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 国連憲章    安保条約    日米地位協定  日米防衛協力の為の指針   サンフランシスコ平和条約(中野文庫)  ヤルタ協定  ポツダム宣言

 共同発表 日米安全保障協議委員会    日朝平壌宣言  日米安全保障協議委員会(「2+2」)の開催   日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約(昭和40年条約第25号)中野文庫

 日韓請求権並びに経済協力協定(財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定)東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室  カイロ宣言 

 キティホークの後継に原子力型航空母艦 J・トーマス・シーファー駐日米国大使の声明   共同発表日米安全保障協議委員会  

 拉致問題に関する<日朝協議>合意事項の全文

国連の成立と目的

 国連は、世界の平和と経済・社会の発展のために協力することを誓った独立国が集まってできた、ユニークな機関です。国連は、1945年10月24日に正式に発足しましたが、そのときの加盟国は51カ国でした。今では加盟国の数は191カ国に増えています。今までに国連から脱退した国はありません。インドネシアは、1965年、隣国マレーシアとの紛争を理由に一時国連を離れましたが、その翌年には再び国連に戻っています。

 各国とその国民を代表するのはあくまでも政府です。国連はどの国の政府も国民も代表するものではありません。国連はいわば主権国家の組合のようなもので、加盟国が望むことだけを実行できるのです。国連はむしろ、独立した国々が集まって、個別の国の問題や、全体的な問題を話し合う場であるといえるでしょう。

 国連憲章は、各加盟国の権利と義務、そして、加盟国が自ら設定した目標を達成するために何をすべきかを説明する、一連の指針となっています。ある国が国連に加盟するということは、憲章の目的と原則を受け入れるということです。1945年6月26日、50カ国の代表は、サンフランシスコで国連憲章に調印しました。ポーランドは、戦後の政府ができあがっていなかったために、代表を送ることができませんでしたが、後に憲章に署名し、第51番目の国連原加盟国となりました。

 米国は、国連本部受入れ国として、憲章原文の保管を要請されました。この憲章原文は、現在もワシントンの国立公文書館に保存されています。ニューヨークの国連本部には、憲章の写しが展示されています。

 国連には次の4つの重要な目的があります。

 全世界の平和を守ること
 各国の間に友好関係を作り上げること
 貧しい人々の生活条件を向上させ、飢えと病気と読み書きのできない状態を克服し、お互いの権利と自由の尊重を働きかけるように、共同で努力すること
 各国がこれらの目的を達成するのを助けるための話し合いの場となること

 国連をつくろうという考えは、第2次世界大戦(1939〜1945年)の惨禍の中で生まれました。この戦争で、数百万人の人々が犠牲となり、さらに数百万人の人々が避難を余儀なくされました。都市は破壊されました。戦争を終わらせるべく協力していた世界の指導者たちは、平和をもたらし、将来の戦争を防止するような仕組みを作る必要を強く感じていました。指導者たちは、すべての国々が世界的な組織を通じて協力しなければ、これが実現しないことを悟ったのです。そして、この組織となるべきものが国連でした。

 国連は、突然にできあがったものではありません。実際に国連ができるまでには、次のように、何年もの準備が必要でした。

 1941年8月14日、大西洋上の軍艦で秘密会談を開いた米国のフランクリン・ルーズベルト大統領と英国のウィンストン・チャーチル首相は、大西洋憲章という、世界平和のためのプランを発表しました。

 1942年1月1日、26カ国の代表はワシントンで会合を開き、連合国宣言に調印しました。これらの国々は、戦争に勝利を収め、大西洋憲章を受け入れることを誓いました。

 1943年10月、中国、ソ連、英国および米国の代表は、モスクワで会合を開き、終戦後に、平和維持のための国際機関を設立することで合意しました。この合意はモスクワ宣言と呼ばれています。

 1944年の夏から秋にかけてワシントンで開かれた会議では、国際機関創設をめざす確定的なプランがはじめて作られました。この会議は、開催場所の邸宅の名前をとって、よくダンバートン・オークス会議と呼ばれています。

 1945年2月、ルーズベルト大統領、チャーチル首相、および、ソ連の指導者ヨシフ・スターリンは、ソ連のヤルタで会談し、安全保障理事会で用いられる投票の制度について合意しました。3人の指導者はまた、サンフランシスコで国際会議を開くことも決定しました。

 サンフランシスコ会議(1945年4月25日〜6月26日)には、50カ国の代表が参加しました。会議では、国連憲章と、新たに設立される国際司法裁判所の法律が作成され、6月26日に満場一致で採択されました。

 1945年10月24日、国連憲章に調印した安全保障理事会の常任理事国5カ国を含む原加盟国の大半がこれを公式に承認したことを受けて、国際連合が正式に誕生しました。このため、毎年10月24日は国連デーとして、全世界で記念行事が行われています。

 国際連合(United Nations)という名前は、米国のフランクリン・ルーズベルト大統領が提案したものです。この名前が最初に使われたのは、1942年。26カ国が「連合国宣言」(Declaration by United Nations)に調印した時のことでした。サンフランシスコ会議では、出席者全員が、国連憲章調印の数週間前に死去したルーズベルト大統領の業績を称え、この名前を採用することで合意しました。

 第1次世界大戦後の1919年には、国際連盟が設立されています。国連と同じように、国際連盟も、世界平和の維持を目的としていました。

 残念ながら、すべての国が国際連盟に加盟していたわけではありません。たとえば、米国は最後まで国際連盟には加盟しませんでした。加盟国の中にも、後になって脱退したり、全く決定を行えなかった国もありました。また、国際連盟には、その決定を強制する権限がありませんでした。国際連盟が失敗に終わったことで、紛争は一層激化し、ついには第2次世界大戦が勃発したのです。国際連盟は、それ自体は失敗しましたが、世界的な機関への夢を生み出しました。その結果生まれたのが国連なのです。

 国連本部はニューヨークにあります。ロンドンで開催された第1回国連総会では、国連の常駐本部を米国に置くことが決定されました。現在の国連本部は、低いドーム型の国連総会ビル、ガラスと大理石でできた39階建ての国連事務局タワー、川に面した低い長方形の会議場、敷地の南西隅にあるダグ・ハマーショルド図書館の、4つの建物からなっています。
 国連本部の土地と建物は、国際的な領域となっています。国連は、自分の旗を持ち、敷地内を警備する警備員を雇い、自らの郵便切手を発行しているのです。



国連憲章について



 国際連合憲章は、国際機構に関する連合国会議の最終日の、1945年6月26日にサンフランシスコにおいて調印され、1945年10月24日に発効した。国際司法裁判所規程は国連憲章と不可分の一体をなす。

 国連憲章第23条、第27条および第61条の改正は、1963年12月17日に総会によって採択され、1965年8月31日に発効した。1971年12月20日、総会は再び第61条の改正を決議、1973年9月24日発効した。1965年12月20日に総会が採択した第109条の改正は、1968年6月12日発効した。

 第23条の改正によって、安全保障理事会の理事国は11から15カ国に増えた。第27条の改正によって、手続き事項に関する安全保障理事会の表決は9理事国(改正以前は7)の賛成投票によって行われ、その他のすべての事項に関する表決は、5常任理事国を含む9理事国(改正以前は7)の賛成投票によって行われる。

 1965年8月31日発効した第61条の改正によって、経済社会理事会の理事国数は18から27に増加した。1973年9月24日発効した2回目の61条改正により、同理事会理事国数はさらに、54に増えた。

 第109条1項の改正によって、国連憲章を再審議するための国連加盟国の全体会議は、総会構成国の3分の2の多数と安全保障理事会のいずれかの9理事国(改正前は7)の投票によって決定される日と場所で開催されることになった。但し、第10通常総会中に開かれる憲章改正会議の審議に関する109条3項中の「安全保障理事会の7理事国の投票」という部分は改正されなかった。1955年の第10総会及び安全保障理事会によって、この項が発動された。

国際連合憲章
 われら連合国の人民は、われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権と人間 の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し、正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること並びに、このために、寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互いに平和に生活し、国際の平和及び安全を維持するためにわれらの力を合わせ、共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し、すべての人民の経済的及び社会的発達を促進するために国際機構を用いることを決意して、これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。
 よって、われらの各自の政府は、サン・フランシスコ市に会合し、全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた代表者を通じて、この国際連合憲章に同意したので、ここに国際連合という国際機構を設ける。

第1章 目的及び原則
第1条
 国際連合の目的は、次のとおりである。

 国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整または解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること。

 人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。

 経済的、社会的、文化的または人道的性質を有する国際問題を解決することについて、並びに人種、性、言語または宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること。

 これらの共通の目的の達成に当たって諸国の行動を調和するための中心となること。

第2条
 この機構及びその加盟国は、第1条に掲げる目的を達成するに当っては、次の原則に従って行動しなければならない。

 この機構は、そのすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。
 すべての加盟国は、加盟国の地位から生ずる権利及び利益を加盟国のすべてに保障するために、この憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。
 すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない。

 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。
 すべての加盟国は、国際連合がこの憲章に従ってとるいかなる行動についても国際連合にあらゆる援助を与え、且つ、国際連合の防止行動又は強制行動の対象となっているいかなる国に対しても援助の供与を慎まなければならない。
 この機構は、国際連合加盟国ではない国が、国際の平和及び安全の維持に必要な限り、これらの原則に従って行動することを確保しなければならない。

 この憲章のいかなる規定も、本質上いずれかの国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国際連合に与えるものではなく、また、その事項をこの憲章に基く解決に付託することを加盟国に要求するものでもない。但し、この原則は、第7章に基く強制措置の適用を妨げるものではない。

第2章 加盟国の地位
第3条
 国際連合の原加盟国は、サン・フランシスコにおける国際機構に関する連合国会議に参加した国又はさきに1942年1月1日の連合国宣言に署名した国で、この憲章に署名し、且つ、第110条に従ってこれを批准するものをいう。

第4条
 国際連合における加盟国の地位は、この憲章に掲げる義務を受託し、且つ、この機構によってこの義務を履行する能力及び意思があると認められる他のすべての平和愛好国に開放されている。
 前記の国が国際連合加盟国となることの承認は、安全保障理事会の勧告に基いて、総会の決定によって行われる。

第5条
 安全保障理事会の防止行動または強制行動の対象となった国際連合加盟国に対しては、総会が、安全保障理事会の勧告に基づいて、加盟国としての権利及び特権の行使を停止することができる。これらの権利及び特権の行使は、安全保障理事会が回復することができる。

第6条
 この憲章に掲げる原則に執拗に違反した国際連合加盟国は、総会が、安全保障理事会の勧告に基づいて、この機構から除名することができる。

第3章 機 関
第7条
 国際連合の主要機関として、総会、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所及び事務局を設ける。
 必要と認められる補助機関は、この憲章に従って設けることができる。

第8条
 国際連合は、その主要機関及び補助機関に男女がいかなる地位にも平等の条件で参加する資格があることについて、いかなる制限も設けてはならない。

第4章 総 会
【構成】
第9条
 総会は、すべての国際連合加盟国で構成する。
 各加盟国は、総会において5人以下の代表者を有するものとする。

【任務及び権限】
第10条
 総会は、この憲章の範囲内にある問題若しくは事項又はこの憲章に規定する機関の権限及び任務に関する問題若しくは事項を討議し、並びに、第12条に規定する場合を除く外、このような問題又は事項について国際連合加盟国若しくは安全保障理事会又はこの両者に対して勧告をすることができる。

第11条
 総会は、国際の平和及び安全の維持についての協力に関する一般原則を、軍備縮小及び軍備規制を律する原則も含めて、審議し、並びにこのような原則について加盟国若しくは安全保障理事会又はこの両者に対して勧告をすることができる。

 総会は、国際連合加盟国若しくは安全保障理事会によって、又は第35条2に従い国際連合加盟国でない国によって総会に付託される国際の平和及び安全の維持に関するいかなる問題も討議し、並びに、第12条に規定する場合を除く外、このような問題について、1若しくは2以上の関係国又は安全保障理事会あるいはこの両者に対して勧告をすることができる。このような問題で行動を必要とするものは、討議の前または後に、総会によって安全保障理事会に付託されなければならない。

 総会は、国際の平和及び安全を危くする虞のある事態について、安全保障理事会の注意を促すことができる。
 本条に掲げる総会の権限は、第10条の一般的範囲を制限するものではない。

第12条
 安全保障理事会がこの憲章によって与えられた任務をいずれかの紛争または事態について遂行している間は、総会は、安全保障理事会が要請しない限り、この紛争又は事態について、いかなる勧告もしてはならない。

 事務総長は、国際の平和及び安全の維持に関する事項で安全保障理事会が取り扱っているものを、その同意を得て、会期ごとに総会に対して通告しなければならない。事務総長は、安全保障理事会がその事項を取り扱うことをやめた場合にも、直ちに、総会又は、総会が開会中でないときは、国際連合加盟国に対して同様に通告しなければならない。

第13条
 総会は、次の目的のために研究を発議し、及び勧告をする。

 政治的分野において国際協力を促進すること並びに国際法の斬新的発達及び法典化を奨励すること。
 経済的、社会的、文化的、教育的及び保健的分野において国際協力を促進すること並びに人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を実現するように援助すること。
 前記の1bに掲げる事項に関する総会の他の責任、任務及び権限は、第9章及び第10章に掲げる。

第14条
 第12条の規定を留保して、総会は、起因にかかわりなく、一般的福祉または諸国間の友好関係を害する虞があると認めるいかなる事態についても、これを平和的に調整するための措置を勧告することができる。この事態には、国際連合の目的及び原則を定めるこの憲章の規定の違反から生ずる事態が含まれる。

第15条
 総会は、安全保障理事会から年次報告及び特別報告を受け、これを審議する。この報告は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を維持するために決定し、又はとった措置の説明を含まなければならない。
 総会は、国際連合の他の機関から報告を受け、これを審議する。

第16条
 総会は、第12章及び第13章に基いて与えられる国際信託統治制度に関する任務を遂行する。この任務には、戦略地区として指定されない地区に関する信託統治協定の承認が含まれる。

第17条
 総会は、この機構の予算を審議し、且つ、承認する。
 この機構の経費は、総会によって割り当てられるところに従って、加盟国が負担する。
 総会は、第57条に掲げる専門機関との財政上及び予算上の取極を審議し、且つ、承認し、並びに、当該専門機関に勧告をする目的で、この専門機関の行政的予算を検査する。

【表決】
18条
 総会の各構成国は、1個の投票権を有する。
 重要問題に関する総会の決定は、出席し且つ投票する構成国の3分の2の多数によって行われる。重要問題には、国際の平和及び安全の維持に関する勧告、安全保障理事会の非常任理事国の選挙、経済社会理事会の理事国の選挙、第86条1cによる信託統治理事会の理事国の選挙、新加盟国の国際連合への加盟の承認、加盟国としての権利及び特権の停止、加盟国の除名、信託統治制度の運用に関する問題並びに予算問題が含まれる。

 その他の問題に関する決定は、3分の2の多数によって決定されるべき問題の新たな部類の決定を含めて、出席し且つ投票する構成国の過半数によって行われる。

第19条
 この機構に対する分担金の支払が延滞している国際連合加盟国は、その延滞金の額がその時までの満2年間にその国から支払われるべきであった分担金の額に等しいか又はこれをこえるときは、総会で投票権を有しない。但し、総会は、支払いの不履行がこのような加盟国にとってやむを得ない事情によると認めるときは、その加盟国に投票を許すことができる。

【手続】
第20条
 総会は、年次通常会期として、また、必要がある場合に特別会期として会合する。特別会期は、安全保障理事会の要請又は国際連合加盟国の過半数の要請があったとき、事務総長が招集する。

第21条
 総会は、その手続規則を採択する。総会は、その議長を会期ごとに選挙する。

第22条
 総会は、その任務の遂行に必要と認める補助機関を設けることができる。

第5章 安全保障理事会

【構成】
第23条
 安全保障理事会は、15の国際連合加盟国で構成する。中華民国、フランス、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国は、安全保障理事会の常任理事国となる。総会は、第一に国際の平和及び安全の維持とこの機構のその他の目的とに対する国際連合加盟国の貢献に、更に衡平な地理的分配に特に妥当な考慮を払って、安全保障理事会の非常任理事国となる他の10の国際連合加盟国を選挙する。

 安全保障理事会の非常任理事国は、2年の任期で選挙される。安全保障理事会の理事国の定数が11から15に増加された後の第1回の非常任理事国の選挙では、追加の4理事国のうち2理事国は、1年の任期で選ばれる。退任理事国は、引き続いて再選される資格はない。

 安全保障理事会の各理事国は、1人の代表を有する。

【任務及び権限】
第24条
 国際連合の迅速且つ有効な行動を確保するために、国際連合加盟国は、国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任を安全保障理事会に負わせるものとし、且つ、安全保障理事会がこの責任に基く義務を果すに当って加盟国に代って行動することに同意する。

 前記の義務を果すに当たっては、安全保障理事会は、国際連合の目的及び原則に従って行動しなければならない。この義務を果たすために安全保障理事会に与えられる特定の権限は、第6章、第7章、第8章及び第12章で定める。

 安全保障理事会は、年次報告を、また、必要があるときは特別報告を総会に審議のため提出しなければならない。

第25条
 国際連合加盟国は、安全保障理事会の決定をこの憲章に従って受諾し且つ履行することに同意する。

第26条
 世界の人的及び経済的資源を軍備のために転用することを最も少くして国際の平和及び安全の確立及び維持を促進する目的で、安全保障理事会は、軍備規制の方式を確立するため国際連合加盟国に提出される計画を、第47条に掲げる軍事参謀委員会の援助を得て、作成する責任を負う。

【表決】
第27条
 安全保障理事会の各理事国は、1個の投票権を有する。
 手続事項に関する安全保障理事会の決定は、9理事国の賛成投票によって行われる。
 その他のすべての事項に関する安全保障理事会の決定は、常任理事国の同意投票を含む9理事国の賛成投票によって行われる。但し、第6章及び第52条3に基く決定については、紛争当事国は、投票を棄権しなければならない。

【手続】
第28条
 安全保障理事会は、継続して任務を行うことができるように組織する。このために、安全保障理事会の各理事国は、この機構の所在地に常に代表者をおかなければならない。
 安全保障理事会は、定期会議を開く。この会議においては、各理事国は、希望すれば、閣員または特に指名する他の代表者によって代表されることができる。
 安全保障理事会は、その事業を最も容易にすると認めるこの機構の所在地以外の場所で、会議を開くことができる。

第29条
 安全保障理事会は、その任務の遂行に必要と認める補助機関を設けることができる。

第30条
 安全保障理事会は、議長を選定する方法を含むその手続規則を採択する。

第31条
 安全保障理事会の理事国でない国際連合加盟国は、安全保障理事会に付託された問題について、理事会がこの加盟国の利害に特に影響があると認めるときはいつでも、この問題の討議に投票権なしで参加することができる。

