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    改正自治法の問題点と今後の取り組みに向けて   なりふりかまわぬ小泉内閣

1.昨年の通常国会で成立した、地方自治体にとって大変な法律
  今回の地方自治法244条改正による指定管理者制度は、公共団体が設置した施設を指定により公の施設の管理権限を当該指定を受けた者に委託するもの。指定管理者は処分に該当する使用許可を行うことができることとされ、自治体は、設置者としての責任を果たす立場から指定管理者を監督することとなる。このため、私法上の契約によって外部委託するいわゆる業務委託や、条例を根拠として締結される具体的な委託契約に基づき管理が委託される従来の管理委託制度とは異なり、次のようなことが可能となる。
@ 利用者からの料金を自らの収入として収受すること。(従来の管理委託制度でも可能)
A 条例により定められた枠組みの中で、地方公共団体の承認を得て自ら料金を設定すること。
B 個々の使用許可を行うこと。
  県出資法人(資本金50%以上)が所管する施設の管理を「指定管理者」に委託することが出来るように   条件整備。
  従来は、管理委託制度 … 施設運営に必要な財団を設置し管理運営を行なわせた。
  今後、 指定管理者制度… 施設を公的機関が建設設置し、運営するノウハウがあれば民間事業者(株式会社など)にも解放。
 ※1 法律的には「管理委託制度」を廃止。2006年9月までに条例を整備し指定業者を選定することが、“強制”される。
 ※2 富山県においては、県民福祉公園や文化振興財団、社会福祉総合センターなどに所管される 67施設が該当する。

2.指定管理者制度の特徴
(1) 指定管理者の対象は、自治体が指定する法人その他の団体とされ、民間事業者やNPOなどが 幅広く含まれる。また、請負には当たらないため兼業禁止の規定は適用されないが、不正防止のため条例で排除することは可能である。ただし、同時に複数の団体や個人を指定することはできない。
(2) 指定管理者は、公の施設の管理権限を委託され、条例の定めにより使用許可も可能となるが、設置者である自治体の責任で行うべき基本的な利用条件の指定は、管理の基準として条例で定められる。
(3) @使用料の「強制徴収」、A不服申し立てに対する「決定」、B行政財産の「目的外使用許可」など、法令で首長のみが行うとされる権限は委託できない。
(4) 住民の平等利用の確保や差別的取り扱いの禁止の義務づけがされており、指定管理者が違反した場合は、指定の取り消し等の必要な設置が自治体に担保されている。
(5) 地域振興の観点や、公正ワークルール、社会的価値の実現などは、制度上担保されていないが、自治体が自らの判断で条例や規制で定めることは可能である。


3.指定管理者制度と地方独立行政法人、PFI、管理委託制度などの委託管理制度の違いについて
管理委託制度
   従来の地方自治法244条による管理委託制度は、管理委託者が公の施設の設置者たる自治体との契約に基づき、具体的な管理の事務又は、業務の執行を行うもの。当該施設の管理権限及び責任は自治体が有し、施設の利用承認処分に該当する使用許可とは委託できない。
   また、管理委託者も公共団体や公共的団体及び自治体の出資法人等に限定されていた。

業務委託(改正自治法上での扱い)
   公の施設に関する業務についても、次の分野につては従来から業務委託として民間事業者に行わせることが可能であった。今回の改正により、公の施設の管理については、今後業務委託ではなく指定管理者を指定することになるが、個々の具体的業務について一部を指定管理者が第三者に委託することは可能である。
(1) 施設の維持補修等のメンテナンス、警備、施設の清掃、展示物の維持補修、エレベーターの運転、植栽の管理
(2) 入場券の検認、利用申込書の受理、利用許可書の交付(但し、管理責任や処分権限は自治体が有し、管理や処分に方法についてあらかじめ設定した基準に従う)
(3) 私人の公金取扱いの規定に基づく使用料等の収入の徴収
(4) 保有カリキュラムの策定、各種行事の企画

地方独立行政法人制度
   地方独立行政法人制度は、当該施設を自治体から分離して移管するもの。したがって設置の施設や管理については地方独立行政法人自らが行うこととなる。しかし、地域住民に密接関連性のある  事業は、特定地方独立行政法人(職員は公務員型)、それ以外(職員は非公務員型)と区分される。その率は、凡そ3:7と言われる。大学似ついては国立大学が4月以降非公務員型の独立行政法人として設置されることから、公立大学もこれに準ずるとされる。

