則65歳以上で、

当該不動産に居住しており、将来にわたりその住居に住み続けることを希望していること

担保不動産が申込人の単独所有若しくは配偶者と共有である。

配偶者または親以外の同居人がいないこと

共有の場合、配偶者が連帯債務者となることを了承している。

担保不動産に賃借権、抵当権等が設定されていない。

推定相続人全員の同意を要す。

担保となる不動産の概算評価額が最低1,500万円以上ある。(福岡県は、概算評価額が最低1,000万円以上)

貸付限度額: 居住用不動産のうち土地の評価額の概ね7割相当額

貸付利率:、 年3%または銀行長期最優遇貸出金利のいずれか低い利率

貸付月額: 1か月あたり30万円以内で個別に設定

貸付期間: 貸付元利金(貸付金+利子)が貸付限度額に達するまでの期間

となっている。

(参考文献)

『日本の下層社会』1899年 横山源之助 岩波文庫

『貧乏物語』  1916年 河上肇 岩波書店

『清貧の思想』 1996年 文春文庫 中野孝次

『不平等社会日本』 2000年 中公新書 佐藤俊樹

『希望格差社会』 2004年 山田昌弘 筑摩書房

『下流社会』 2005年 光文社新書 三浦 展

『日本の貧困研究』 2006年 東大出版会

『ワーキングプア』 2006年 宝島新書 門倉貴史

『格差・貧困と生活保護』 2007年 明石書店 杉村 宏 編著

『生活保護VSワーキングプア』 2008年 PHP新書 大川典宏著

『反貧困』 2008年 岩波新書 湯浅 誠



(参考資料)
政府に提出した要望書  2009年1月30日 新社会党

 1、解雇制限法により正規・非正規雇用労働者の解雇規制を明確にすること  
 @「解雇権濫用」の具体化として整理解雇の4要件を明記すること
 A労働基準法から移行した労働契約法16条を労働基準法に戻すこと
 B同一企業で継続6ヵ月、断続1年以上勤務した労働者を、期間の定めのない雇用関係として明記すること

 2、労働者派適法を廃止すること。当面以下の改善を図ること
 @雇用は直接雇用を原則とし、製造業派遣禁止など派遣対象業種を限定すること
 A日雇い派遣、登録型派遣を禁止すること
 B派遣先企業の使用者責任を明確にし、派遣期間満了時に正社員としての採用を義務づけること。
 C労働者派遣法の厳格な運用と違反した企業への罰則を強化すること
 D派遣先労働者との同一待遇を義務化すること
 E労働者派遣導入にあたり、労働組合等労働者側の関与を義務化すること

 3、最低賃金に関して、憲法25条(国民が健康的で文化的な生活ができる)に基づいて決定すること。これに違反した企業へ刑事罰を適用し罰すること

 4、雇用保険制度の抜本改善及び再就職のあっせんについて
 @雇用保険の必要加入期間を6ヵ月に戻すこと
 A特定受給資格者については、全ての労働者に拡張適用すること
 B雇用保険の失業給付期間を、最長2年に延長すること
 C新卒(内定取消者を合む)未就労者、長期失業者へ雇用保険制度を援用し、職業訓練の実施、教育訓練給付の適用対象者とすること。若年者の雇用促進のための法整備を行うこと
 D国は、失業者の救済を目的に失対事業を行うこと

 5、雇用と雇用の安定は国民生活の安定の基盤であり、雇用・労働相談から職業紹介、法違反監視まで、労働保護行政の充実を図ること

 6、雇用と生活は一体のものであり、健康保険・年金など被雇用者保険制度の抜本的改善を図ること

 7、自治体の行う雇用・住宅対策や生活支援事業に対して、地方交付税増額で支援すること

 8、JR1047名不当解雇問題については、事件発生から23年を迎え、その解決は喫緊の課題となっている。国家的不当労働行為によって首切り自由の社会風潮を拡げたことを反省し、すみやかに「雇用・年金・解決金」の統一要求を実現すること
                                   以上