第32条
 安全保障理事会の理事国でない国際連合加盟国又は国際連合加盟国でない国は、安全保障理事会の審議中の紛争の当事者であるときは、この紛争に関する討議に投票権なしで参加するように勧誘されなければならない。安全保障理事会は、国際連合加盟国でない国の参加のために公正と認める条件を定める。


第6章 紛争の平和的解決
第33条
 いかなる紛争でも継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞のあるものについては、その当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取極の利用その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。
 安全保障理事会は、必要と認めるときは、当事者に対して、その紛争を前記の手段によって解決するように要請する。

第34条
 安全保障理事会は、いかなる紛争についても、国際的摩擦に導き又は紛争を発生させる虞のあるいかなる事態についても、その紛争または事態の継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞があるかどうかを決定するために調査することができる。

第35条
 国際連合加盟国は、いかなる紛争についても、第34条に掲げる性質のいかなる事態についても、安全保障理事会又は総会の注意を促すことができる。

 国際連合加盟国でない国は、自国が当事者であるいかなる紛争についても、この憲章に定める平和的解決の義務をこの紛争についてあらかじめ受諾すれば、安全保障理事会又は総会の注意を促すことができる。
本条に基いて注意を促された事項に関する総会の手続は、第11条及び第12条の規定に従うものとする。

第36条
 安全保障理事会は、第33条に掲げる性質の紛争又は同様の性質の事態のいかなる段階においても、適当な調整の手続又は方法を勧告することができる。

 安全保障理事会は、当事者が既に採用した紛争解決の手続を考慮に入れなければならない。
本条に基いて勧告をするに当っては、安全保障理事会は、法律的紛争が国際司法裁判所規程の規定に従い当事者によって原則として同裁判所に付託されなければならないことも考慮に入れなければならない。

第37条
 第33条に掲げる性質の紛争の当事者は、同条に示す手段によってこの紛争を解決することができなかったときは、これを安全保障理事会に付託しなければならない。

 安全保障理事会は、紛争の継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞が実際にあると認めるときは、第36条に基く行動をとるか、適当と認める解決条件を勧告するかのいずれかを決定しなければならない。

第38条
 第33条から第37条までの規定にかかわらず、安全保障理事会は、いかなる紛争についても、すべての紛争当事者が要請すれば、その平和的解決のためにこの当事者に対して勧告をすることができる。

第7章 平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動
第39条
 安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第41条及び第42条に従っていかなる措置をとるかを決定する。

第40条
 事態の悪化を防ぐため、第39条の規定により勧告をし、又は措置を決定する前に、安全保障理事会は、必要又は望ましいと認める暫定措置に従うように関係当事者に要請することができる。この暫定措置は、関係当事者の権利、請求権又は地位を害するものではない。安全保障理事会は、関係当時者がこの暫定措置に従わなかったときは、そのことに妥当な考慮を払わなければならない。

第41条
 安全保障理事会は、その決定を実施するために、兵力の使用を伴わないいかなる措置を使用すべきかを決定することができ、且つ、この措置を適用するように国際連合加盟国に要請することができる。この措置は、経済関係及び鉄道、航海、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部又は一部の中断並びに外交関係の断絶を含むことができる。

第42条
 安全保障理事会は、第41条に定める措置では不充分であろうと認め、又は不充分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍または陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる。

第43条
 国際の平和及び安全の維持に貢献するため、すべての国際連合加盟国は、安全保障理事会の要請に基き且つ1又は2以上の特別協定に従って、国際の平和及び安全の維持に必要な兵力、援助及び便益を安全保障理事会に利用させることを約束する。この便益には、通過の権利が含まれる。
 前記の協定は、兵力の数及び種類、その出動準備程度及び一般的配置並びに提供されるべき便益及び援助の性質を規定する。
 前記の協定は、安全保障理事会の発議によって、なるべくすみやかに交渉する。この協定は、安全保障理事会と加盟国との間又は安全保障理事会と加盟国群との間に締結され、且つ、署名国によって各自の憲法上の手続に従って批准されなければならない。

第44条
 安全保障理事会は、兵力を用いることに決定したときは、理事会に代表されていない加盟国に対して第43条に基いて負った義務の履行として兵力を提供するように要請する前に、その加盟国が希望すれば、その加盟国の兵力中の割当部隊の使用に関する安全保障理事会の決定に参加するようにその加盟国を勧誘しなければならない。

第45条
 国際連合が緊急の軍事措置をとることができるようにするために、加盟国は、合同の国際的強制行動のため国内空軍割当部隊を直ちに利用に供することができるように保持しなければならない。これらの割当部隊の数量及び出動準備程度並びにその合同行動の計画は、第43条に掲げる1又は2以上の特別協定の定める範囲内で、軍事参謀委員会の援助を得て安全保障理事会が決定する。

第46条
 兵力使用の計画は、軍事参謀委員会の援助を得て安全保障理事会が作成する。

第47条
 国際の平和及び安全の維持のための安全保障理事会の軍事的要求、理事会の自由に任された兵力の使用及び指揮、軍備規制並びに可能な軍備縮小に関するすべての問題について理事会に助言及び援助を与えるために、軍事参謀委員会を設ける。
 軍事参謀委員会は、安全保障理事会の常任理事国の参謀総長又はその代表者で構成する。この委員会に常任委員として代表されていない国際連合加盟国は、委員会の責任の有効な遂行のため委員会の事業へのその国の参加が必要であるときは、委員会によってこれと提携するように勧誘されなければならない。

 軍事参謀委員会は、安全保障理事会の下で、理事会の自由に任された兵力の戦略的指導について責任を負う。この兵力の指揮に関する問題は、後に解決する。

 軍事参謀委員会は、安全保障理事会の許可を得て、且つ、適当な地域的機関と協議した後に、地域的小委員会を設けることができる。

第48条
 国際の平和及び安全の維持のための安全保障理事会の決定を履行するのに必要な行動は、安全保障理事会が定めるところに従って国際連合加盟国の全部または一部によってとられる。
 前記の決定は、国際連合加盟国によって直接に、また、国際連合加盟国が参加している適当な国際機関におけるこの加盟国の行動によって履行される。

第49条
 国際連合加盟国は、安全保障理事会が決定した措置を履行するに当って、共同して相互援助を与えなければならない。

第50条
 安全保障理事会がある国に対して防止措置又は強制措置をとったときは、他の国でこの措置の履行から生ずる特別の経済問題に自国が当面したと認めるものは、国際連合加盟国であるかどうかを問わず、この問題の解決について安全保障理事会と協議する権利を有する。

第51条
 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く機能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。

第8章 地域的取極
第52条
 この憲章のいかなる規定も、国際の平和及び安全の維持に関する事項で地域的行動に適当なものを処理するための地域的取極又は地域的機関が存在することを妨げるものではない。但し、この取極又は機関及びその行動が国際連合の目的及び原則と一致することを条件とする。

 前記の取極を締結し、又は前記の機関を組織する国際連合加盟国は、地方的紛争を安全保障理事会に付託する前に、この地域的取極または地域的機関によってこの紛争を平和的に解決するようにあらゆる努力をしなければならない。

 安全保障理事会は、関係国の発意に基くものであるか安全保障理事会からの付託によるものであるかを問わず、前記の地域的取極又は地域的機関による地方的紛争の平和的解決の発達を奨励しなければならない。
 本条は、第34条及び第35条の適用をなんら害するものではない。

第53条
 安全保障理事会は、その権威の下における強制行動のために、適当な場合には、前記の地域的取極または地域的機関を利用する。但し、いかなる強制行動も、安全保障理事会の許可がなければ、地域的取極に基いて又は地域的機関によってとられてはならない。もっとも、本条2に定める敵国のいずれかに対する措置で、第107条に従って規定されるもの又はこの敵国における侵略政策の再現に備える地域的取極において規定されるものは、関係政府の要請に基いてこの機構がこの敵国による新たな侵略を防止する責任を負うときまで例外とする。
 本条1で用いる敵国という語は、第二次世界戦争中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される。

第54条
 安全保障理事会は、国際の平和及び安全の維持のために地域的取極に基いて又は地域的機関によって開始され又は企図されている活動について、常に充分に通報されていなければならない。

第9章 経済的及び社会的国際協力
第55条
 人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の平和的且つ友好的関係に必要な安定及び福祉の条件を創造するために、国際連合は、次のことを促進しなければならない。

 一層高い生活水準、完全雇用並びに経済的及び社会的の進歩及び発展の条件
 経済的、社会的及び保健的国際問題と関係国際問題の解決並びに文化的及び教育的国際協力
 人種、性、言語または宗教による差別のないすべての者のための人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守

第56条
 すべての加盟国は、第55条に掲げる目的を達成するために、この機構と協力して、共同及び個別の行動をとることを誓約する。

第57条
 政府間の協定によって設けられる各種の専門機関で、経済的、社会的、文化的、教育的及び保健的分野並びに関係分野においてその基本的文書で定めるところにより広い国際的責任を有するものは、第63条の規定に従って国際連合と連携関係をもたされなければならない。
 こうして国際連合と連携関係をもたされる前記の機関は、以下専門機関という。

第58条
 この機構は、専門機関の政策及び活動を調整するために勧告をする。

第59条
 この機構は、適当な場合には、第55条に掲げる目的の達成に必要な新たな専門機関を設けるために関係国間の交渉を発議する。

第60条
 この章に掲げるこの機構の任務を果たす責任は、総会及び、総会の権威の下に、経済社会理事会に課せられる。理事会は、このために第10章に掲げる権限を有する。

第10章 経済社会理事会
【構成】
第61条
 経済社会理事会は、総会によって選挙される54の国際連合加盟国で構成する。
 3の規定を留保して、経済社会理事会の18理事国は、3年の任期で毎年選挙される。退任理事国は、引き続いて再選される資格がある。
 経済社会理事会の理事国の定数が27から54に増加された後の第1回の選挙では、その年の終わりに任期が終了する9理事国に代って選挙される理事国に加えて、更に27理事国が選挙される。このようにして選挙された追加の27理事国のうち9理事国の任期は1年の終りに、他の9理事国の任期は2年の終りに、総会の定めるところに従って終了する。
 経済社会理事会の各理事国は、1人の代表者を有する。

第62条
 経済社会理事会は、経済的、社会的、文化的、教育的及び保健的国際事項並びに関係国際事項に関する研究及び報告を行い、または発議し、並びにこれらの事項に関して総会、国際連合加盟国及び関係専門機関に勧告をすることができる。
 理事会は、すべての者のための人権及び基本的自由の尊重及び遵守を助長するために、勧告をすることができる。
 理事会は、その権限に属する事項について、総会に提出するための条約案を作成することができる。
 理事会は、国際連合の定める規則に従って、その権限に属する事項について国際会議を招集することができる。

第63条
 経済社会理事会は、第57条に掲げる機関のいずれとの間にも、その機関が国際連合と連携関係をもたされるについての条件を定める協定を締結することができる。この協定は、総会の承認を受けなければならない。
 理事会は、専門機関との協議及び専門機関に対する勧告並びに総会及び国際連合加盟国に対する勧告によって、専門機関の活動を調整することができる。

第64条
 経済社会理事会は、専門機関から定期報告を受けるために、適当な措置をとることができる。理事会は、理事会の勧告と理事会の権限に属する事項に関する総会の勧告とを実施するためにとれれた措置について報告を受けるため、国際連合加盟国及び専門機関と取極を行うことができる。
 理事会は、前記の報告に関するその意見を総会に通報することができる。

第65条
 経済社会理事会は、安全保障理事会に情報を提供することができる。経済社会理事会は、また、安全保障理事会の要請があったときは、これを援助しなければならない。

第66条
 経済社会理事会は、総会の勧告の履行に関して、自己の権限に属する任務を遂行しなければならない。
 理事会は、国際連合加盟国の要請があったとき、又は専門機関の要請があったときは、総会の承認を得て役務を提供することができる。
 理事会は、この憲章の他の箇所に定められ、または総会によって自己に与えられるその他の任務を遂行しなければならない。

【表決】
第67条
 経済社会理事会の各理事国は、1個の投票権を有する。
 経済社会理事会の決定は、出席し且つ投票する理事国の過半数によって行われる。

【手続】
第68条
 経済社会理事会は、経済的及び社会的分野における委員会、人権の伸張に関する委員会並びに自己の任務の遂行に必要なその他の委員会を設ける。

第69条
 経済社会理事会は、いずれの国際連合加盟国に対しても、その加盟国に特に関係のある事項についての審議に投票権なしで参加するように勧誘しなければならない。

第70条
 経済社会理事会は、専門機関の代表者が理事会の審議及び理事会の設ける委員会の審議に投票権なしで参加するための取極並びに理事会の代表者が専門機関の審議に参加するための取極を行うことができる。

第71条
 経済社会理事会は、その権限内にある事項に関係のある民間団体と協議するために、適当な取極を行うことができる。この取極は、国際団体との間に、また、適当な場合には、関係のある国際連合加盟国と協議した後に国内団体との間に行うことができる。

第72条
 経済社会理事会は、議長を選定する方法を含むその手続規則を採択する。
 経済社会理事会は、その規則に従って必要があるときに会合する。この規則は、理事国の過半数の要請による会議招集の規定を含まなければならない。

第11章 非自治地域に関する宣言
第73条
 人民がまだ完全に自治を行うに至っていない地域の施政を行う責任を有し、又は引き受ける国際連合加盟国は、この地域の住民の利益が至上のものであるという原則を承認し、且つ、この地域の住民の福祉をこの憲章の確立する国際の平和及び安全の制度内で最高度まで増進する義務並びにそのために次のことを行う義務を神聖な信託として受託する。

 関係人民の文化を充分に尊重して、この人民の政治的、経済的、社会的及び教育的進歩、公正な待遇並びに虐待からの保護を確保すること。
 各地域及びその人民の特殊事情並びに人民の進歩の異なる段階に応じて、自治を発達させ、人民の政治的願望に妥当な考慮を払い、且つ、人民の自由な政治制度の斬新的発達について人民を援助すること。
 国際の平和及び安全を増進すること。

 本条に掲げる社会的、経済的及び科学的目的を実際に達成するために、建設的な発展措置を促進し、研究を奨励し、且つ、相互に及び適当な場合には専門国際団体と協力すること。
 第12章及び第13章の適用を受ける地域を除く外、前記の加盟国がそれぞれ責任を負う地域における経済的、社会的及び教育的状態に関する専門的性質の統計その他の資料を、安全保障及び憲法上の考慮から必要な制限に従うことを条件として、情報用として事務総長に定期的に送付すること。

第74条
 国際連合加盟国は、また、本章の適用を受ける地域に関するその政策を、その本土に関する政策と同様に、世界の他の地域の利益及び福祉に妥当な考慮を払った上で、社会的、経済的及び商業的事項に関して善隣主義の一般原則に基かせなければならないことに同意する。

第12章 国際信託統治制度
第75条
 国際連合は、その権威の下に、国際信託統治制度を設ける。この制度は、今後の個々の協定によってこの制度の下におかれる地域の施政及び監督を目的とする。この地域は、以下信託統治地域という。

第76条
 信託統治制度の基本目的は、この憲章の第1条に掲げる国際連合の目的に従って、次のとおりとする。

 国際の平和及び安全を増進すること。
 信託統治地域の住民の政治的、経済的、社会的及び教育的進歩を促進すること。各地域及びその人民の特殊事情並びに関係人民が自由に表明する願望に適合するように、且つ、各信託統治協定の条項が規定するところに従って、自治または独立に向っての住民の漸進的発達を促進すること。

 人種、性、言語または宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように奨励し、且つ、世界の人民の相互依存の認識を助長すること。
 前記の目的の達成を妨げることなく、且つ、第80条の規定を留保して、すべての国際連合加盟国及びその国民のために社会的、経済的及び商業的事項について平等の待遇を確保し、また、その国民のために司法上で平等の待遇を確保すること。

第77条
 信託統治制度は、次の種類の地域で信託統治協定によってこの制度の下におかれるものに適用する。

 現に委任統治の下にある地域
 第二次世界大戦の結果として敵国から分離される地域
 施政について責任を負う国によって自発的にこの制度の下におかれる地域
 前記の種類のうちのいずれの地域がいかなる条件で信託統治制度の下におかれるかについては、今後の協定で定める。

第78条
 国際連合加盟国の間の関係は、主権平等の原則の尊重を基礎とするから、信託統治制度は、加盟国となった地域には適用しない。

第79条
 信託統治制度の下におかれる各地域に関する信託統治の条項は、いかなる変更又は改正も含めて、直接関係国によって協定され、且つ、第83条及び第85条に規定するところに従って承認されなければならない。この直接関係国は、国際連合加盟国の委任統治の下にある地域の場合には、受任国を含む。

第80条
 第77条、第79条及び第81条に基いて締結され、各地域を信託統治制度の下におく個個の信託統治協定において協定されるところを除き、また、このような協定が締結される時まで、本章の規定は、いずれの国又はいずれの人民のいかなる権利をも、また、国際連合加盟国がそれぞれ当事国となっている現存の国際文書の条項をも、直接又は間接にどのようにも変更するものと解釈してはならない。
 本条1は、第77条に規定するところに従って委任統治地域及びその他の地域を信託統治制度の下におくための協定の交渉及び締結の遅滞又は延期に対して、根拠を与えるものと解釈してはならない。

第81条
 信託統治協定は、各場合において、信託統治地域の施政を行うについての条件を含み、且つ、信託統治地域の施政を行う当局を指定しなければならない。この当局は、以下施政権者といい、1若しくは2以上の国またはこの機構自身であることができる。

第82条
 いかなる信託統治協定においても、その協定が適用される信託統治地域の一部又は全部を含む1又は2以上の戦略地区を指定することができる。但し、第43条に基いて締結される特別協定を害してはならない。

第83条
 戦略地区に関する国際連合のすべての任務は、信託統治協定の条項及びその変更又は改正の承認を含めて、安全保障理事会が行う。
 第76条に掲げる基本目的は、各戦略地区の人民に適用する。
 安全保障理事会は、国際連合の信託統治制度に基く任務で戦略地区の政治的、経済的、社会的及び教育的事項に関するものを遂行するために、信託統治理事会の援助を利用する。但し、信託統治協定の規定には従うものとし、また、安全保障の考慮が妨げられてはならない。

第84条
 信託統治地域が国際の平和及び安全の維持についてその役割を果すようにすることは、施政権者の義務である。このため、施政権者は、この点に関して安全保障理事会に対して負う義務を履行するに当って、また、地方的防衛並びに信託統治地域における法律及び秩序の維持のために、信託統治地域の義勇軍、便益及び援助を利用することができる。

第85条
 戦略地区として指定されないすべての地区に関する信託統治協定についての国際連合の任務は、この協定の条項及びその変更又は改正の承認を含めて、総会が行う。
 総会の権威の下に行動する信託統治理事会は、前記の任務の遂行について総会を援助する。