PFIとの関係
 PFI事業については、民間事業者が整備した設置を公の設置として管理する場合、公の施設の管理は施設を整備した民間事業者が引き続き管理受託することはできなかったが、今回の改正により、当該民間事業者を指定管理者として指定することで、利用料金制の導入を含めて管理運営を行うことが可能となる。ただし、PFI事業は契約であるため競争入札となり、指定管理者制度は行政処分であることから、同一の民間事業者に対して、PFI事業の入札とあわせて公の施設の管理者として指定しなければならない。このため、指定管理者制度の主旨や公平性、透明性の観点から問題がある。
 ※3 「PFI事業」とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法であり、新しい社会資本整備手法として注目されている。2003年に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)が制定され、その後、「基本方針」や各種ガイドラインが策定されている。
http://www.mlit.go.jp/gobuild/pfi/pfi.htmを参照。


4.他自治体・他団体での状況について
 本県においては、県当局は未だその検討状況を明らかにしていないが、昨年10月の内閣府・総務省合同アンケートや、昨年12月22日の『規制改革推進第3次答申』で謳われた公共施設・サービスの民間開放促進(2004年度中に措置)などによって各自治体で検討され、条例化等をされている。
 ア 病院の事例
   横浜市立港湾病院…2004年度から指定管理者を募集。全国社会保険協会連合会・日本赤十字社から提案。指定管理者評価委員会で両団体の提案を審査し、その結果日赤が指定された。
    参考;高志寮護ホームなど7団体…2006年4月導入を目指し提案(1月30日)。現在交渉中。
 イ 公園・レクレーション施設の事例
   丘の公園…山梨県企業局が運営していた「丘の公園」の施設管理を、セラヴィリゾート、ウイン・ワールド(スポーツ施設の運営)、山梨交通(バス運輸業者)の3社が協同出資する「清里丘の公園」での運営提案。各々の出資比率はセラヴィリゾートが60%、ほかの2社がそれぞれ20%。審査の結果、出資3社がそれぞれの得意分野を持っていること、利用客数拡大が見込めるような具体的集客策を提示したこと、丘の公園管理公社職員(122人)の再雇用に積極的であることなどを理由として指定。
   小倉城庭園他3施設…北九州市の外郭団体「小倉観光」と直営であったが、清掃管理等を「井筒屋」(大手百貨店)に委託。従来の維持費(1億5100万円)より安く(1億3300万円)押さえられることが謳われている。2月議会で条例改正をし、指定管理者とする。



参考に、……総合規制改革会議12月22日「規制改革の推進に関する第3次答申」の要旨。
  公共施設・サービスの民間開放促進=民間資金活用による社会資本整備(PFI)選定事業者による公共施設等の管理・運営の拡充(04年度中に措置)▽公の施設の管理における「指定管理者制度」の活用促進(同)▽道路・河川など公共施設占用許可の弾力化(同)▽「市場化テスト」制度の導入・民間委託の「数値目標」設定のための調査研究(同)

指定管理者制度(地方自治法第244条の2)のQ&A

 指定管理者制度(地方自治法第244条の2)の改正についてのQ&Aを作成しました。
 これは2004年2月現在のものであり、今後順次補強していきます。
その他質問事項については、自治労県本部政治政策局(○○)までお問い合わせください。

1 .指定管理者制度とは何ですか?
  これまで「公の施設」は適正な管理を確保する必要があることから、管理委託先は公共団体、公共的団体、政令で定める出資法人に限定されていましたが、今後は、個別法の規定の範囲内で、自治体の判断により民間事業者からNPOまで幅広く(「法人その他の団体」)委ねることが可能となった制度のことです。

2 .いまなぜこのような制度が導入されたのですか?
  現在の行き詰まった日本経済状況のなかで、「民にできることは民で」とする小泉内の骨太改革路線の一環として導入されたものです。「公の施設」の管理を公共団体、公共的団体、政令で定める出資法人に限定するとしている地方自治法244条の2の規定が「公の施設」の管理についての民間参入を阻害しており、自治体の財政難と経営効率化の観点から、民間活力の導入(アウトソーシング)を進めるために、制度改正が行われました。