第13章 信託統治理事会
第86条
 信託統治理事会は、次の国際連合加盟国で構成する。
 信託統治地域の施政を行う加盟国
 第23条に名を掲げる加盟国で信託統治地域の施政を行っていないもの
 総会によって3年の任期で選挙されるその他の加盟国。その数は、信託統治理事会の理事国の総数を、信託統治地域の施政を行う国際連合加盟国とこれを行っていないものとの間に均分するのに必要な数とする。
 信託統治理事会の各理事国は、理事会で自国を代表する特別の資格を有する者1人を指名しなければならない。

【任務及び権限】
第87条
 総会及び、その権威の下に、信託統治理事会は、その任務の遂行に当って次のことを行うことができる。

 施政権者の提出する報告を審議すること。
 請願を受理し、且つ、施政権者と協議してこれを審査すること。
 施政権者と協定する時期に、それぞれの信託統治地域の定期視察を行わせること。
 信託統治協定の条項に従って、前記の行動その他の行動をとること。

第88条
 信託統治理事会は、各信託統治地域の住民の政治的、経済的、社会的及び教育的進歩に関する質問書を作成しなければならない。また、総会の権限内にある各信託統治地域の施政権者は、この質問書に基いて、総会に年次報告を提出しなければならない。

【表決】
第89条
 信託統治理事会の各理事国は、1個の投票権を有する。
 信託統治理事会の決定は、出席し且つ投票する理事国の過半数によって行われる。

【手続】
第90条
 信託統治理事会は、議長を選定する方法を含むその手続規則を採択する。
 信託統治理事会は、その規則に従って必要があるときに会合する。この規則は、理事国の過半数の要請による会議招集の規定を含まなければならない。

第91条
 信託統治理事会は、適当な場合には、経済社会理事会及び専門機関がそれぞれ関係している事項について、両者の援助を利用する。

第14章 国際司法裁判所
第92条
 国際司法裁判所は、国際連合の主要な司法機関である。この裁判所は、付属の規程に従って任務を行う。この規定は、常設国際司法裁判所規程を基礎とし、且つ、この憲章と不可分の一体をなす。

第93条
 すべての国際連合加盟国は、当然に、国際司法裁判所規程の当事国となる。
 国際連合加盟国でない国は、安全保障理事会の勧告に基いて総会が各場合に決定する条件で国際司法裁判所規程の当事国となることができる。

第94条
 各国際連合加盟国は、自国が当事者であるいかなる事件においても、国際司法裁判所の裁判に従うことを約束する。
 事件の一方の当事者が裁判所の与える判決に基いて自国が負う義務を履行しないときは、他方の当事者は、安全保障理事会に訴えることができる。理事会は、必要と認めるときは、判決を執行するために勧告をし、又はとるべき措置を決定することができる。

第95条
 この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国が相互間の紛争の解決を既に存在し又は将来締結する協定によって他の裁判所に付託することを妨げるものではない。

第96条
 総会又は安全保障理事会は、いかなる法律問題についても勧告的意見を与えるように国際司法裁判所に要請することができる。
 国際連合のその他の機関及び専門機関でいずれかの時に総会の許可を得るものは、また、その活動の範囲内において生ずる法律問題について裁判所の勧告的意見を要請することができる。

第15章 事務局
第97条
 事務局は、1人の事務総長及びこの機構が必要とする職員からなる。事務総長は、安全保障理事会の勧告に基いて総会が任命する。事務総長は、この機構の行政職員の長である。

第98条
 事務総長は、総会、安全保障理事会、経済社会理事会及び信託統治理事会のすべての会議において事務総長の資格で行動し、且つ、これらの機関から委託される他の任務を遂行する。事務総長は、この機構の事業について総会に年次報告を行う。

第99条
 事務総長は、国際の平和及び安全の維持を脅威すると認める事項について、安全保障理事会の注意を促すことができる。

第100条
 事務総長及び職員は、その任務の遂行に当って、いかなる政府からも又はこの機構外のいかなる他の当局からも指示を求め、又は受けてはならない。事務総長及び職員は、この機構に対してのみ責任を負う国際的職員としての地位を損ずる虞のあるいかなる行動も慎まなければならない。
 各国際連合加盟国は、事務総長及び職員の責任のもっぱら国際的な性質を尊重すること並びにこれらの者が責任を果すに当ってこれらの者を左右しようとしないことを約束する。

第101条
 職員は、総会が設ける規則に従って事務総長が任命する。
 経済社会理事会、信託統治理事会及び、必要に応じて、国際連合のその他の機関に、適当な職員を常任として配属する。この職員は、事務局の一部をなす。
 職員の雇用及び勤務条件の決定に当って最も考慮すべきことは、最高水準の能率、能力及び誠実を確保しなければならないことである。職員をなるべく広い地理的基礎に基いて採用することの重要性については、妥当な考慮を払わなければならない。

第16章 雑則
第102条
 この憲章が効力を生じた後に国際連合加盟国が締結するすべての条約及びすべての国際協定は、なるべくすみやかに事務局に登録され、且つ、事務局によって公表されなければならない。
 前記の条約または国際協定で本条1の規定に従って登録されていないものの当事国は、国際連合のいかなる機関に対しても当該条約または協定を援用することができない。

第103条
 国際連合加盟国のこの憲章に基く義務と他のいずれかの国際協定に基く義務とが抵触するときはこの憲章に基く義務が優先する。

第104条
 この機構は、その任務の遂行及びその目的の達成のために必要な法律上の能力を各加盟国の領域において亨有する。

第105条
 この機構は、その目的の達成に必要な特権及び免除を各加盟国の領域において亨有する。
 これと同様に、国際連合加盟国の代表者及びこの機構の職員は、この機構に関連する自己の任務を独立に遂行するために必要な特権及び免除を亨有する。
 総会は、本条1及び2の適用に関する細目を決定するために勧告をし、又はそのために国際連合加盟国に条約を提案することができる。

第17章 安全保障の過渡的規定
第106条
 第43条に掲げる特別協定でそれによって安全保障理事会が第42条に基く責任の遂行を開始することができると認めるものが効力を生ずるまでの間、1943年10月30日にモスコーで署名された4国宣言の当事国及びフランスは、この宣言の第5項の規定に従って、国際の平和及び安全の維持のために必要な共同行動をこの機構に代ってとるために相互に及び必要に応じて他の国際連合加盟国と協議しなければならない。

第107条
 この憲章のいかなる規定も、第二次世界大戦中にこの憲章の署名国の敵であった国に関する行動でその行動について責任を有する政府がこの戦争の結果としてとり又は許可したものを無効にし、又は排除するものではない。

第18章 改正
第108条
 この憲章の改正は、総会の構成国の3分の2の多数で採択され、且つ、安全保障理事会のすべての常任理事国を含む国際連合加盟国の3分の2によって各自の憲法上の手続に従って批准された時に、すべての国政連合加盟国に対して効力を生ずる。

第109条
 この憲章を再審議するための国際連合加盟国の全体会議は、総会の構成国の3分の2の多数及び安全保障理事会の9理事会の投票によって決定される日及び場所で開催することができる。各国際連合加盟国は、この会議において1個の投票権を有する。
 全体会議の3分の2の多数によって勧告されるこの憲章の変更は、安全保障理事会のすべての常任理事国を含む国際連合加盟国の3分の2によって各自の憲法上の手続に従って批准された時に効力を生ずる。
 この憲章の効力発生後の総会の第10回年次会期までに全体会議が開催されなっかた場合には、これを招集する提案を総会の第10回年次会期の議事日程に加えなければならず、全体会議は、総会の構成国の過半数及び安全保障理事国の7理事国の投票によって決定されたときに開催しなければならない。

第19章 批准及び署名
第110条
 この憲章は、署名国によって各自の憲法上の手続に従って批准されなければならない.
 批准書は、アメリカ合衆国政府に寄託される。同政府は、すべての署名国及び、この機構の事務総長が任命された場合には、事務総長に対して各寄託を通告する。
 この憲章は、中華民国、フランス、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、アメリカ合衆国及びその他の署名国の過半数が批准書を寄託した時に効力を生ずる。批准書寄託調書は、その時にアメリカ合衆国政府が作成し、その謄本をすべての署名国に送付する。
 この憲章の署名国で憲章が効力を生じた後に批准するものは、各自の批准書の寄託の日に国際連合の原加盟国となる。

第111条
 この憲章は、中国語、フランス語、ロシア語、英語及びスペイン語の本文をひとしく正文とし、アメリカ合衆国政府の記録に寄託しておく。この憲章の認証謄本は、同政府が他の署名国の政府に送付する。
 以上の証拠として、連合国政府の代表者は、この憲章に署名した。
 1945年6月26日にサン・フランシスコ市で作成した。

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(通称=安保条約)

はじめに

 昭和35(1960)年6月23日、先に発効した日米安保条約を改定した新条約。正式名称は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」と言い、一般的には「新安保条約」・「改定安保条約」、あるいは単に「日米安保条約」等と呼ばれている。昭和27(1952)年4月28日に発効した日米安保条約(旧安保条約)であったが、更に米ソ両国を機軸とする東西両陣営の対立(冷戦)は激化。加えて、先の「敗戦国」日本が経済的に復興、再び「大国化」する事から、日本が経済力に見合った国際的な政治発言力・軍事力を標榜し、且つ、米国の軍事的隷属下から離脱する事を恐れた米国が、「同盟国」日本を、永遠に「米国の属国」としての地位に固定する目的で、旧安保条約を改定。又、これに伴い米国は日本に対して、名目的には「同盟国軍」と言いながら、実質的には「占領軍」として日本に駐留する米軍の「後方支援」を要求。所謂「思いやり予算」の拠出や『周辺事態法』の整備を通して、日本の隷属強化を図った。
 この安保条約に基づき、米国と地位協定や各種協力協定を結び国内法を整備している。


日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約
Treaty of mutual cooperation and security between Japan and the United States of America
(日米安全保障条約・安保条約)

1960(昭和35)年1月19日 ワシントンで署名
1960年6月19日 国会承認
1960年6月23日 批准書交換、効力発生

1960(昭和35)年6月23日 条約第6号

 日本国及びアメリカ合衆国は、
 両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、
 また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的な安定及び福祉の条件を助長することを希望し、
 国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、
 両国が国際連合憲章に定める個別的または集団的自衛の固有の権利を有しているを確認し、
 両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、
 相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、
 よって、次のとおり協定する。

第一条(平和の維持のための努力)

 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武器の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。

 締約国は、他の平和愛好国と共同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。


第二条(経済的協力の促進)
 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。


第三条(自衛力の維持発展)
 締約国は、個別的に及び相互に協力して、持続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。


第四条(臨時協議)
 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。


第五条(共同防衛)

 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

 前記の武力攻撃及びその結果として執った全ての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。


第六条(基地の許与)

 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持の寄与するため、アメリカ合州国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。

 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合州国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合州国との間の安全保障条約第三条に基づく行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。


第七条(国連憲章との関係)
 この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響を及ぼすものではなく、また、及ぼすものとして解釈してはならない。


第八条(批准)
 この条約は、日本国及びアメリカ合州国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生ずる。


第九条(旧条約の失効)
 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合州国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生のときに効力を失う。


第十条(条約の終了)

 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合州国政府が認めるときまで効力を有する。

 もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意志を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行われた後一年で終了する。

--------------------------------------------

 以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。
千九百六十年一月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。
(両国全権委員氏名省略)


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交換公文
(条約第六条の実施に関する交換公文)
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(日本側往簡)
 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に言及し、次のことが同条約第六条の実施に関する日本国政府の了解であることを閣下に通報する光栄を有します。
 合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動(前記の条約第五条の規定に基づいて行なわれるものを除く。)のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする。
 本大臣は、閣下が、前記のことがアメリカ合衆国政府の了解でもあることを貴国政府に代わつて確認されれば幸いであります。
 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
    千九百六十年一月十九日にワシントンで

岸 信介     


 アメリカ合衆国国務長官
   クリスチャン・A・ハーター閣下


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(合衆国側返簡)
 書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
(日本側書簡省略)
 本長官は、前記のことがアメリカ合衆国政府の了解でもあることを本国政府に代わつて確認する光栄を有します。
 本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
    千九百六十年一月十九日

アメリカ合衆国国務長官           
クリスチャン・A・ハーター     

  日本国総理大臣 岸信介閣下



地位協定について

日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定
1960(昭和35)年1月19日 ワシントンで署名
1960年6月23日 効力発生

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 日本国及びアメリカ合衆国は、千九百六十年一月十九日にワシントンで署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条の規定に従い、次に掲げる条項によりこの協定を締結した。
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第一条(用語の意義)
 この協定において、
(a)
 「合衆国軍隊の構成員」とは、日本国の領域にある間におけるアメリカ合衆国の陸軍、海軍又は空軍に属する人員で現に服役中のものをいう。
(b)
 「軍属」とは、合衆国の国籍を有する文民で日本国にある合衆国軍隊に雇用され、これに勤務し、又はこれに随伴するもの(通常日本国に居住する者及び第十四条1に掲げる者を除く。)をいう。この協定のみの適用上、合衆国及び日本国の二重国籍者で合衆国が日本国に入れたものは、合衆国国民とみなす。
(c)
 「家族」とは、次のものをいう。
(1)
 配偶者及び二十一才未満の子
(2)
 父、母及び二十一才以上の子で、その生計費の半額以上を合衆国軍隊の構成員又は軍属に依存するもの。


第二条 (施設・区域の提供等)

(a)
 合衆国は、相互協力及び安全保障条約第六条の規定に基づき、日本国内の施設及び区域の使用を許される。個個の施設及び区域に関する協定は、第二十五条に定める合同委員会を通じて両政府が締結しなけれぱならない。「施設及び区域」には、当該施設及び区域の運営に必要な現存の設備、備品及び定着物を含む。
(b)
 合衆国が日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の終了の時に使用している施設及び区域は、両政府が(a)の規定に従って合意した施設及び区域とみなす。

 日本国政府及び合衆国政府は、いずれか一方の要請があるときは、前記の取極を再検討しなければならず、また、前記の施設及び区域を日本国に返還すべきこと又は新たに施設及び区域を提供することを合意することができる。

 合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなったときは、いつでも、日本国に返還しなければならない。合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する。

(a)
 合衆国軍隊が施設及び区域を一時的に使用していないときは、日本国政府は、臨時にそのような施設及び区域をみずから使用し、又は日本国民に使用させることができる。ただし、この使用が、合衆国軍隊による当該施設及び区域の正規の使用の目的にとって有害でないことが合同委員会を通じて両政府間に合意された場合に限る。
(b)
 合衆国軍隊が一定の期間を限って使用すべき施設及び区域に関しては、合同委員会は、当該施設及び区域に関する協定中に、適用があるこの協定の規定の範囲を明記しなければならない。


第三条 (施設・区域に関する措置)

 合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。日本国政府は、施設及び区域の支持、警護及び管理のための合衆国軍隊の施設及び区域への出入の便を図るため、合衆国軍隊の要請があったときは、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で、それらの施設及び区域に隣接し又はそれらの近傍の土地、領水及び空間において、関係法令の範間内で必要な措置を執るものとする。合衆国も、また、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で前記の目的のため必要な措置を執ることができる。

 合衆国は、1に定める措置を、日本国の領域への、領域からの又は領域内の航海、航空、通信又は陸上交通を不必要に妨げるような方法によっては執らないことに同意する。合衆国が使用する電波放射の装置が用いる周波数、電力及びこれらに類する事項に関するすべての問題は、両政府の当局間の取極により解決しなければならない。日本国政府は、合衆国軍隊が必要とする電気通信用電子装置に対する妨害を防止し又は除去するためのすべての合理的な措置を関係法令の範囲内で執るものとする。

 合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。


第四条 (施設の返還)

 合衆国は、この協定の終了の際又はその前に日本国に施設及び区域を返還するに当たって、当該施設及び区域をそれらが合衆国軍隊に提供された時の状態に回復し、又はその回復の代りに日本国に補償する義務を負わない。

 日本国は、この協定の終了の際又はその前における施設及び区域の返還の際、当該施設及び区域に加えられている改良又はそこに残される建物若しくはその他の工作物について、合衆国にいかなる補償をする義務も負わない。

 前記の規定は、合衆国政府が日本国政府との特別取極に基づいて行なう建設には適用しない。


第五条 (入港料・着陸料の免除)

 合衆国及び合衆国以外の国の船舶及び航空機で、合衆国によって、合衆国のために又は合衆国の管理の下に公の目的で運航されるものは、入港料又は着陸料を課されないで日本国の港又は飛行場に出入することができる。この協定による免除を与えられない貨物又は旅客がそれらの船舶又は航空機で運送されるときは、日本国の当局にその旨の通告を与えなければならず、その貨物又は旅客の日本国への入国及び同国からの出国は、日本国の法令による。

 1に掲げる船舶及び航空機、合衆国政府所有の車両(機甲車両を含む。)並びに合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、合衆国軍隊が使用している施設及び区域に出入し、これらのものの間を移勤し、及びこれらのものと日本国の港又は飛行場との間を移動することができる。合衆国の軍用車両の施設及び区域への出入並びにこれらのものの間の移動には、道路使用料その他の課徴金を課さない。

 1に掲げる船舶が日本国の港に入る場合には、通常の状態においては、日本国の当局に適当な通告をしなければならない。その船舶は、強制水先を免除される。もっとも、水先人を使用したときは、応当する料率で水先料を支払わなければならない。


第六条 (航空交通管理・通信)

 すべての非軍用及び軍用の航空交通管理及び通信の体系は、緊密に協調して発達を図るものとし、かつ、集団安全保障の利益を達成するため必要な程度に整合するものとする。この協調及び整合を図るため必要な手続及びそれに対するその後の変更は、両政府の当局間の取極によって定める。

 合衆国軍隊が使用している施設及び区域並びにそれらに隣接し又はそれらの近傍の領水に置かれ、又は設置される燈火その他の航行補助施設及び航空保安施設は、日本国で便用されている様式に合致しなければならない。これらの施設を設置した日本国及び合衆国の当局は、その位置及び特徴を相互に通告しなければならず、かつ、それらの施設を変更し、又は新たに設置する前に予告をしなければならない。


第七条 (公共役務の利用)
 合衆国軍隊は、日本国政府の各省その他の機関に当該時に適用されている条件よりも不利でない条件で、日本国政府が有し、管理し、又は規制するすべての公益事業及び公共の役務を利用することができ、並びにその利用における優先権を亨有するものとする。


第八条 (気象業務の提供)
 日本国政府は、両政府の当局間の取極に従い、次の気象業務を合衆国軍隊に提供することを約束する。
(a)
 地上及び海上からの気象観測(気象観測船からの観測を含む。)
(b)
 気象資料 (気象庁の定期的概報及び過去の資料を含む。)
(c)
 航空機の安全かつ正確な運航のため必要な気象情報を報ずる電気通信業務
(d)
 地震観測の資料 (地震から生ずる津波の予想がされる程度及びその津波の影響を受ける区域の予報を含む。)


第九条 (合衆国軍隊構成員等の地位)

 この条の規定に従うことを条件として、合衆国は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族である者を日本国にいれることができる。

 合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される。合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される。ただし、日本国の領域における永久的な居所又は住所を要求する権利を取得するものとみなされない。

 合衆国軍隊の構成員は、日本国への入国又は日本国からの出国に当たって、次の文書を携帯しなければならない。
(a)
氏名、生年月日、階級及び番号、軍の区分並びに写真を掲げる身分証明書
(b)
 その個人又は集団が合衆国軍隊の構成員として有する地位及び命令された旅行の証明となる個別的又は集団的旅行の命令書
 合衆国軍隊の構成員は、日本国にある間の身分証明の為、前記の身分証明書を携帯していなければならない。身分証明書は、要請があるときは日本国の当局に提示しなければならない。

 軍属、その家族及び合衆国軍隊の構成員の家族は、合衆国の当局が発給した適当な文書を携帯し、日本国への入国若しくは日本国からの出国に当たって又は日本国にある間その身分を日本国の当局が確認することができるようにしなければならない。

 1の規定に基づいて日本国に入国した者の身分に変更があってその者がそのような入国の資格を有しなくなった場合には、合衆国の当局は、日本国の当局にその旨を通告するものとし、また、その者が日本国から退去することを日本国の当局によって要求されたときは、日本国政府の負担によらないで相当の期間内に日本国から輸送することを確保しなければならない。

 日本国政府が合衆国軍隊の構成員若しくは軍属の日本国の領域からの送出を要請し、又は合衆国軍隊の旧構成員若しくは旧軍属に対しもしくは合衆国軍隊の構成員、軍属、旧構成員若しくは旧軍属の家族に対し退去命令を出したときは、合衆国の当局は、それらの者を自国の領域内に受け入れ、その他日本国外に送出することにつき責任を負う。この項の規定は、日本国民でない者で合衆国軍隊の構成員若しくは軍属として又は合衆国軍隊の構成員若しくは軍属となるために日本国に入国したもの及びそれらの者の家族に対してのみ適用する。


第十条 (運転免許証)

 日本国は、合衆国が合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族に対して発給した運転許可証若しくは運転免許証又は軍の運転許可証を、運転者試験又は手数料を課さないで、有効なものとして承認する。

 合衆国軍隊及び軍属用の公用車両は、それを容易に識別させる明確な番号標又は個別の記号を付けていなければならない。

 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の私有車両は、日本国民に適用される条件と同一の条件で取得する日本国の登録番号標を付けていなければならない。


第十一条 (関税等の取扱)

 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、この協定中に規定がある場合を除くほか、日本国の税関当局が執行する法令に服さなければならない。

 合衆国軍隊、合衆国軍隊の公認調達機関又は第十五条に定める諸機関が合衆国軍隊の公用のため又は合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の使用のため輸入するすべての資材、需品及び備品並びに合衆国軍隊が専用すべき資材、需品及び備品又は合衆国軍隊が使用する物品若しくは施設に最終的には合体されるべき資材、需品及び備品は、日本国に入れることを許される。この輸入には、関税その他の課徴金を課さない。前記の資材、需品及び備品は、合衆国軍隊、合衆国軍隊の公認調達機関又は第十五条に定める諸機関が輸入するものである旨の適当な証明書(合衆国軍隊が専用すべき資材、需品及び備品又は合衆国軍隊が使用する物品若しくは施設に最終的には合体されるべき資材、需品及び備品にあっては、合衆国軍隊が前記の目的のために受領すべき旨の適当な証明書)を必要とする。

 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族に仕向けられ、かつ、これらの者の私用に供せられる財産には、関税その他の課徴金を課する。ただし、次のものについては、関税その他の課徴金を課さない。
(a)
 合衆国軍隊の構成員若しくは軍属が日本国で勤務するため最初に到着した時に輸入し、又はそれらの家族が当該合衆国軍隊の構成員若しくは軍属と同居するために最初に到着した時に輸入するこれらの者の私用のための家具及び家庭用品並びにこれらの者が入国の際持ち込む私用のための身の回り品
(b)
 合衆国軍隊の構成員又は軍属が自己又はその家族の私用のため購入する車両及び部品
(c)
 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の私用のため合衆国において通常日常用として購入される範囲の合理的な数量の衣類及び家庭用品で、合衆国軍事郵便局を通じて日本国に郵送されるもの

 2及び3で与える免除は、物の輸入の場合のみに適用するものとし、関税及び内国消費税がすでに徴収された物を購入する場合に、当該物の輸入の際税関当局が徴収したその関税及び内国消費税を払いもどすものと解してはならない。

 税関検査は、次のものの場合には行なわないものとする。
(a)
 命令により日本国に入国し、又は日本国から出国する合衆国軍隊の部隊
(b)
 公用の封印がある公文書及び合衆国軍事郵便路線上にある公用郵便物
(c)
 合衆国政府の船荷証券により船積みされる軍事貨物

 関税の免除を受けて日本国に輸入されたものは、日本国及び合衆国の当局が相互間で合意する条件に従って処分を認める場合を除くほか、関税の免除を受けて当該物を輸入する権利を有しない者に対して日本国内で処分してはならない。

 2及び3の規定に基づき関税その他の課徴金の免除を受けて日本国に輸入された物は、関税その他の課徴金の免除を受けて再輸出することが出来る。

 合衆国軍隊は、日本国の当局と協力して、この条の規定に従って合衆国軍隊、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族に与えられる特権の濫用を防止するため必要な措置を執らなければならない。

(a)
 日本国の当局及び合衆国軍隊は、日本国政府の税関当局が執行する法令に違反する行為を防止するため、調査の実施及び証拠の収集について相互に援助しなければならない。
(b)
 合衆国軍隊は、日本国政府の税関当局によって又はこれに代わって行なわれる差押えを受けるべき物件がその税関当局に引き渡されることを確保するため、可能なすべての援助を与えなければならない。
(c)
 合衆国軍隊は、合衆国軍隊の構成員もしくは軍属又はそれらの家族が納付すべき関税、租税及び罰金の納付を確保するため、可能なすべての援助を与えなければならない。
(d)
 合衆国軍隊に属する車両及び物件で、日本国政府の関税又は財務に関する法令に違反する行為に関連して日本国政府の税関当局が差し押えたものは、関係部隊の当局に引き渡さなければならない。


第十二条 (調達)

 合衆国は、この協定の目的のため又はこの協定で認められるところにより日本国で供給されるべき需品又は行なわれるべき工事のため、供給者又は工事を行なう者の選択に関して制限を受けないで契約することができる。そのような需品又は工事は、また、両政府の当局間で合意される時は、日本国政府を通じて調達することが出来る。

 現地で供給される合衆国軍隊の維持のため必要な資材、需品、備品及び役務でその調達が日本国の経済に不利な影響を及ぼすおそれがあるものは、日本国の権限のある当局との調整の下に、また、望ましい時は日本国の権限のある当局を通じて又はその援助を得て、調達しなければならない。

 合衆国軍隊又は合衆国軍隊の公認調達機関が適当な証明書を附して日本国で公用のため調達する資材、需品、備品及び役務は、日本の次の租税を免除される。
(a)
 物品税
(b)
 通行税
(c)
 揮発油税
(d)
 電気ガス税
 最終的には合衆国軍隊が使用するため調達される資材、需品、備品及び役務は、合衆国軍隊の適当な証明書があれば、物品税及び揮発油税を免除される。両政府は、この条に明示していない日本の現在の又は将来の租税で、合衆国軍隊によって調達され、又は最終的には合衆国軍隊が使用するため調達される資材、需品、備品及び役務の購入価格の重要なかつ容易に判別することができる部分をなすと認められるものに関しては、この条の目的に合致する免除又は税の軽減を認めるための手続について合意するものとする。

 現地の労務に対する合衆国軍隊及び第十五条に定める諸機関の需要は、日本国の当局の援助を得て充足される。

 所得税、地方住民税及び社会保障のための納付金を源泉徴収して納付するための義務並びに、相互間で別段の合意をする場合を除くほか、賃金及び諸手当に関する条件その他の雇用及び労働の条件、労働者の保護のための条件並びに労働関係に関する労働者の権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない。

 合衆国軍隊又は、適当な場合には、第十五条に定める機関により労働者が解雇され、かつ、雇用契約が終了していない旨の日本国の裁判所又は労働委員会の決定が最終的のものとなった場合には、次の手続きが適用される。
(a)
 日本国政府は、合衆国軍隊又は前記の機関に対し、裁判所又は労働委員会の決定を通報する。
(b)
 合衆国軍隊又は前記の機関が当該労働者を就労させることを希望しないときは、合衆国軍隊又は前記の機関は、日本国政府から裁判所又は労働委員会の決定について通報を受けた後七日以内に、その旨を日本国政府に通告しなければならず、暫定的にその労働者を就労させないことができる。
(c)
 前記の通告が行なわれたときは、日本国政府及び合衆国軍隊又は前記の機関は、事件の実際的な解決方法を見出すため遅滞なく協議しなければならない。
(d)
 (c)の規定に基づく協議の開始の日から三十日の期間内にそのような解決に到達しなかったときは、当該労働者は、就労することができない。このような場合には、合衆国政府は、日本国政府に対し、両政府間で合意される期間の当該労働者の雇用の費用に等しい額を支払わなければならない。

 軍属は、雇用の条件に関して日本国の法令に服さない。

 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、日本国における物品及び役務の個人的購入について日本国の法令に基づいて課される租税又は類似の公課の免除を個の上の規定を理由として享有することはない。

 3に掲げる租税の免除を受けて日本国で購入した物は、日本国及び合衆国の当局が相互間で合意する条件に従って処分を認める場合を除くほか、当該租税の免除を受けて当該物を購入する権利を有しないものに対して日本国内で処分してはならない。


第十三条 (租税)

 合衆国軍隊は、合衆国軍隊が日本国において保有し、使用し、又は移転する財産について租税又は類似の公課を課されない。

 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、これらの者が合衆国軍隊に勤務し、又は合衆国軍隊若しくは第十五条に定める諸機関に雇用された結果受ける所得について、日本国政府又は日本国にあるその他の課税権者に日本の租税を納付する義務を負わない。この条の規定は、これらの者に対し、日本国の源泉から生ずる所得についての日本の租税の納付を免除するものではなく、また、合衆国の所得税のために日本国に居所を有することを申し立てる合衆国市民に対し、所得についての日本の租税の納付を免除するものではない。これらの者が合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族であるという理由のみによって日本国にある期間は、日本の租税の賦課上、日本国に居所又は住所を有する期間とは認めない。

 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、これらの者が一時的に日本国にあることのみに基づいて日本国に所在する有体又は無体の動産の保有、使用、これらの者相互間の移転又は死亡による移転についての日本国における租税を免除される。ただし、この免除は、投資若しくは事業を行なうため日本国において保有される財産又は日本国において登録された無体財産権には適用しない。この条の規定は、私有車両による道路の使用について納付すべき租税の免除を与える義務を定めるものではない。


第十四条 (指定合衆国人の法的地位)

 通常合衆国に居住する人(合衆国の法律に基づいて組織された法人を含む。)及びその被用者で、合衆国軍隊のための合衆国との契約の履行のみを目的として日本国にあり、かつ、合衆国政府が2の規定に従い指定するものは、この条に規定がある場合を除くほか、日本国の法令に服さなければならない。

 1にいう指定は、日本国政府との協議の上で行なわれるものとし、かつ、安全上の考慮、関係業者の技術上の適格要件、合衆国の標準に合致する資材若しくは役務の欠如又は合衆国の法令上の制限のため競争入札を実施することができない場合に限り行なわれるものとする。
 前記の指定は、次のいずれかの場合には、合衆国政府が取り消すものとする。
(a)
 合衆国軍隊のための合衆国との契約の履行が終わったとき。
(b)
 それらの者が日本国において合衆国軍隊関係の事業活動以外の事業活動に従事していることが立証されたとき。
(c)
 それらの者が日本国で違法とされる活動を行なっているとき。

 前記の人及びその被用者は、その身分に関する合衆国の当局の証明があるときは、この協定による次の利益を与えられる。
(a)
 第五条2に定める出入及び移動の権利
(b)
 第九条の規定による日本国への入国
(c)
 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族について第十一条3に定める関税その他の課徴金の免除
(d)
 合衆国政府により認められたときは、第十五条に定める諸機関の役務を利用する権利
(e)
 合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族について第十九条2に定めるもの
(f)
 合衆国政府により認められたときは、第二十条に定めるところにより軍票を使用する権利
(g)
 第二十一条に定める郵便施設の利用
(h)
 雇用の条件に関する日本国の法令の適用からの除外

 前記の人及びその被用者は、その身分の者であることが旅券に記載されていなければならず、その到着、出発及び日本国にある間の居所は、合衆国軍隊が日本国の当局に随時に通告しなければならない。

 前記の人及びその被用者が1に掲げる契約の履行のためにのみ保有し、使用し、又は移転する減価償却資産(家屋を除く。)については、合衆国軍隊の権限のある官憲の証明があるときは、日本の租税又は類似の公課を課されない。

 前記の人及びその被用者は、合衆国軍隊の権限のある官憲の証明があるときは、これらの者が一時的に日本国にあることのみに基づいて日本国に所在する有体又は無体の動産の保有、使用、死亡による移転又はこの協定に基づいて租税の免除を受ける権利を有する人若しくは機関への移転について日本国における租税を免除される。ただし、この免除は、投資のため若しくは他の事業を行なうため日本国において保有される財産又は日本国において登録された無体財産権には適用しない。この条の規定は、私有車両による道路の使用について納付すべき租税の免除を与える義務を定めるものではない。

1に掲げる人及びその被用者は、この協定に定めるいずれかの施設又は区域の建設、維持又は運営に関して合衆国政府と合衆国において結んだ契約に基づいて発生する所得について、日本国政府又は日本国にあるその他の課税権者に所得税又は法人税を納付する義務を負わない。この項の規定は、これらの者に対し、日本国の源泉から生ずる所得についての所得税又は法人税の納付を免除するものではなく、また、合衆国の所得税のために日本国に居所を有することを申し立てる前記の人及びその被用者に対し、所得についての日本の租税の納付を免除するものではない。これらの者が合衆国政府との契約の履行に関してのみ日本国にある期間は、前記の租税の賦課上、日本国に居所又は住所を有する期間とは認めない。

 日本国の当局は、1に掲げる人及びその被用者に対し、日本国において犯す罪で日本国の法令によって罰することができるものについて裁判権を行使する第一次の権利を有する。日本国の当局が前記の裁判権を行使しないことに決定した場合には、日本国の当局は、できる限りすみやかに合衆国の軍当局にその旨を通告しなければならない。この通告があったときは、合衆国の軍当局は、これらの者に対し、合衆国の法令により与えられた裁判権を行使する権利を有する。


第十五条(諸機関の管理等)

(a)
 合衆国の軍当局が公認し、かつ、規制する海軍販売所、ピー・エックス、食堂、社交クラブ、劇場、新聞その他の歳出外資金による諸機関は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の利用に供するため、合衆国軍隊が使用している施設及び区域内に設置することができる。これらの諸機関は、この協定に別段の定めがある場合を除くほか、日本の規制、免許、手数料、租税又は類似の管理に服さない。
(b)
 合衆国の軍当局が公認し、かつ、規制する新聞が一般の公衆に販売されるときは、当該新聞は、その頒布に関する限り、日本の規制、免許、手数料、租税又は類似の管理に服する。

 これらの諸機関による商品及び役務の販売には、1(b)に定める場合を除くほか、日本の租税を課さず、これらの諸機関による商品及び需品の日本国内における購入には、日本の租税を課する。

 これらの諸機関が販売する物品は、日本国及び合衆国の当局が相互間で合意する条件に従って処分を認める場合を除くほか、これらの諸機関から購入することを認められない者に対して日本国内で処分してはならない。

 この条に掲げる諸機関は、日本国の当局に対し、日本国の税法が要求するところにより資料を提供するものとする。


第十六条 (法令尊重等の義務)
 日本国において、日本国の法令を尊重し、及びこの協定の精神に反する活動、特に政治的活動を慎むことは、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の義務である。


第十七条 (裁判権)

 この条の規定に従うことを条件として、
(a)
 合衆国の軍当局は、合衆国の軍法に服するすべての者に対し、合衆国の法令により与えられたすべての刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。
(b)
 日本国の当局は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族に対し、日本国の領域内で犯す罪で日本国の法令によって罰することができるものについて、裁判権を有する。

(a)
 合衆国の軍当局は、合衆国の軍法に服する者に対し、合衆国の法令によって罰することができる罪で日本国の法令によっては罰することができないもの(合衆国の安全に関する罪を含む。)について、専属的裁判権を行使する権利を有する。
(b)
 日本国の当局は、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族に対し、日本国の法令によって罰することができる罪で合衆国の法令によっては罰することができないもの(日本国の安全に関する罪を含む。)について、専属的裁判権を行使する権利を有する。
(c)
2及び3の規定の適用上、国の安全に関する罪は、次のものを含む。
(i)
 当該国に対する反逆
(ii)
 妨害行為(サボタージュ)、諜報行為又は当該国の公務上若しくは国防上の秘密に関する法令の違反

 裁判権を行使する権利が競合する場合には、次の規定が適用される。
(a)
 合衆国の軍当局は、次の罪については、合衆国軍隊の構成員又は軍属に対して裁判権を行使する第一次の権利を有する。
(i)
 もっぱら合衆国の財産若しくは安全のみに対する罪又はもっぱら合衆国軍隊の他の構成員若しくは軍属若しくは合衆国軍隊の構成員若しくは軍属の家族の身体若しくは財産のみに対する罪
(ii)
 公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪
(b)
 その他の罪については、日本国の当局が、裁判権を行使する第一次の権利を有する。
(c)
 第一次の権利を有する国は、裁判権を行使しないことに決定したときは、できる限りすみやかに他方の国の当局にその旨を通告しなければならない。第一次の権利を有する国の当局は、他方の国がその権利の放棄を特に重要であると認めた場合において、その他方の国の当局から要請があったときは、その要請に好意的考慮を払わなければならない。

 前諸項の規定は、合衆国の軍当局が日本国民又は日本国に通常居住する者に対し裁判権を行使する権利を有することを意味するものではない。ただし、それらの者が合衆国軍隊の構成員であるときは、この限りではない。

(a)
 日本国の当局及び合衆国の軍当局は、日本国の領域内における合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族の逮捕及び前諸項の規定に従って裁判権を行使すべき当局へのそれらの者の引渡しについて、相互に援助しなければならない。
(b)
 日本国の当局は、合衆国の軍当局に対し、合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族の逮捕についてすみやかに通告しなければならない。
(c)
 日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行なうものとする。

(a)
 日本国の当局及び合衆国の軍当局は、犯罪についてのすべての必要な捜査の実施並びに証拠の収集及び提出(犯罪に関連する物件の押収及び相当な場合にはその引渡しを含む。)について、相互に援助しなければならない。ただし、それらの物件の引渡しは、引渡しを行なう当局が定める期間内に還付されることを条件として行なうことができる。
(b)
 日本国の当局及び合衆国の軍当局は、裁判権を行使する権利が競合するすべての事件の処理について、相互に通告しなければならない。