3 .これまでの制度との違いは何ですか?
  従来の地方自治法244条による管理委託制度は、管理受託者が公の施設の設置者たる自治体との契約に基づき、具体的な管理の事務または業務の執行を行うもの。当該施設の管理権限及び責任は自治体が有し、施設の利用承認等処分に該当する使用許可等は委託できませんでした。また、管理受託者も公共団体や公共的団体及び自治体の出資法人等に限定されていました。
しかし、今回の地方自治法244条の改正による指定管理者制度は、指定により公の施設の管理を、当該指定を受けた者に委任するもので、委任先は「法人その他の団体」として事実上制限がなくなりました。指定管理者は処分に該当する使用許可を行うことができることとされ、自治体は設置者としての責任を果たす立場から指定管理者を監督することとなります。また、個々の具体的業務について委託する業務委託と異なり、包括的に管理を委託するものです。

4.地方独立行政法人制度やPFIとの関係はどうなりますか?
  指定管理者制度は、公の施設の設置は当該自治体が行い、その管理について一定の団体に委ねるものです。地方独立行政法人制度は、当該施設を自治体から分離して法人に移管するものです。このため、指定管理者制度では、施設の設置の根拠、管理の方法については自治体の条例に基づいて行います。一方で、地方独立行政法人制度は、施設の設置や管理については地方独立行政法人自らが行うこととなります。
  PFI事業については、民間事業者が整備した施設を公の施設として管理する場合、公の施設管理を施設整備した民間事業者が引き続き管理受託することはできませんでしたが、今回の改正により、当該民間事業者を指定管理者として指定することで、使用許可や利用料金制の導入を含めて管理運営を行うことが可能となりました。ただし、PFI事業は請負契約であるため競争入札となり、指定管理者制度は行政処分であることから、同一の民間事業者に対してPFI事業の入札とあわせて公の施設の管理者として指定することは、手続き上の問題や指定管理者制度の趣旨、公平性、透明性の観点から問題があります。

5.いつから始まるのですか?
  この制度は2003年9月2日から施行されました。これまで、旧・地方自治法244条の2による管理委託を行ってきた「公の施設」の場合は、3年間(経過措置)の間に自治体が指定管理者制度に移行することになっています。現時点ですでに、指定管理者制度導入のため、@指定の手続きについて一般ルールとして定めた自治体、Aすでに個別の施設について条例を定めた自治体があります。

6.「公の施設」とは、どういう施設のことですか?
  地方自治法では、「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設」とされており、県や市町村が住民のためにさまざまなサービスを提供するための施設のことです。例えば、福祉施設や病院、図書館、市民会館、保育所、児童館、体育館などの公的施設です。ただし、試験研究機関や公営競輪場、競馬場などは対象となっていません。

7.指定の手続きとは何ですか?
  指定管理者の指定は行政処分であり、請負契約ではないので入札の対象となりません。しかし、その選定が公の施設の適正かつ効率的な管理を可能とするものでなければならないことから、指定の手続は条例で定め、(ア)該当施設の名称、(イ)指定管理者の名称、(ウ)指定の期間などの項目について議会の議決が必要となっています。なお、指定自体は議会ではなく首長が行うものであり、議会は首長の指定の提案に対する賛否を議決することとなります。
  総務省は、指定の申請にあたって、複数の申請者に事業計画を提出させ、(ア)住民の平等利用の確保、(イ)施設の効率的利用や経費縮減、(ウ)安定管理の物的・人的能力などの選定基準を定め、最も適切な団体を選定することが望ましいとしていますが、法令上の定めはなく、具体的な対応については自治体の自主的判断に委ねられています。
  公社・事業団などについてはその設立の経過や役割などに配慮して、公募によらず指定することはあり得ると総務省も認めています。

8.管理の基準とは何ですか?
  管理の基準は、(ア)休館日、(イ)開館時間、(ウ)使用許可の基準、(エ)使用制限の要件、 (オ)管理を通じて取得した個人情報に関する取り扱いなど、住民が公の施設を利用するにあたっての基本的な条件であり、条例で定めることとされました。このため、指定管理者は、条例で定められた管理の基準に沿って施設の管理を行うことになります。特に個人情報の保護については、管理の基準とは別に、個人情報保護条例において必要な事項を指定管理者との協定に盛り込むことの規定など、必要な措置を講じるべきとされています。
  例えば、公営住宅の管理を民間事業者に委ねるとすれば、個人の所得などの個人情報を民間事業者が扱うこととなります。こうした個人情報の扱いについては、現行の個人情報保護条例では規定されていないことから、自治体において個人情報保護条例の規定の見直し、強化が必要です。

9.業務の範囲とは何ですか?
 指定管理者が行う管理の業務の具体的範囲について、使用許可まで指定管理者の業務とするかどうかを含め、施設の維持管理等の範囲を施設の目的や態様に応じて条例で定めることとされました。このため、指定管理者の業務については、事実上自治体の自由設計で定められることとなります。

10.事業評価、財政監査などはどうなりますか?
  自治体には公の施設の設置者としての責任があり、指定管理者の評価/監査を行うため、次の通り自治体の権限が強化されました。@自治体が定める事項についての毎年度の事業報告書提出を義務づけ、A報告・調査・指示・指定の取消・停止などの監督権限、B施設利用に関する処分の不服申立て等が自治体の長に対して行われ監督責任の明確化、C監査委員による監査・包括的外部監査人による監査・個別外部監査人による監査のいずれかを実施(ただし管理業務そのものの監査は行わない)

11.新たに設置される「公の施設」や現在直営で行っている場合はどうなるの?
  引き続き直営とするのか、新たに指定管理者制度を活用するのかは自治体の判断です。指定管理者に管理を委ねる場合は、開設にあわせて直ちに指定手続きの作業が行われます。
  指定に向けては条例の制定又は一部改正、指定管理者の議決と2回の議会を経るよう総務省は指導しています。

12.施設の利用料はどうなりますか?
  議会が、あらかじめ金額の範囲、算定方法など基本的なことは条例で定め、その範囲内で指定管理者が利用料金を定めることができますが、自治体の承認が必要です。

13.そこで働く労働者の身分・労働条件はどうなるのか?
  直営施設の管理が公的セクターに委ねられる場合は、当該職員は他の部署に異動するか、または派遣法・条例にもとづいてその職場に派遣されます。民間事業者に委ねられる場合は、派遣に係る法制度はなく原則他の部署に異動になりますが、自治体によっては当該民間事業所への再就職や分限免職などを求めてくる場合も考えられ、注意が必要です。
  これまで、管理委託を受けていた受託団体が引き続き当該施設の管理を受けられない場合、当該団体の中で雇用を吸収できなければ、解雇につながります。

14.市町村合併に伴う指定管理者制度への移行方法は?
  新市合併の場合については、原則として、合併時に指定管理者制度へ移行させることが必要になります。編入合併の場合にあっては、編入される側の自治体で行われていた管理委託について、原則として、合併時に指定管理者制度へ移行させる必要があります。

15.民間事業者の動きはどうなっていますか?
  指定管理者制度施行にあわせ、自治体部門を設けたり、専任の担当者を置くなど積極的に活動している企業・団体もあります。

16.どのように取り組みますか?
  今後進行する条例制定について、@直営施設に指定管理者制度を導入、A新規施設に指定管理者制度を導入、B従来の管理委託制度から指定管理者制度への切り替え、C管理委託制度以外の法令を適用した公設民営施設の指定管理者制度への切り替えの四つのパターンが考えられます。このうち、自治体改革、市民自治の確立の観点から問題がある場合を除き、次の通り取り組んでいきます。
@ (直営施設に指定管理者制度を導入)
   直営堅持を前提に、指定管理者制度を導入させない取り組みを基本とする。
A (新規施設に指定管理者制度を導入)
   直営堅持を前提に、指定管理者制度を導入させない取り組みを基本とする。ただし、市民自治の見地から、NPOや市民団体への指定について十分検討する。
B (従来の管理委託制度から指定管理者制度への切り替え)
   法令上やむを得ないことから、指定管理者を既存の管理委託先に引き続き指定させることを基本とする。
C (管理委託制度以外の法令を適用した公設民営施設の指定管理者制度への切り替え)
   法令上必ずしも切り替える必要がないことから、現状維持を基本に取り組む。ただし、指定管理者制度への切り替えが望ましい場合もあるので、十分に検討する。

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