(a)
 死刑の判決は、日本国の法制が同様の場合に死刑を規定していない場合には、合衆国の軍当局が日本国内で執行してはならない。
(b)
 日本国の当局は、合衆国の軍当局がこの条の規定に基づいて日本国の領域内で言い渡した自由刑の執行について合衆国の軍当局から援助の要請があったときは、その要請に好意的考慮をしなければ払わなければならない。

 被告人がこの条の規定に従って日本国の当局又は合衆国の軍当局のいずれかにより裁判を受けた場合において、無罪の判決を受けたとき、又は有罪の判決を受けて服役しているとき、服役したとき、若しくは赦免されたときは、他方の国の当局は、日本国の領域内において同一の犯罪について重ねてその者を裁判してはならない。ただし、この項の規定は、合衆国の軍当局が合衆国軍隊の構成員を、その者が日本国の当局により裁判を受けた犯罪を構成した作為又は不作為から生ずる軍紀違反について、裁判することを妨げるものではない。

 合衆国軍隊の構成員若しくは軍属又はそれらの家族は、日本国の裁判権に基づいて公訴を提起された場合には、いつでも、次の権利を有する。
(a)
 遅滞なく迅速な裁判を受ける権利
(b)
 公判前に自己に対する具体的な訴因の通知を受ける権利
(c)
 自己に不利な証人と対決する権利
(d)
 証人が日本国の管轄内にあるときは、自己のために強制的手続きにより証人を求める権利
(e)
 自己の弁護のため自己の選択する弁護人をもつ権利又は日本国でその当時通常行なわれている条件に基づき費用を要しないで若しくは費用の補助を受けて弁護人をもつ権利
(f)
 必要と認めたときは、有能な通訳を用いる権利
(g)
 合衆国の政府の代表者と連絡する権利及び自己の裁判にその代表者を立ち合せる権利
10
(a)
 合衆国軍隊の正式に編成された部隊又は編成隊は、第二条の規定に基づき私用する施設及び区域において警察権を行なう権利を有する。合衆国軍隊の軍事警察は、それらの施設及び区域において、秩序及び安全の維持を確保するためすべての適当な措置を執ることができる。
(b)
 前記の施設及び区域の外部においては、前記の軍事警察は、必ず日本国の当局との取極に従うことを条件とし、かつ、日本国の当局と連絡して使用されるものとし、その使用は、合衆国軍隊の構成員の間の規律及び秩序の維持のため必要な範囲内に限るものとする。
11
 相互協力及び安全保障条約第五条の規定が適用される敵対行為が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府のいずれの一方も、他方の政府に対し六十日前に予告を与えることによって、この条のいずれの規定にも適用も停止させる権利を有する。この権利が行使されたときは、日本国政府及び合衆国政府は、適用を停止される規定に代わるべき適当な規定を合意する目的をもって直ちに協議しなければならない。
12
 この条の規定は、この協定の効力発生前に犯したいかなる罪にも適用しない。それらの事件に対しては、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基づく行政協定第十七条の当該時に存在した規定を適用する。


第十八条 (請求権の放棄)

 各当事国は、自国が所有し、かつ、自国の陸上、海上又は航空の防衛隊が使用する財産に対する損害については、次の場合には、他方の当事国に対するすべての請求権を放棄する。
(a)
 損害が他方の当事国が防衛隊の構成員又は被用者によりその者の公務の執行中に生じた場合
(b)
 損害が他方の当事国が所有する車両、船舶又は航空機でその防衛隊が使用するものの使用から生じた場合。ただし、損害を与えた車両、船舶もしくは航空機が公用のために使用されていたとき、又は損害が公用のために使用されている財産に生じたときに限る。
 海難救助についての一方の当事国や他方の当事国に対する請求権は、放棄する。ただし、救助された船舶又は積荷が、一方の当事国が所有し、かつ、その防衛隊が公用のため使用しているものであった場合に限る。

(a)
 いずれか一方の当時国が所有するその他の財産で日本国内にあるものに対して1に掲げるようにして損害が生じた場合には、両政府が別段の合意をしない限り、(b)の規定に従って選定されている一人の仲裁人が、他方の当時国の責任の問題を決定し、及び損害の額を査定する。仲裁人は、また、同一の事件から生ずる反対の請求を裁定する。
(b)
(a)に掲げる仲裁人は、両政府の合意によって、司法関係の上級の地位を現に有し、又は有したことがある日本国民の中から選定する。
(c)
 仲裁人が行なった裁定は両当事国に対して拘束力を有する最終的のものとする。
(d)
 仲裁人が裁定した賠償の額は、5(e)(i)、(ii)、及び(iii)の規定に従って分担される。
(e)
 仲裁人の報酬は、両国政府の合意によって定め、両政府が、仲裁人の任務の遂行に伴う必要な費用とともに、均等の割合で支払う。
(f)
 もっとも、各当事国は、いかなる場合においても千四百合衆国ドル又は五十万四千円までの額については、その請求件を放棄する。これらの通貨の間の為替相場の著しい変動があった場合には、両政府は、前記の額の適当な調整について合意するものとする。

1及び2の規定の適用上、船舶について「当事国が所有する」というときは、その当事国が裸用船した船舶、裸の条件で徴発した船舶又は拿捕した船舶を含む。ただし、損失又は責任が当該当事国以外のものによって負担される範囲については、この限りではない。

 各当事国は、自国の防衛隊の構成員がその公務の執行に従事している間に被った負傷又は死亡については、他方の当事国に対するすべての請求権を放棄する。

 公務執行中の合衆国軍隊の構成員若しくは披用者の作為若しくは不作為又は合衆国軍隊が法律上責任を有するその他の作為、不作為若しくは事故で、日本国において日本国政府以外の第三者に損害を与えたものから生ずる請求権(契約による請求権及び6又は7の規定の適用を受ける請求権を除く。)は、日本国が次の規定に従つて処理する。
(a)
 請求は、日本国の自衛隊の行動から生ずる請求権に関する日本の法令に従つて、提起し、審査し、かつ、解決し、または裁判する。
(b)
 日本国は、前記のいかなる請求をも解決することができるものとし、合意され、または裁判により決定された額の支払を日本円で行う。
(c)
 前記の支払(合意による解決に従つてされたものであるとを問わない。)または支払を認めない旨の日本国の権限のある裁判所による確定した裁判は、両当事国に対し拘束力を有する最終的なものとする。
(d)
 日本国が支払をした各請求は、その明細並びに(e)(i)及び(ii)の規定による分担案とともに、合衆国の当局に通知されなければならない。二箇月以内に回答がなかつたときは、その分担案は、受諾されたものとみなす。
(e)
 (a)から(d)までおよび2の規定に従い請求を満たすために要した費用は、両当事国が次のとおり分担する。



共同発表
日米安全保障協議委員会
日米防衛協力のための指針の見直しの終了

1997年9月23日
於 ニュー・ヨーク

 日米同盟関係は、日本の安全の確保にとって必要不可欠なものであり、また、アジア太平洋地域における平和と安定を維持するために引き続き重要な役割を果たしている。日米同盟関係は、この地域における米国の肯定的な関与を促進するものである。この同盟関係は、自由、民主主義及び人権の尊重等の共通の価値観を反映するとともに、より安定した国際的な安全保障環境の構築のための努力を始めとする広範な日米間の協力の政治的な基礎となっている。このような努力が成果を挙げることは、この地域のすべての者の利益となる。

 1978年11月27日の第17回日米安全保障協議委員会(SCC)で了承された「日米防衛協力のための指針」(「指針」)は、防衛の分野における包括的な協力態勢に関する研究・協議の結果として策定された。指針の下で行われたより緊密な防衛協力のための作業の成果には顕著なものがあり、これは、日米安全保障体制の信頼性を増進させた。

 冷戦の終結にもかかわらず、アジア太平洋地域には潜在的な不安定性と不確実性が依然として存在しており、この地域における平和と安定の維持は、日本の安全のために一層重要になっている。

 1996年4月に橋本総理大臣とクリントン大統領により発表された「日米安全保障共同宣言」は、日米安全保障関係が、共通の安全保障上の目標を達成するとともに、21世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを再確認した。また、総理大臣と大統領は、日本と米国の間に既に構築されている緊密な協力関係を増進するため、1978年の指針の見直しを開始することで意見が一致した。

 1996年6月、日米両国政府は、1995年11月の日本の「防衛計画の大綱」及び「日米安全保障共同宣言」を踏まえて指針の見直し(「見直し」)を行うため、日米安全保障協議委員会の下にある防衛協力小委員会(SDC)を改組した。防衛協力小委員会は、冷戦後の情勢の変化にかんがみ、指針の下での成果を基礎として、以下の分野について検討を行ってきた。

平素から行う協力
 日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等
 日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合(「周辺事態」)の協力
 これらの検討は、平素からの及び緊急事態における日米両国の役割並びに協力及び調整の在り方について、一般的な大枠及び方向性を示すことを目的としたものである。見直しは、特定の地域における事態を議論して行ったものではない。
 防衛協力小委員会は、1996年9月の日米安全保障協議委員会による指示を受け、1997年秋に終了することを目途に、より効果的な日米協力に資するような考え方及び具体的な項目を洗い出すことを目標として見直しを行った。見直しの過程で防衛協力小委員会において行われた議論は、1996年9月の「日米防衛協力のための指針の見直しの進捗状況報告」及び1997年6月の「日米防衛協力のための指針の見直しに関する中間とりまとめ」に整理されている。
 防衛協力小委員会は、新たな「日米防衛協力のための指針」を作成し、これを日米安全保障協議委員会に報告した。日米安全保障協議委員会は、以下に示す指針を了承し、公表した。この指針は、1978年の指針に代わるものである。



日米防衛協力のための指針 (ガイドライン)
I 指針の目的

 この指針の目的は、平素から並びに日本に対する武力攻撃及び周辺事態に際してより効果的かつ信頼性のある日米協力を行うための、堅固な基礎を構築することである。また、指針は、平素からの及び緊急事態における日米両国の役割並びに協力及び調整の在り方について、一般的な大枠及び方向性を示すものである。

II 基本的な前提及び考え方

 指針及びその下で行われる取組みは、以下の基本的な前提及び考え方に従う。

1 日米安全保障条約及びその関連取極に基づく権利及び義務並びに日米同盟関係の基本的な枠組みは、変更されない。

2 日本のすべての行為は、日本の憲法上の制約の範囲内において、専守防衛、非核三原則等の日本の基本的な方針に従って行われる。

3 日米両国のすべての行為は、紛争の平和的解決及び主権平等を含む国際法の基本原則並びに国際連合憲章を始めとする関連する国際約束に合致するものである。

4 指針及びその下で行われる取組みは、いずれの政府にも、立法上、予算上又は行政上の措置をとることを義務づけるものではない。しかしながら、日米協力のための効果的な態勢の構築が指針及びその下で行われる取組みの目標であることから、日米両国政府が、各々の判断に従い、このような努力の結果を各々の具体的な政策や措置に適切な形で反映することが期待される。日本のすべての行為は、その時々において適用のある国内法令に従う。

III 平素から行う協力

 日米両国政府は、現在の日米安全保障体制を堅持し、また、各々所要の防衛態勢の維持に努める。日本は、「防衛計画の大綱」にのっとり、自衛のために必要な範囲内で防衛力を保持する。米国は、そのコミットメントを達成するため、核抑止力を保持するとともに、アジア太平洋地域における前方展開兵力を維持し、かつ、来援し得るその他の兵力を保持する。
 日米両国政府は、各々の政策を基礎としつつ、日本の防衛及びより安定した国際的な安全保障環境の構築のため、平素から密接な協力を維持する。
 日米両国政府は、平素から様々な分野での協力を充実する。この協力には、日米物品役務相互提供協定及び日米相互防衛援助協定並びにこれらの関連取決めに基づく相互支援活動が含まれる。

1 情報交換及び政策協議

 日米両国政府は、正確な情報及び的確な分析が安全保障の基礎であると認識し、アジア太平洋地域の情勢を中心として、双方が関心を有する国際情勢についての情報及び意見の交換を強化するとともに、防衛政策及び軍事態勢についての緊密な協議を継続する。
 このような情報交換及び政策協議は、日米安全保障協議委員会及び日米安全保障高級事務レベル協議(SSC)を含むあらゆる機会をとらえ、できる限り広範なレベル及び分野において行われる。

2 安全保障面での種々の協力

 安全保障面での地域的な及び地球的規模の諸活動を促進するための日米協力は、より安定した国際的な安全保障環境の構築に寄与する。
 日米両国政府は、この地域における安全保障対話・防衛交流及び国際的な軍備管理・軍縮の意義と重要性を認識し、これらの活動を促進するとともに、必要に応じて協力する。
 日米いずれかの政府又は両国政府が国際連合平和維持活動又は人道的な国際救援活動に参加する場合には、日米両国政府は、必要に応じて、相互支援のために密接に協力する。日米両国政府は、輸送、衛生、情報交換、教育訓練等の分野における協力の要領を準備する。
 大規模災害の発生を受け、日米いずれかの政府又は両国政府が関係政府又は国際機関の要請に応じて緊急援助活動を行う場合には、日米両国政府は、必要に応じて密接に協力する。

3 日米共同の取組み

 日米両国政府は、日本に対する武力攻撃に際しての共同作戦計画についての検討及び周辺事態に際しての相互協力計画についての検討を含む共同作業を行う。このような努力は、双方の関係機関の関与を得た包括的なメカニズムにおいて行われ、日米協力の基礎を構築する。
 日米両国政府は、このような共同作業を検証するとともに、自衛隊及び米軍を始めとする日米両国の公的機関及び民間の機関による円滑かつ効果的な対応を可能とするため、共同演習・訓練を強化する。また、日米両国政府は、緊急事態において関係機関の関与を得て運用される日米間の調整メカニズムを平素から構築しておく。

IV 日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等

 日本に対する武力攻撃に際しての共同対処行動等は、引き続き日米防衛協力の中核的要素である。
 日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合には、日米両国政府は、事態の拡大を抑制するための措置をとるとともに、日本の防衛のために必要な準備を行う。日本に対する武力攻撃がなされた場合には、日米両国政府は、適切に共同して対処し、極力早期にこれを排除する。

1 日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合

 日米両国政府は、情報交換及び政策協議を強化するとともに、日米間の調整メカニズムの運用を早期に開始する。日米両国政府は、適切に協力しつつ、合意によって選択された準備段階に従い、整合のとれた対応を確保するために必要な準備を行う。日本は、米軍の来援基盤を構築し、維持する。また、日米両国政府は、情勢の変化に応じ、情報収集及び警戒監視を強化するとともに、日本に対する武力攻撃に発展し得る行為に対応するための準備を行う。
 日米両国政府は、事態の拡大を抑制するため、外交上のものを含むあらゆる努力を払う。
 なお、日米両国政府は、周辺事態の推移によっては日本に対する武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合もあり得ることを念頭に置きつつ、日本の防衛のための準備と周辺事態への対応又はそのための準備との間の密接な相互関係に留意する。

2 日本に対する武力攻撃がなされた場合

(1)整合のとれた共同対処行動のための基本的な考え方

(イ)  日本は、日本に対する武力攻撃に即応して主体的に行動し、極力早期にこれを排除する。その際、米国は、日本に対して適切に協力する。このような日米協力の在り方は、武力攻撃の規模、態様、事態の推移その他の要素により異なるが、これには、整合のとれた共同の作戦の実施及びそのための準備、事態の拡大を抑制するための措置、警戒監視並びに情報交換についての協力が含まれ得る。

(ロ)  自衛隊及び米軍が作戦を共同して実施する場合には、双方は、整合性を確保しつつ、適時かつ適切な形で、各々の防衛力を運用する。その際、双方は、各々の陸・海・空部隊の効果的な統合運用を行う。自衛隊は、主として日本の領域及びその周辺海空域において防勢作戦を行い、米軍は、自衛隊の行う作戦を支援する。米軍は、また、自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。

(ハ)  米国は、兵力を適時に来援させ、日本は、これを促進するための基盤を構築し、維持する。

(2)作戦構想


(イ)  日本に対する航空侵攻に対処するための作戦
 自衛隊及び米軍は、日本に対する航空侵攻に対処するための作戦を共同して実施する。
 自衛隊は、防空のための作戦を主体的に実施する。
 米軍は、自衛隊の行う作戦を支援するとともに、打撃力の使用を伴うような作戦を含め、自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。

(ロ)  日本周辺海域の防衛及び海上交通の保護のための作戦
 自衛隊及び米軍は、日本周辺海域の防衛のための作戦及び海上交通の保護のための作戦を共同して実施する。
 自衛隊は、日本の重要な港湾及び海峡の防備、日本周辺海域における船舶の保護並びにその他の作戦を主体的に実施する。
 米軍は、自衛隊の行う作戦を支援するとともに、機動打撃力の使用を伴うような作戦を含め、自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。

(ハ)  日本に対する着上陸侵攻に対処するための作戦
 自衛隊及び米軍は、日本に対する着上陸侵攻に対処するための作戦を共同して実施する。
 自衛隊は、日本に対する着上陸侵攻を阻止し排除するための作戦を主体的に実施する。
 米軍は、主として自衛隊の能力を補完するための作戦を実施する。その際、米国は、侵攻の規模、態様その他の要素に応じ、極力早期に兵力を来援させ、自衛隊の行う作戦を支援する。

(ニ)  その他の脅威への対応
 自衛隊は、ゲリラ・コマンドウ攻撃等日本領域に軍事力を潜入させて行う不正規型の攻撃を極力早期に阻止し排除するための作戦を主体的に実施する。その際、関係機関と密接に協力し調整するとともに、事態に応じて米軍の適切な支援を得る。
 自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し調整する。米軍は、日本に対し必要な情報を提供するとともに、必要に応じ、打撃力を有する部隊の使用を考慮する。


(3)作戦に係る諸活動及びそれに必要な事項


(イ)  指揮及び調整
 自衛隊及び米軍は、緊密な協力の下、各々の指揮系統に従って行動する。自衛隊及び米軍は、効果的な作戦を共同して実施するため、役割分担の決定、作戦行動の整合性の確保等についての手続をあらかじめ定めておく。

(ロ)  日米間の調整メカニズム
 日米両国の関係機関の間における必要な調整は、日米間の調整メカニズムを通じて行われる。自衛隊及び米軍は、効果的な作戦を共同して実施するため、作戦、情報活動及び後方支援について、日米共同調整所の活用を含め、この調整メカニズムを通じて相互に緊密に調整する。

(ハ)  通信電子活動
 日米両国政府は、通信電子能力の効果的な活用を確保するため、相互に支援する。

(ニ)  情報活動
 日米両国政府は、効果的な作戦を共同して実施するため、情報活動について協力する。これには、情報の要求、収集、処理及び配布についての調整が含まれる。その際、日米両国政府は、共有した情報の保全に関し各々責任を負う。

(ホ)  後方支援活動
 自衛隊及び米軍は、日米間の適切な取決めに従い、効率的かつ適切に後方支援活動を実施する。
 日米両国政府は、後方支援の効率性を向上させ、かつ、各々の能力不足を軽減するよう、中央政府及び地方公共団体が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に活用しつつ、相互支援活動を実施する。その際、特に次の事項に配慮する。
補給
 米国は、米国製の装備品等の補給品の取得を支援し、日本は、日本国内における補給品の取得を支援する。
輸送
 日米両国政府は、米国から日本への補給品の航空輸送及び海上輸送を含む輸送活動について、緊密に協力する。
整備
 日本は、日本国内において米軍の装備品の整備を支援し、米国は、米国製の品目の整備であって日本の整備能力が及ばないものについて支援を行う。整備の支援には、必要に応じ、整備要員の技術指導を含む。また、日本は、サルベージ及び回収に関する米軍の需要についても支援を行う。
施設
 日本は、必要に応じ、日米安全保障条約及びその関連取極に従って新たな施設・区域を提供する。また、作戦を効果的かつ効率的に実施するために必要な場合には、自衛隊及び米軍は、同条約及びその関連取極に従って、自衛隊の施設及び米軍の施設・区域の共同使用を実施する。
衛生
 日米両国政府は、衛生の分野において、傷病者の治療及び後送等の相互支援を行う。


V 日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合(周辺事態)の協力

 周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態である。周辺事態の概念は、地理的なものではなく、事態の性質に着目したものである。日米両国政府は、周辺事態が発生することのないよう、外交上のものを含むあらゆる努力を払う。日米両国政府は、個々の事態の状況について共通の認識に到達した場合に、各々の行う活動を効果的に調整する。なお、周辺事態に対応する際にとられる措置は、情勢に応じて異なり得るものである。

1 周辺事態が予想される場合

 周辺事態が予想される場合には、日米両国政府は、その事態について共通の認識に到達するための努力を含め、情報交換及び政策協議を強化する。
 同時に、日米両国政府は、事態の拡大を抑制するため、外交上のものを含むあらゆる努力を払うとともに、日米共同調整所の活用を含め、日米間の調整メカニズムの運用を早期に開始する。また、日米両国政府は、適切に協力しつつ、合意によって選択された準備段階に従い、整合のとれた対応を確保するために必要な準備を行う。更に、日米両国政府は、情勢の変化に応じ、情報収集及び警戒監視を強化するとともに、情勢に対応するための即応態勢を強化する。

2 周辺事態への対応

 周辺事態への対応に際しては、日米両国政府は、事態の拡大の抑制のためのものを含む適切な措置をとる。これらの措置は、上記Uに掲げられた基本的な前提及び考え方に従い、かつ、各々の判断に基づいてとられる。日米両国政府は、適切な取決めに従って、必要に応じて相互支援を行う。
 協力の対象となる機能及び分野並びに協力項目例は、以下に整理し、下記の表に示すとおりである。

(1)日米両国政府が各々主体的に行う活動における協力

 日米両国政府は、以下の活動を各々の判断の下に実施することができるが、日米間の協力は、その実効性を高めることとなる。

(イ)  救援活動及び避難民への対応のための措置
 日米両国政府は、被災地の現地当局の同意と協力を得つつ、救援活動を行う。日米両国政府は、各々の能力を勘案しつつ、必要に応じて協力する。
 日米両国政府は、避難民の取扱いについて、必要に応じて協力する。避難民が日本の領域に流入してくる場合については、日本がその対応の在り方を決定するとともに、主として日本が責任を持ってこれに対応し、米国は適切な支援を行う。

(ロ)  捜索・救難
 日米両国政府は、捜索・救難活動について協力する。日本は、日本領域及び戦闘行動が行われている地域とは一線を画される日本の周囲の海域において捜索・救難活動を実施する。米国は、米軍が活動している際には、活動区域内及びその付近での捜索・救難活動を実施する。

(ハ)  非戦闘員を退避させるための活動
 日本国民又は米国国民である非戦闘員を第三国から安全な地域に退避させる必要が生じる場合には、日米両国政府は、自国の国民の退避及び現地当局との関係について各々責任を有する。日米両国政府は、各々が適切であると判断する場合には、各々の有する能力を相互補完的に使用しつつ、輸送手段の確保、輸送及び施設の使用に係るものを含め、これらの非戦闘員の退避に関して、計画に際して調整し、また、実施に際して協力する。日本国民又は米国国民以外の非戦闘員について同様の必要が生じる場合には、日米両国が、各々の基準に従って、第三国の国民に対して退避に係る援助を行うことを検討することもある。

(ニ)  国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の実効性を確保するための活動
 日米両国政府は、国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の実効性を確保するための活動に対し、各々の基準に従って寄与する。
 また、日米両国政府は、各々の能力を勘案しつつ、適切に協力する。そのような協力には、情報交換、及び国際連合安全保障理事会決議に基づく船舶の検査に際しての協力が含まれる。

(2)米軍の活動に対する日本の支援

(イ)  施設の使用
 日米安全保障条約及びその関連取極に基づき、日本は、必要に応じ、新たな施設・区域の提供を適時かつ適切に行うとともに、米軍による自衛隊施設及び民間空港・港湾の一時的使用を確保する。

(ロ)  後方地域支援
 日本は、日米安全保障条約の目的の達成のため活動する米軍に対して、後方地域支援を行う。この後方地域支援は、米軍が施設の使用及び種々の活動を効果的に行うことを可能とすることを主眼とするものである。そのような性質から、後方地域支援は、主として日本の領域において行われるが、戦闘行動が行われている地域とは一線を画される日本の周囲の公海及びその上空において行われることもあると考えられる。
 後方地域支援を行うに当たって、日本は、中央政府及び地方公共団体が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に活用する。自衛隊は、日本の防衛及び公共の秩序維持のための任務の遂行と整合を図りつつ、適切にこのような支援を行う。

(3)運用面における日米協力

 周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与えることから、自衛隊は、生命・財産の保護及び航行の安全確保を目的として、情報収集、警戒監視、機雷の除去等の活動を行う。米軍は、周辺事態により影響を受けた平和と安全の回復のための活動を行う。
 自衛隊及び米軍の双方の活動の実効性は、関係機関の関与を得た協力及び調整により、大きく高められる。

VI 指針の下で行われる効果的な防衛協力のための日米共同の取組み

 指針の下での日米防衛協力を効果的に進めるためには、平素、日本に対する武力攻撃及び周辺事態という安全保障上の種々の状況を通じ、日米両国が協議を行うことが必要である。日米防衛協力が確実に成果を挙げていくためには、双方が様々なレベルにおいて十分な情報の提供を受けつつ、調整を行うことが不可欠である。このため、日米両国政府は、日米安全保障協議委員会及び日米安全保障高級事務レベル協議を含むあらゆる機会をとらえて情報交換及び政策協議を充実させていくほか、協議の促進、政策調整及び作戦・活動分野の調整のための以下の2つのメカニズムを構築する。
 第一に、日米両国政府は、計画についての検討を行うとともに共通の基準及び実施要領等を確立するため、包括的なメカニズムを構築する。これには、自衛隊及び米軍のみならず、各々の政府のその他の関係機関が関与する。
 日米両国政府は、この包括的なメカニズムの在り方を必要に応じて改善する。日米安全保障協議委員会は、このメカニズムの行う作業に関する政策的な方向性を示す上で引き続き重要な役割を有する。日米安全保障協議委員会は、方針を提示し、作業の進捗を確認し、必要に応じて指示を発出する責任を有する。防衛協力小委員会は、共同作業において、日米安全保障協議委員会を補佐する。
 第二に、日米両国政府は、緊急事態において各々の活動に関する調整を行うため、両国の関係機関を含む日米間の調整メカニズムを平素から構築しておく。

1 計画についての検討並びに共通の基準及び実施要領等の確立のための共同作業

 双方の関係機関の関与を得て構築される包括的なメカニズムにおいては、以下に掲げる共同作業を計画的かつ効率的に進める。これらの作業の進捗及び結果は、節目節目に日米安全保障協議委員会及び防衛協力小委員会に対して報告される。

(1)共同作戦計画についての検討及び相互協力計画についての検討

 自衛隊及び米軍は、日本に対する武力攻撃に際して整合のとれた行動を円滑かつ効果的に実施し得るよう、平素から共同作戦計画についての検討を行う。また、日米両国政府は、周辺事態に円滑かつ効果的に対応し得るよう、平素から相互協力計画についての検討を行う。
 共同作戦計画についての検討及び相互協力計画についての検討は、その結果が日米両国政府の各々の計画に適切に反映されることが期待されるという前提の下で、種々の状況を想定しつつ行われる。日米両国政府は、実際の状況に照らして、日米両国各々の計画を調整する。日米両国政府は、共同作戦計画についての検討と相互協力計画についての検討との間の整合を図るよう留意することにより、周辺事態が日本に対する武力攻撃に波及する可能性のある場合又は両者が同時に生起する場合に適切に対応し得るようにする。

(2)準備のための共通の基準の確立

 日米両国政府は、日本の防衛のための準備に関し、共通の基準を平素から確立する。この基準は、各々の準備段階における情報活動、部隊の活動、移動、後方支援その他の事項を明らかにするものである。日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合には、日米両国政府の合意により共通の準備段階が選択され、これが、自衛隊、米軍その他の関係機関による日本の防衛のための準備のレベルに反映される。
 同様に、日米両国政府は、周辺事態における協力措置の準備に関しても、合意により共通の準備段階を選択し得るよう、共通の基準を確立する。

(3)共通の実施要領等の確立

 日米両国政府は、自衛隊及び米軍が日本の防衛のための整合のとれた作戦を円滑かつ効果的に実施できるよう、共通の実施要領等をあらかじめ準備しておく。これには、通信、目標位置の伝達、情報活動及び後方支援並びに相撃防止のための要領とともに、各々の部隊の活動を適切に律するための基準が含まれる。また、自衛隊及び米軍は、通信電子活動等に関する相互運用性の重要性を考慮し、相互に必要な事項をあらかじめ定めておく。

2 日米間の調整メカニズム

 日米両国政府は、日米両国の関係機関の関与を得て、日米間の調整メカニズムを平素から構築し、日本に対する武力攻撃及び周辺事態に際して各々が行う活動の間の調整を行う。
 調整の要領は、調整すべき事項及び関与する関係機関に応じて異なる。調整の要領には、調整会議の開催、連絡員の相互派遣及び連絡窓口の指定が含まれる。自衛隊及び米軍は、この調整メカニズムの一環として、双方の活動について調整するため、必要なハードウェア及びソフトウェアを備えた日米共同調整所を平素から準備しておく。

VII 指針の適時かつ適切な見直し

 日米安全保障関係に関連する諸情勢に変化が生じ、その時の状況に照らして必要と判断される場合には、日米両国政府は、適時かつ適切な形でこの指針を見直す。



共同発表: 日米安全保障協議委員会
     2005年2月19日    於 ワシントン


 2005年2月19日、ワシントンにおいて、日米安全保障協議委員会(SCC)が開催され、ライス国務長官及びラムズフェルド国防長官は、町村外務大臣及び大野防衛庁長官を同委員会の場で迎えた。閣僚は、日米両国が直面している安全保障上の問題及び日米同盟に係る問題並びに両国関係に関するその他の問題について協議を行った。

今日の世界が直面する課題に対する共同の取組


 閣僚は、日米両国間の協力関係が、安全保障、政治、経済といった幅広い分野で極めて良好であることに留意した。閣僚は、日米安全保障体制を中核とする日米同盟関係が日米両国の安全と繁栄を確保し、また、地域及び世界の平和と安定を高める上で死活的に重要な役割を果たし続けることを認識し、この協力関係を拡大することを確認した。


 閣僚は、既に成果を生み出している、アフガニスタン、イラク及び中東全体に対する国際的支援の供与における日米両国のリーダーシップの重要性を強調した。閣僚は、インド洋における地震及びそれに続く津波災害の被害者に対する幅広い支援を行うに当たり、日米間の協力が他の国の参加を得て成功裡に行われていることを賞賛した。


 閣僚は、不拡散、特に拡散に対する安全保障構想(PSI)を推進する上で、日米両国間の協力と協議が中枢的な重要性を有してきたことを認識した。閣僚は、日本、米国及び他の国が主催した多数国間の阻止訓練が成功裡に行われたことを歓迎した。


 閣僚は、弾道ミサイル防衛(BMD)が弾道ミサイル攻撃に対する日米の防衛と抑止の能力を向上させるとともに、他者による弾道ミサイルへの投資を抑制することについての確信を表明した。閣僚は、日本による弾道ミサイル防衛システムの導入決定や武器輸出三原則等に関する最近の立場表明といったミサイル防衛協力における成果に留意しつつ、政策面及び運用面での緊密な協力や、弾道ミサイル防衛に係る日米共同技術研究を共同開発の可能性を視野に入れて前進させるとのコミットメントを再確認した。

共通の戦略目標


 閣僚は、国際テロや大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散といった新たに発生している脅威が共通の課題として浮かび上がってきた新たな安全保障環境について討議した。閣僚は、グローバル化した世界において諸国間の相互依存が深まっていることは、このような脅威が日本及び米国を含む世界中の国々の安全に影響を及ぼし得ることを認識した。


 閣僚は、アジア太平洋地域においてもこのような脅威が発生しつつあることに留意し、依然として存在する課題が引き続き不透明性や不確実性を生み出していることを強調した。さらに、閣僚は、地域における軍事力の近代化にも注意を払う必要があることに留意した。


 閣僚は、北朝鮮が六者会合に速やかにかつ無条件で復帰するとともに、検証の下、透明性のある形でのすべての核計画の完全な廃棄に応じるよう強く要求した。


 国際的な安全保障環境に関するこのような理解に基づき、閣僚は、両政府が各々の努力、日米安保体制の実施及び同盟関係を基調とする協力を通じて共通の戦略目標を追求するために緊密に協力する必要があることで一致した。双方は、これらの共通の戦略目標に沿って政策を調整するため、また、安全保障環境に応じてこれらの目標を見直すため、定期的に協議することを決定した。


地域における共通の戦略目標には、以下が含まれる。
 日本の安全を確保し、アジア太平洋地域における平和と安定を強化するとともに、日米両国に影響を与える事態に対処するための能力を維持する。
 朝鮮半島の平和的な統一を支持する。
 核計画、弾道ミサイルに係る活動、不法活動、北朝鮮による日本人拉致といった人道問題を含む、北朝鮮に関連する諸懸案の平和的解決を追求する。
 中国が地域及び世界において責任ある建設的な役割を果たすことを歓迎し、中国との協力関係を発展させる 。
 台湾海峡を巡る問題の対話を通じた平和的解決を促す。
 中国が軍事分野における透明性を高めるよう促す。
 アジア太平洋地域におけるロシアの建設的な関与を促す。
 北方領土問題の解決を通じて日露関係を完全に正常化する。
 平和で、安定し、活力のある東南アジアを支援する。
 地域メカニズムの開放性、包含性及び透明性の重要さを強調しつつ、様々な形態の地域協力の発展を歓迎する。
 不安定を招くような武器及び軍事技術の売却及び移転をしないように促す。
 海上交通の安全を維持する。



世界における共通の戦略目標には、以下が含まれる。
 国際社会における基本的人権、民主主義、法の支配といった基本的な価値を推進する。
 世界的な平和、安定及び繁栄を推進するために、国際平和協力活動や開発支援における日米のパートナーシップを更に強化する。
 NPT、IAEAその他のレジーム及びPSI等のイニシアティブの信頼性及び実効性を向上させること等を通じて、大量破壊兵器及びその運搬手段の削減と不拡散を推進する。
 テロを防止し、根絶する。
 現在の機運を最大限に活用して日本の常任理事国入りへの希望を実現することにより、国連安全保障理事会の実効性を向上させるための努力を連携させる。
 世界のエネルギー供給の安定性を維持・向上させる。


日米の安全保障及び防衛協力の強化


 閣僚は、日米双方の安全保障及び防衛政策の発展のための努力に対し、支持と評価を表明した。日本の新たな防衛計画の大綱は、新たな脅威や多様な事態に実効的に対応する能力、国際的な安全保障環境を改善するための積極的な取組及び日米同盟関係の重要性を強調している。米国は、幅広い国防の変革努力の中心的な要素の一つとして、不確実な安全保障環境において適切かつ戦略的な能力を保持し得るように世界的な軍事態勢の見直し及び強化を進めている。閣僚は、日米両国が共通の戦略目標を追求する上で、これらの努力が実効的な安全保障及び防衛協力を確保し、強化するものであることを確認した。


 この文脈で、閣僚は、自衛隊及び米軍が多様な課題に対して十分に調整しつつ実効的に対処するための役割、任務、能力について、検討を継続する必要性を強調した。この検討は、日本の新たな防衛計画の大綱や有事法制、及び改正ACSAや弾道ミサイル防衛における協力の進展といった最近の成果と発展を考慮して行われる。閣僚は、また、自衛隊と米軍との間の相互運用性を向上させることの重要性を強調した。


 閣僚は、この検討が在日米軍の兵力構成見直しに関する協議に資するべきものであるとの点で一致した。閣僚は、日本の安全の基盤及び地域の安定の礎石としての日米同盟を強化するために行われる包括的な努力の一環として、在日米軍の兵力構成見直しに関する協議を強化することを決定した。この文脈で、双方は、沖縄を含む地元の負担を軽減しつつ在日米軍の抑止力を維持するとのコミットメントを確認した。閣僚は、事務当局に対して、これらの協議の結果について速やかに報告するよう指示した。


 閣僚は、また、地域社会と米軍との間の良好な関係を推進するための継続的な努力の重要性を強調した。閣僚は、環境への適切な配慮を含む日米地位協定の運用改善や沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告の着実な実施が、在日米軍の安定的なプレゼンスにとって重要であることを強調した。


 閣僚は、現行の特別措置協定が2006年3月に終了することに留意しつつ、特別措置協定が在日米軍のプレゼンスを支援する上で果たす重要な役割にかんがみて、接受国支援を適切な水準で提供するための今後の措置について協議を開始することを決定した。



日米安全保障協議委員会(「2+2」)の開催
       平成17年10月29日   外務省・防衛庁

 10月29日に米国国防省内において開催された標記会合の概要以下のとおり。

【米側出席者】
 ラムズフェルド国防長官、ライス国務長官、シーファー在京米国大使、ローレス国防副次官、ライト在日米軍司令官他
【日本側出席者】
 町村外務大臣、大野防衛庁長官、加藤駐米大使他

1.日米同盟:未来のための変革と再編(成果文書の骨子:別添)
(1)役割・任務・能力

(イ)ラムズフェルド国防長官より、今回発表した文書は日米同盟の基礎になる文書であり、今後は具体案の策定に向けて協議を深化していくことが必要であり、不断の努力が必要である旨発言。また、日本のさまざまな国際平和協力活動における貢献について高く評価。個別分野としては、相互運用性の向上、計画検討作業、輸送協力、情報共有、自衛隊と米軍の共同訓練機会の増大(グアム、ハワイ、アラスカ、米本土等)、BMD、第三国に対するキャパシティ・ビルディングへの日米協力の推進の重要性を指摘。

(ロ)大野防衛庁長官より、新防衛大綱において防衛力の役割とされている国際的な安全保障環境の改善につき、世界の平和は日本の平和であり、こうした取組について、米国とともに取り組んでいくと述べるとともに、そうした点に新しい日米同盟の姿があり、こうした点について、役割・任務・能力に関する検討で確認できたことに大きな意義がある旨発言。これに加え、個別の協力分野として、BMD、情報共有、共同対処、共同訓練、さらには基地の共同使用の問題に取り組んで行きたい旨発言。

(ハ)町村外務大臣より、日米間のグローバルな協調の基盤には日米安保体制に基づく信頼関係があり、引き続き日米安保体制の強化を図っていくことが重要である旨述べた。

(2)沖縄

(イ)ラムズフェルド国防長官より、今回の合意は全体として一つのパッケージとなり、地元の負担の軽減とともに能力の向上につながるものである、普天間飛行場の果たす機能は日本の防衛、地域の平和と安全に不可欠であり、今回合意された計画の確実な実施が重要であるとの発言があった。

(ロ)大野防衛庁長官より、沖縄の海兵隊7千人の削減を評価したい、普天間飛行場の移設は実現可能性が重要であり、地元の理解と協力を得ることができるよう最善の努力をしたい旨述べた。また、沖縄の海兵隊司令部のグアム移駐については、資金面での協力の道が開けるよう前向きに取り組んでいきたいと述べた。

 また町村外務大臣より、普天間飛行場の移設、海兵隊の削減はパッケージの中核であり、大きな意義を有している、また嘉手納飛行場の騒音負担の軽減の観点から航空機の訓練を自衛隊基地やグアムに分散する可能性を追求してもらいたいと述べた。

(3)その他の再編案件

 在日米軍の再編の関係で、今後解決していかなければならない問題として、両大臣より、特に、横田空域及び軍民共用化、相模総合補給廠の扱い、KC-130の移駐先、使用頻度の低い施設・区域の整理・統合、を提起。

2.HNS(在日米軍駐留経費負担)
 ラムズフェルド国防長官より、日米安保体制におけるHNSの重要性を指摘するとともに、協議の加速化への期待が表明され、町村外務大臣も同意。

3.空母キティ・ホークの後継鑑
(1)ラムズフェルド国防長官より、地元の要請も真剣に受け止めた上で検討したが、日米安保条約上の責任を果たす能力を確保する観点から、2008年にニミッツ級空母をキティ・ホークの後継鑑とすることを決定した旨説明しつつ、米国政府としては、安全性に関するコミットメントは全て堅持する、又、地元との良好な関係の維持・発展に努力していく考えであると述べた。

(2)町村外務大臣より、今般の交替を通じ、米海軍の強固なプレゼンスが維持されることは、我が国及び極東の平和と安全の維持に資するものと考える、この目的のための米第7艦隊の役割を評価する、引き続き地元の理解を得るための努力を行っていきたいと述べた。

4.国際情勢
(1)イラク

 ライス国務長官より、日本の人道復興支援活動への評価を表明するとともに、引き続き情勢が不安定であるが、新体制への支援を続けていくことが重要であると述べた。

(2)アフガニスタン

 ライス国務長官より、テロ特措法に基づく給油支援活動に謝意が表された。大野防衛庁長官より、インド洋のテロ特措法に基づく支援活動の延長につき説明するとともに、米側からの情報提供を依頼した。

(3)イラン

 ライス国務長官より、核開発、テロ支援、国内政治が反動化していることへの懸念が表明された。

(4)中国

 町村外務大臣より、中国が国際社会において責任ある立場を果たしていくことを歓迎するとともに、日中関係に困難な面があるのは事実であるが、未来志向で発展させていくための努力を続けると述べた。

 大野防衛庁長官からの質問に答える形で、ラムズフェルド防衛庁長官より、訪中に関して、第二砲兵部隊を視察した際の状況等につき説明があった。

(5)北朝鮮

 町村外務大臣より、六者協議の共同声明の実現による核廃絶に向けた努力が重要である、日本にとってはミサイル開発、拉致問題も重要であり、米側の理解を得たいと述べた。ライス国務長官より、中国の重要な役割に今後も期待する旨述べた。

(6)パキスタン

 町村外務大臣より、パキスタンの地震への支援活動を紹介。ライス国務長官より、パキスタンの安定はこの地域にとって重要との発言があった。



日米同盟:未来のための変革と再編
(骨子)
I. 概観
 日米同盟は、日本の安全とアジア太平洋地域の平和と安定のために不可欠な基礎。同盟に基づいた緊密かつ協力的な関係は、世界における課題に対処する上で重要な役割を果たす。

 閣僚は、役割・任務・能力に関する検討内容及び勧告、並びに再編に関する勧告を承認。これらは、新たな脅威や多様な事態に対応するための同盟の能力を向上させ、地元の負担を軽減し、もって安全保障を強化。

II. 役割・任務・能力
 テロとの闘い、拡散に対する安全保障構想(PSI)、イラクへの支援、インド洋における津波等の災害支援をはじめとする国際的活動における二国間協力
防衛計画の大綱、弾道ミサイル防衛(BMD)における協力進展、日本の有事法制、自衛隊の統合運用体制への移行計画、米軍の変革と世界的な態勢の見直し

1.重点分野
 以下の二つの分野に重点を置いて、今日の安全保障環境における多様な課題に対応するための二国間、特に自衛隊と米軍の間の役割・任務・能力を検討した。

 日本の防衛及び周辺事態への対応(新たな脅威や多様な事態への対応を含む)
 国際的な安全保障環境の改善のための取組

2.役割・任務・能力の基本的考え方
 日本の防衛及び周辺事態への対応
 二国間の防衛協力は、日本の安全と地域の平和と安定にとって死活的に重要。
 日本は、弾道ミサイル攻撃やゲリラ・特殊部隊による攻撃、島嶼部への侵略といった、新たな脅威や多様な事態への対処を含めて、日本を防衛し、周辺事態に対応する。このため、防衛計画の大綱に従って防衛態勢を強化。
 米国は、日本の防衛及び周辺事態の抑止・対応のために、前方展開兵力を維持し、必要に応じて増強。日本の防衛のために必要なあらゆる支援を提供。
 周辺事態が日本に対する武力攻撃に波及する可能性のある場合、又は、両者が同時に生起する場合に適切に対応し得るよう、日本防衛及び周辺事態への対応に際して日米の活動は整合を図る。
 日本は施設・区域提供を含む接受国支援を引き続き提供。有事法制に基づく支援を含め、米軍の活動に対して、事態の進展に応じて切れ目のない支援を提供するための適切な措置。日米は、在日米軍のプレゼンス及び活動に対する安定的支持確保のため地元と協力。
 米国の打撃力及び核抑止力は、日本の防衛を確保する上で日本の防衛力を補完する不可欠のものであり、地域の平和と安全に寄与。

国際的な安全保障環境の改善のための取組
 国際的な安全保障環境を改善する上での二国間協力は同盟の重要な要素。それぞれの能力に基づいて適切な貢献を行い、実効的な態勢確立のために必要な措置をとる。
 迅速かつ実効的な対応のためには柔軟な能力が必要。緊密な日米間の協力及び政策調整が有益。定期的な演習によりこのような能力を向上可能。
 国際的な活動に寄与するため他国との協力を強化。
 新たな脅威や多様な事態に対処し、国際的な安全保障環境を改善することの重要性が増していることにより、防衛能力を向上し、技術革新の成果を最大限に活用。

3.二国間の安全保障・防衛協力において向上すべき活動の例
 あらゆる側面での二国間協力を、関連の安全保障政策及び法律並びに日米間の取極に従って強化。役割・任務・能力の検討を通じ、いくつかの個別分野において協力を向上させることの重要性を強調。

 防空
 弾道ミサイル防衛(BMD)
 拡散に対する安全保障構想(PSI)のような拡散阻止活動
 テロ対策
 海上交通安全維持のための機雷掃海、海上阻止活動その他の活動
 捜索・救難活動
 無人機(UAV)や哨戒機によるものを含む、情報・監視・偵察(ISR)活動
 人道救援活動
 復興支援活動
 平和維持活動及び他国の能力構築
 在日米軍施設・区域等の警護
 大量破壊兵器(WMD)の破棄・除染を含む、大量破壊兵器による攻撃への対応
 相互の後方支援活動(補給〈空中・海上給油を含む〉、整備、輸送〈航空輸送、高速輸送艦(HSV)によるものを含む海上輸送〉等)
 非戦闘員退避活動(NEO)(輸送、施設使用、医療支援等)
 港湾・空港、道路、水域・空域及び周波数帯の使用

4.二国間の安全保障・防衛協力の態勢を強化するための不可欠な措置
 新たな安全保障環境において多様な課題に対応するため、二国間の安全保障及び防衛協力態勢を強化する目的で平時からとり得る措置を特定。また、これまでの進捗に基づき、役割・任務・能力の検討継続を強調。

 緊密かつ継続的な政策及び運用面の調整
 部隊戦術レベルから戦略的な協議まで、政府のあらゆるレベルで緊密かつ継続的な政策及び運用面の調整。
 防衛当局と他の関係当局の間のより緊密な協力がますます必要であり、1997年の日米防衛協力のための指針の下での包括的メカニズムと調整メカニズムの実効性を向上。

計画検討作業の進展
 共同作戦計画及び相互協力計画についての検討作業を継続する必要性を確認。
 日本の有事法制を反映。
 具体性の追加、関係当局及び地方当局との緊密な調整、一般及び自衛隊の飛行場及び港湾の詳細な調査等を通じ検討作業を拡大。

情報共有及び情報協力の向上
 部隊戦術レベルから国家戦略レベルに至るまで情報共有及び情報協力を向上。
 共有された秘密情報を保護するために必要な追加的措置。

相互運用性の向上
 自衛隊及び米軍は相互運用性の維持・強化のために定期的協議。
 共同の運用のための計画検討作業における継続的な協力は、自衛隊と米軍の司令部間の連接性を強化。

日本及び米国における訓練機会の拡大
 相互運用性・能力・即応性の向上、地元間での訓練の影響のより公平な分散等のため、共同訓練及び演習の機会を拡大。
 訓練施設・区域の相互使用の増大。自衛隊の米国(グアム等)における訓練の拡大。グアムにおける自衛隊の訓練機会増大。多国間の訓練及び演習への参加。

自衛隊及び米軍による施設の共同使用
 施設の共同使用は、より緊密な連携や相互運用性の向上に寄与。

弾道ミサイル防衛(BMD)
 BMDは抑止及び防御に決定的に重要。弾道ミサイルの開発・拡散を抑制。
 BMD能力の向上に関し緊密に連携。
 不断の情報収集及び共有、高い即応性及び相互運用性の維持。
 それぞれの指揮統制システム間の緊密な連携は、実効的なBMD運用に決定的に重要。
 1997年の日米防衛協力のための指針の下の、また、適切な場合には、現在指針に取り上げられていない追加的な分野における二国間協力の実効性を強化・改善。

III. 兵力態勢の再編
 沖縄を含む地元の負担を軽減しつつ抑止力を維持するとの観点から、在日米軍及び関連する自衛隊の態勢について検討。日米の国民の同盟への支持は米軍の持続的なプレゼンスに寄与。

1.指針となる考え方
 役割、任務、能力の検討を十分に念頭に置き、いくつかの考え方を設定。

 米軍のプレゼンスは、地域の平和と安全にとって不可欠。日本は、自らの防衛に主導的な役割。
 再編及び役割・任務・能力の調整を通じて能力を強化。
 司令部間の連携向上や相互運用性の向上が重要。
 定期的な訓練及び演習やそのための施設・区域は不可欠。軍事上の任務等と整合的な場合には、訓練を分散。訓練機会の多様化と地元の負担軽減。
 自衛隊及び米軍施設・区域の軍事上の共同使用。
 米軍施設・区域の日常的な水準以上の収容能力は、緊急時の所要を満たす上で重要。災害救援や被害対処など、緊急時における地元の必要性を満たす上で不可欠。
 在日米軍施設・区域が人口密集地域に集中している場所の再編に特別の注意。
 米軍施設・区域の軍民共同使用について適切な場合に検討。

2.再編に関する勧告
 日米安保条約及び関連取極を遵守しつつ、以下の具体案について国内及び二国間の調整が速やかに行われる。閣僚は、地元との調整を完了させることを確約し、2006年3月までに、具体案を最終的に取りまとめ、具体的な実施日程を伴う計画を作成するよう指示。これらの具体案は統一的なパッケージの要素であり、全体についての合意を受けて実施。双方は、これらの具体案の迅速な実施に必要な措置をとる。

共同統合運用調整の強化
 在日米軍司令部は、横田飛行場に共同統合運用調整所を設置。この調整所の共同使用により、自衛隊と米軍の間の連接性、調整及び相互運用性を確保。

米陸軍司令部能力の改善
 キャンプ座間の在日米陸軍司令部は、展開可能で統合任務が可能な作戦司令部組織に近代化。日本防衛や他の事態において迅速に対応するための追加的能力。
 陸自中央即応集団司令部をキャンプ座間に設置することを追求。司令部間の連携強化。
 キャンプ座間及び相模総合補給廠のより効果的かつ効率的な使用の可能性を探求。

航空司令部の併置
 府中の空自航空総隊司令部は横田飛行場において米第5空軍司令部と併置。防空及びミサイル防衛の司令部組織間の連携強化と情報共有。

横田飛行場及び空域
 横田空域における民間航空機の航行を円滑化するための措置を探求。
 米軍が管制を行っている空域の削減及び横田飛行場への日本の管制官の併置を検討。
 嘉手納におけるレーダー進入管制の移管プロセスの進捗を考慮。
 運用上の能力を損なってはならないことに留意しつつ、あり得べき軍民共同使用の具体的な条件や態様について検討。

ミサイル防衛
 米国の新たなXバンド・レーダー・システムの日本における最適な展開地を検討。
 適時の情報共有を通じて、このレーダーは日本に向かうミサイルの迎撃能力及び日本の国民保護等の能力を支援。
 米国は、適切な場合に、パトリオットPAC-3及びスタンダード・ミサイル(SM-3)等を展開。

柔軟な危機対応のための地域における米海兵隊の再編
 米国は、太平洋における兵力構成強化のための変更を実施。
 海兵隊の緊急事態への対応能力の強化、それらの能力のハワイ・グアム・沖縄への再分配。
 双方は、沖縄の負担を大幅に軽減することにもなる相互に関連する総合的な措置を特定。

−普天間飛行場移設の加速
 沖縄住民が普天間飛行場の早期返還及び代替施設の県外設置を要望していることと抑止力の維持を両立する選択肢を検討。
 決定的に重要な海兵隊の能力維持には、構成組織(航空・陸・後方支援・司令部)が訓練等において連携し合うことが必要。そのため、代替施設は、他の組織の近くに回転翼機が位置するよう、沖縄県内に設置しなければならない。
 SACOによる計画に関連した多くの問題のために普天間飛行場移設が大幅に遅延。安全、騒音、環境、平時及び緊急時の能力、運用上の支援施設・宿泊等の観点から、県内移設の数多くの選択肢を検討。
−このような要素に留意しつつ、キャンプ・シュワブの海岸線の区域とこれに近接する大浦湾の水域を結ぶL字型に普天間飛行場代替施設を設置。滑走路は、大浦湾からキャンプ・シュワブの南側海岸線に沿った水域へと辺野古崎を横切る。滑走路とオーバーランの合計の長さは1800メートル。キャンプ・シュワブ内の施設は、必要に応じて、再編成。

−普天間飛行場に現在ある他の能力については、以下の調整を行った上で、SACO最終報告に定めるとおり移設及び維持。

 SACO最終報告で普天間飛行場から岩国飛行場に移駐予定のKC−130は、他の移駐先について海自鹿屋基地を優先して検討。最終的な配置のあり方については、現在行われている運用上及び技術上の検討に基づいて、双方が決定。
 緊急時における空自新田原基地及び築城基地の米軍による使用強化。
 代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のため、緊急時における米軍による民間施設の使用を改善。

−兵力削減
 第3海兵機動展開部隊((3)MEF)司令部はグアム及び他の場所に移転。これは約7000名の海兵隊将校及び兵員、並びにその家族の沖縄外への移転を伴う。
日本政府は、このような兵力の移転が早期に実現されることへの沖縄住民の強い希望を認識しつつ、米国政府と協力して、これらのグアムへの移転を実現可能とするための適切な資金的その他の措置を見出すための検討を行う。
−土地の返還及び施設の共同使用

沖縄に残る海兵隊部隊を統合する構想を議論。これにより、嘉手納飛行場以南の人口が集中している地域における相当規模の土地の返還が可能。
 米国は、嘉手納飛行場、キャンプ・ハンセン等の共同使用を実施する意思を強調。
−SACO最終報告の着実な実施

この文書によって変更されない限り、SACO最終報告を着実に実施。

空母艦載機の厚木飛行場から岩国飛行場への移駐
 空母艦載ジェット機等を、厚木飛行場から、滑走路移設事業完了後に岩国飛行場に移駐。
 岩国飛行場における運用の増大による影響を緩和するため、以下の関連措置を実施。

海自航空機の岩国飛行場から厚木飛行場への移駐。
 米海軍及び米海兵隊の航空機による訓練空域の調整。
 空母艦載機離発着訓練のための恒常的な訓練施設の特定。それまでの間、米国は引き続き硫黄島で離発着訓練を実施。
 KC−130を受け入れるために、海自鹿屋基地において必要な施設の整備。
 岩国飛行場に配置される米海軍及び海兵隊の部隊、並びに民間航空の活動の支援に必要な追加的施設等の整備。

訓練移設
 相互運用性を向上させ、訓練活動の影響を軽減するとの目的を念頭に、嘉手納飛行場を始めとする米軍航空施設から他の軍用施設への訓練の分散を拡大。

在日米軍施設の収容能力の効率的使用
 在日米軍施設の収容能力の効率的使用に関連して、米国と日本政府・地元との協力を強化する機会を追求。例えば、災害救援や被害対処など、緊急時における地元の要請を満たすため、相模総合補給廠の収容能力を活用する可能性を探求。
 この報告で取り扱われなかった米軍施設・区域や兵力構成の将来の変更は、日米安保条約及びその関連取極の下での現在の慣行に従って取り扱われる。



キティホークの後継に原子力型航空母艦
J・トーマス・シーファー駐日米国大使の声明

2005年10月28日午前11時

 私は昨日の夕方、日本政府に対し、米国海軍が通常型航空母艦のキティホークをニミッツ級の原子力型航空母艦に置き換えると正式に伝えました。米国政府は、原子力型航空母艦が西太平洋に前方展開されることにより、日本国、ならびにアメリカ合衆国、そして地域全体の平和と安定に大きく貢献するものと考えています。

 我々は、この決定に至るにあたり、日本の方々が原子力型艦船に対し持っておられる微妙な感情を考慮に入れました。そして関係する全ての方々に対し、この空母が日本の海において安全に運用されることを保証します。過去40年間、アメリカの原子力型艦船は日本に寄港してきました。1200回以上にも及ぶ日本への寄港、そして世界各地でも何千回も寄港してきましたが、一度として放射性物質の流失による環境への悪影響を与えるようなことは起こっていません。我々はこのような安全の実績に誇りを持っており、これが継続されるようあらゆる努力をしていくことを約束します。

 空母キティホークは、これまで日米両国の国益のため、立派にその役割を果たしてきましたが、キティホークは我が米国艦隊が保有する最も古い艦船です。退役を迎える2008年には、実に47年間も役務に就いてきたことになります。より近代的な空母を日本に持ってきても良い時期でしょう。米国海軍作戦部長のマレン大将とこの件について話をした際、大将は今後の方向性として、米国海軍が全て原子力型航空母艦体制に移行することが確実であろうと言いました。

 最後になりますが、米国政府は、沢田前横須賀市長、ならびに蒲谷現横須賀市長から申し出のあった、キティホークの後継艦を引き続き通常型空母にしてほしいという要請を大変真剣に考慮しました。結果的に、両氏のご要望に沿うことは出来ませんでしたが、両氏、そして横須賀市民のご理解をお願いしたいと思います。

 米国政府は、横須賀市民の長年にわたる米国海軍への友情を光栄に思い、これに対し深く感謝しています。今後もこの友情関係をより一層深め、強固なものにしていくため、米国政府として、出来る限りのことをしていきます。

 私は、在日米海軍司令官のジェームズ・ケリー少将に、今回のキティホークに関する決定事項についてブリーフィングを行うようお願いしました。ケリー少将の説明の後に、皆様からの質問をお受けしたいと思います。


共同発表
日米安全保障協議委員会


2010年5月28日

岡田外務大臣
北澤防衛大臣
クリントン国務長官
ゲイツ国防長官

 2010年5月28日,日米安全保障協議委員会(SCC)の構成員たる閣僚は,日米安全保障条約の署名50周年に当たる本年,日米同盟が日本の防衛のみならず,アジア太平洋地域の平和,安全及び繁栄にとっても引き続き不可欠であることを再確認した。北東アジアにおける安全保障情勢の最近の展開により,日米同盟の意義が再確認された。この点に関し,米国は,日本の安全に対する米国の揺るぎない決意を再確認した。日本は,地域の平和及び安定に寄与する上で積極的な役割を果たすとの決意を再確認した。さらに,SCCの構成員たる閣僚は,沖縄を含む日本における米軍の堅固な前方のプレゼンスが,日本を防衛し,地域の安定を維持するために必要な抑止力と能力を提供することを認識した。SCCの構成員たる閣僚は,日米同盟を21世紀の新たな課題にふさわしいものとすることができるよう幅広い分野における安全保障協力を推進し,深化させていくことを決意した。

 閣僚は,沖縄を含む地元への影響を軽減するとの決意を再確認し,これによって日本における米軍の持続的なプレゼンスを確保していく。この文脈において,SCCの構成員たる閣僚は,同盟の変革と再編のプロセスの一環として,普天間飛行場を移設し,同飛行場を日本に返還するとの共通の決意を表明した。

 閣僚は,このSCC発表によって補完された,2006年5月1日のSCC文書「再編の実施のための日米ロードマップ」に記された再編案を着実に実施する決意を確認した。

 閣僚は,2009年2月17日の在沖縄海兵隊のグアム移転に係る協定(グアム協定)に定められたように,第三海兵機動展開部隊(MEF)の要員約 8000人及びその家族約9000人の沖縄からグアムへの移転は,代替の施設の完成に向けての具体的な進展にかかっていることを再確認した。グアムへの移転は,嘉手納以南の大部分の施設の統合及び返還を実現するものである。

 このことを念頭に,両政府は,この普天間飛行場の移設計画が,安全性,運用上の所要,騒音による影響,環境面の考慮,地元への影響等の要素を適切に考慮しているものとなるよう,これを検証し,確認する意図を有する。

 両政府は,オーバーランを含み,護岸を除いて1800mの長さの滑走路を持つ代替の施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置する意図を確認した。

 普天間飛行場のできる限り速やかな返還を実現するために,閣僚は,代替の施設の位置,配置及び工法に関する専門家による検討を速やかに(いかなる場合でも2010年8月末日までに)完了させ,検証及び確認を次回のSCCまでに完了させることを決定した。

 両政府は,代替の施設の環境影響評価手続及び建設が著しい遅延がなく完了できることを確保するような方法で,代替の施設を設置し,配置し,建設する意図を確認した。

 閣僚は,沖縄の人々が,米軍のプレゼンスに関連して過重な負担を負っており,その懸念にこたえることの重要性を認識し,また,共有された同盟の責任のより衡平な分担が,同盟の持続的な発展に不可欠であることを認識した。上記の認識に基づき,閣僚は,代替の施設に係る進展に従い,次の分野における具体的な措置が速やかにとられるよう指示した。

* 訓練移転
* 両政府は,二国間及び単独の訓練を含め,米軍の活動の沖縄県外への移転を拡充することを決意した。この関連で,適切な施設が整備されることを条件として,徳之島の活用が検討される。日本本土の自衛隊の施設・区域も活用され得る。両政府は,また,グアム等日本国外への訓練の移転を検討することを決意した。

* 環境
* 環境保全に対する共有された責任の観点から,閣僚は,日米両国が我々の基地及び環境に対して,「緑の同盟」のアプローチをとる可能性について議論するように事務当局に指示した。「緑の同盟」に関する日米の協力により,日本国内及びグアムにおいて整備中の米国の基地に再生可能エネルギーの技術を導入する方法を,在日米軍駐留経費負担(HNS)の一構成要素とすることを含め,検討することになる。閣僚は,環境関連事故の際の米軍施設・区域への合理的な立入り,返還前の環境調査のための米軍施設・区域への合理的な立入りを含む環境に関する合意を速やかに,かつ,真剣に検討することを,事務当局に指示した。

* 施設の共同使用
*  両政府は,二国間のより緊密な運用調整,相互運用性の改善及び地元とのより強固な関係に寄与するような米軍と自衛隊との間の施設の共同使用を拡大する機会を検討する意図を有する。

* 訓練区域
* 両政府は,ホテル・ホテル訓練区域の使用制限の一部解除を決定し,その他の措置についての協議を継続することを決意した。

* グアム移転
* 両政府は,2009年2月17日のグアム協定に従い,III MEFの要員約8000人及びその家族約9000人の沖縄からグアムへの移転が着実に実施されることを確認した。このグアムへの移転は,代替の施設の完成に向けての日本政府による具体的な進展にかかっている。米側は,地元の懸念に配慮しつつ,抑止力を含む地域の安全保障全般の文脈において,沖縄に残留する III MEFの要員の部隊構成を検討する。

* 嘉手納以南の施設・区域の返還の促進
* 両政府は,嘉手納以南の施設・区域の返還が,「再編の実施のための日米ロードマップ」に従って着実に実施されることを確認した。加えて,両政府は,キャンプ瑞慶覧(キャンプ・フォスター)の「インダストリアル・コリドー」及び牧港補給地区(キャンプ・キンザー)の一部が早期返還における優先分野であることを決定した。

* 嘉手納の騒音軽減
* 両政府は,航空訓練移転プログラムの改善を含む沖縄県外における二国間及び単独の訓練の拡充,沖縄に関する特別行動委員会(SACO)の最終報告の着実な実施等の措置を通じた,嘉手納における更なる騒音軽減への決意を確認した。

* 沖縄の自治体との意思疎通及び協力
* 両政府は,米軍のプレゼンスに関連する諸問題について,沖縄の自治体との意思疎通を強化する意図を確認した。両政府は,ITイニシアチブ,文化交流,教育プログラム,研究パートナーシップ等の分野における協力を探究することを決意した。

安全保障協力を深化させるための努力の一部として,SCCの構成員たる閣僚は,地域の安全保障環境及び共通の戦略目標を推進するに当たっての日米同盟の役割に関する共通の理解を確保することの重要性を強調した。この目的のため,SCCの構成員たる閣僚は,現在進行中の両国間の安全保障に係る対話を強化することを決意した。この安全保障に係る対話においては,伝統的な安全保障上の脅威に取り組むとともに,新たな協力分野にも焦点を当てる。



日朝平壌宣言

平成14年9月17日

 小泉純一郎日本国総理大臣と金正日朝鮮民主主義人民共和国国防委員長は、2002年9月17日、平壌で出会い会談を行った。
 両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した。

1.双方は、この宣言に示された精神及び基本原則に従い、国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注することとし、そのために2002年10月中に日朝国交正常化交渉を再開することとした。
 双方は、相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現に至る過程においても、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した。

2.日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。
 双方は、日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施し、また、民間経済活動を支援する見地から国際協力銀行等による融資、信用供与等が実施されることが、この宣言の精神に合致するとの基本認識の下、国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。
 双方は、国交正常化を実現するにあたっては、1945年8月15日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議することとした。
 双方は、在日朝鮮人の地位に関する問題及び文化財の問題については、国交正常化交渉において誠実に協議することとした。

3.双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。また、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。

4.双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した。
 双方は、この地域の関係各国の間に、相互の信頼に基づく協力関係が構築されることの重要性を確認するとともに、この地域の関係国間の関係が正常化されるにつれ、地域の信頼醸成を図るための枠組みを整備していくことが重要であるとの認識を一にした。
 双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。
 朝鮮民主主義人民共和国側は、この宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアムを2003年以降も更に延長していく意向を表明した。

 双方は、安全保障にかかわる問題について協議を行っていくこととした。


日本国
総理大臣
小泉 純一郎

朝鮮民主主義人民共和国
国防委員会 委員長
金 正日

2002年9月17日  平壌



拉致問題に関する<日朝協議>合意事項の全文
       毎日新聞平成26年 5月29日(木)20時34分配信


 政府が北朝鮮側と合意した事項は次の通り。

 双方は、日朝平壌宣言にのっとって、不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、国交正常化を実現するために、真摯(しんし)に協議を行った。

 日本側は、北朝鮮側に対し、1945年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地、残留日本人、いわゆる日本人配偶者、拉致被害者及び行方不明者を含む全ての日本人に関する調査を要請した。

 北朝鮮側は、過去北朝鮮側が拉致問題に関して傾けてきた努力を日本側が認めたことを評価し、従来の立場はあるものの、全ての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施し、最終的に、日本人に関する全ての問題を解決する意思を表明した。

 日本側は、これに応じ、最終的に、現在日本が独自に取っている北朝鮮に対する措置(国連安保理決議に関連して取っている措置は含まれない)を解除する意思を表明した。

 双方が取る行動措置は次の通りである。双方は、速やかに、以下のうち具体的な措置を実行に移すこととし、そのために緊密に協議していくこととなった。

−−日本側

 第一に、北朝鮮側と共に、日朝平壌宣言にのっとって、不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、国交正常化を実現する意思を改めて明らかにし、日朝間の信頼を醸成し関係改善を目指すため、誠実に臨むこととした。

 第二に、北朝鮮側が包括的調査のために特別調査委員会を立ち上げ、調査を開始する時点で、人的往来の規制措置、送金報告及び携帯輸出届け出の金額に関して北朝鮮に対して講じている特別な規制措置、及び人道目的の北朝鮮籍の船舶の日本への入港禁止措置を解除することとした。

 第三に、日本人の遺骨問題については、北朝鮮側が遺族の墓参の実現に協力してきたことを高く評価し、北朝鮮内に残置されている日本人の遺骨及び墓地の処理、また墓参について、北朝鮮側と引き続き協議し、必要な措置を講じることとした。

 第四に、北朝鮮側が提起した過去の行方不明者の問題について、引き続き調査を実施し、北朝鮮側と協議しながら、適切な措置を取ることとした。

 第五に、在日朝鮮人の地位に関する問題については、日朝平壌宣言にのっとって、誠実に協議することとした。

 第六に、包括的かつ全面的な調査の過程において提起される問題を確認するため、北朝鮮側の提起に対して、日本側関係者との面談や関連資料の共有等について、適切な措置を取ることとした。

 第七に、人道的見地から、適切な時期に、北朝鮮に対する人道支援を実施することを検討することとした。

−−北朝鮮側

 第一に、1945年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地、残留日本人、いわゆる日本人配偶者、拉致被害者及び行方不明者を含む全ての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施することとした。

 第二に、調査は一部の調査のみを優先するのではなく、全ての分野について、同時並行的に行うこととした。

 第三に、全ての対象に対する調査を具体的かつ真摯に進めるために、特別の権限(全ての機関を対象とした調査を行うことのできる権限)が付与された特別調査委員会を立ち上げることとした。

 第四に、日本人の遺骨及び墓地、残留日本人並びにいわゆる日本人配偶者をはじめ、日本人に関する調査及び確認の状況を日本側に随時通報し、その過程で発見された遺骨の処理と生存者の帰国を含む去就の問題について日本側と適切に協議することとした。

 第五に、拉致問題については、拉致被害者及び行方不明者に対する調査の状況を日本側に随時通報し、調査の過程において日本人の生存者が発見される場合には、その状況を日本側に伝え、帰国させる方向で去就の問題に関して協議し、必要な措置を講じることとした。

 第六に、調査の進捗(しんちょく)に合わせ、日本側の提起に対し、それを確認できるよう、日本側関係者による北朝鮮滞在、関係者との面談、関係場所の訪問を実現させ、関連資料を日本側と共有し、適切な措置を取ることとした。

 第七に、調査は迅速に進め、その他、調査過程で提起される問題はさまざまな形式と方法によって引き続き協議し、適切な措置を講じることとした。


ヤルタ協定

1945年2月11日の「ヤルタ」会議に於て署名
1946年2月11日 米国国務省より発表
 三大国、すなわちソヴィエト連邦、アメリカ合衆国及びグレート・ブリテンの指導者は、ソヴィエト連邦が、ドイツが降伏し、かつ、欧州における戦争が終了した後2箇月又は3箇月で、次のことを条件として、連合国に味方して日本国に対する戦争に参加すべきことを協定した。

1 外蒙古(蒙古人民共和国)の現状が維持されること。
2  1904年の日本国の背信的攻撃により侵害されたロシアの旧権利が次のとおり回復されること。
 a  樺太の南部及びこれに隣接するすべての諸島がソヴィエト連邦に返還されること。
 b  大連港が国際化され、同港におけるソヴィエト連邦の優先的利益が擁護され、かつ、ソヴィエト社会主義共和国連邦の海軍基地としての旅順口の租借権が回復されること。
 c  東支鉄道及び大連への出口を提供する南満州鉄道が中ソ合同会社の設立により共同で運営されること。ただし、ソヴィエト連邦の優先的利益が擁護されること及び中国が満洲における完全な主権を保持することが了解される。
3  千島列島がソヴィエト連邦に引き渡されること。

 前記の外蒙古並びに港及び鉄道に関する協定は、蒋介石大元帥の同意を必要とするものとする。大統領は、この同意を得るため、スターリン大元帥の勧告に基づき措置を執るものとする。
 三大国の首脳はこれらのソヴィエト連邦の要求が日本国が敗北した後に確実に満たされるべきことを合意した。
 ソヴィエト連邦は、中国を日本国の覊絆から解放する目的をもって自国の軍隊により中国を援助するため、ソヴィエト社会主義共和国連邦と中国との間の友好同盟条約を中国政府と締結する用意があることを表明する。
 
1945年2月11日
 J・スターリン
 フランクリン・D・ルーズヴェルト
 ウィンストン・S・チャーチル

※備考 本協定は1946年2月までに秘密にされていた。

ポツダム宣言  1945年7月26日  米、英、支三国宣言

(1) われわれ、米合衆国大統領、中華民国主席及び英国本国政府首相は、われわれ数億の民を代表して協議し、この戦争終結の機会を日本に与えるものとすることで意見の一致を見た。


(2) 米国、英帝国及び中国の陸海空軍は、西方から陸軍及び航空編隊による数層倍の増強を受けて巨大となっており、日本に対して最後の一撃を加える体制が整っている。(poised to strike the final blows)


(3) 世界の自由なる人民が立ち上がった力に対するドイツの無益かつ無意味な抵抗の結果は、日本の人民に対しては、極めて明晰な実例として前もって示されている。現在日本に向かって集中しつつある力は、ナチスの抵抗に対して用いられた力、すなわち全ドイツ人民の生活、産業、国土を灰燼に帰せしめるに必要だった力に較べてはかりしれぬほどに大きい。われわれの決意に支えられたわれわれの軍事力を全て用いれば、不可避的かつ完全に日本の軍事力を壊滅させ、そしてそれは不可避的に日本の国土の徹底的な荒廃を招来することになる。


(4) 日本帝国を破滅の淵に引きずりこむ非知性的な計略を持ちかつ身勝手な軍国主義的助言者に支配される状態を続けるか、あるいは日本が道理の道に従って歩むのか、その決断の時はもう来ている。


(5) これより以下はわれわれの条件である。条件からの逸脱はないものする。代替条件はないものする。遅延は一切認めないものとする。


(6) 日本の人民を欺きかつ誤らせ世界征服に赴かせた、全ての時期における影響勢力及び権威・権力は排除されなければならない。従ってわれわれは、世界から無責任な軍国主義が駆逐されるまでは、平和、安全、正義の新秩序は実現不可能であると主張するものである。


(7) そのような新秩序が確立せらるまで、また日本における好戦勢力が壊滅したと明確に証明できるまで、連合国軍が指定する日本領土内の諸地点は、当初の基本的目的の達成を担保するため、連合国軍がこれを占領するものとする。


(8) カイロ宣言の条項は履行さるべきものとし、日本の主権は本州、北海道、九州、四国及びわれわれの決定する周辺小諸島に限定するものとする。


(9) 日本の軍隊は、完全な武装解除後、平和で生産的な生活を営む機会と共に帰還を許されるものする。


(10) われわれは、日本を人種として奴隷化するつもりもなければ国民として絶滅させるつもりもない。しかし、われわれの捕虜を虐待したものを含めて、すべての戦争犯罪人に対しては断固たる正義を付与するものである。日本政府は、日本の人民の間に民主主義的風潮を強化しあるいは復活するにあたって障害となるものはこれを排除するものとする。言論、宗教、思想の自由及び基本的人権の尊重はこれを確立するものとする。


(11) 日本はその産業の維持を許されるものとする。そして経済を持続するものとし、もって戦争賠償の取り立てにあつべきものとする。この目的のため、その支配とは区別する原材料の入手はこれを許される。世界貿易取引関係への日本の事実上の参加はこれを許すものとする。


(12) 連合国占領軍は、その目的達成後そして日本人民の自由なる意志に従って、平和的傾向を帯びかつ責任ある政府が樹立されるに置いては、直ちに日本より撤退するものとする。


(13) われわれは日本政府に対し日本軍隊の無条件降伏の宣言を要求し、かつそのような行動が誠意を持ってなされる適切かつ十二分な保証を提出するように要求する。もししからざれば日本は即座にかつ徹底して撃滅される。


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