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はじめに

 盧武鉉と小泉の日韓首脳会談の共同記者会見の様子を私は職場からの帰途、ラジオで聞いていた。小泉の抽象論議に対する盧武鉉の率直な意思表示であった。そして盧武鉉は国家指導者と世論についても解説し、小泉を指導した。世論は(情報操作により)感情的になるが、指導者は特に外交には冷静でなければならないと諭した。立派な姿勢である。大統領と首相の違いだろうか。いつまでたっても小泉は歴史問題に真正面から取り組もうとしない姿勢で、今後も希望が持てないと感じた在日の皆さんは多いだろう。小泉は「守り」或いは「逃げ」の姿勢に終始している。これに対し盧武鉉大統領は真正面からぶつかり、切り込み、良いものは良いとする姿勢のように思った。また歴史認識の問題は(世論操作されている)日本国民の感情に配慮し、日本国内で積極的な議論が起きることに期待した。いつも目をパチパチし、右翼的言動を売り物にしている石原東京都知事は盧武鉉大統領の足元にも及ばない。
 拉致問題に関しては日本は六カ国協議の議題の一つにしてしまった。本来二国間協議なのだが。そのつけが早くも現れている。元々六カ国協議は「北の軍事利用の核問題」にあった。盧武鉉大統領は、拉致も大事かもしれないが、出発点である北の核解決に悪影響を与えてはならないと明快である。拉致家族会はどうでもいいが、少なくとも国会議員たるもの、この問題で前途を見失ってはならない。
 首相と大統領の立場に違いがあるが、小泉にくらべ盧武鉉大統領の誠実さが目立った記者会見だったし、説得力も充分であった。会見も言いにくいこともあったが論理的であり、説得力があった。
 日本国民は小泉のような抽象的で指導力のない首相を選んだ責任は大きい。また説得力を身につけさせることも馴れ合い政治の中では充分行ってこなかった。だから小泉はいつまで経っても「世間知らずのお坊ちゃん」のままで成長できないでいる。盧武鉉大統領は日本国民と指導者に対し、「日本はアジアの強大な国であり、自ら脱皮し解決の道へ進むこと。そして名実ともに信頼される強大国になって欲しい」と期待した。
 韓国の未来は明るいが、日本は暗いことを象徴する日韓首脳会談であった。しかし盧武鉉大統領のアドバイスを真摯に受け止めるならば、日本も展望の持てる国に発展できる。
 以下に総理官邸のページから拝借し掲載する。今述べたような始点で読み直ししてみてはどうだろう。



日韓首脳会談後の共同記者会見(要旨)

平成16年12月17日

【小泉総理冒頭発言】
 本日、盧武鉉大統領との首脳会談、7月の済州島につづきまして、一年に一回ぐらいは、それぞれの国で率直な意見交換をしようということで、今日、この鹿児島の指宿で行ったわけであるが、大変打ち解けた雰囲気の中で、いい会談ができたと思っている。今後、この首脳会談を「シャトル首脳会談」ということにしようということであるので、異議なく賛同した。日韓関係を進めていくために、まず日韓のFTAについて、来年のできるだけ早い機会に交渉を始め、来年中に妥結を目指そうということで一致した。また、羽田・金浦間の航空便、現在大変人気のある便であるということで、一日4便が現在運行されているが、これを8便に増やしたらどうかということであるので、日本としては前向きに検討していきたい。両国の人の交流は、これまで、国交正常化時点では、年間1万人程度であったが、しかし、昨年は約360万人の日韓両国の人々が日韓両国を交流してきた。いわば、年間一万人から一日1万人に拡大している。特に今年は、年間400万人を超えるのではないかという報告を私は受けている。そういうことから、来年、若干高望みかと思うが、万博も日本で行われるので、400万人から来年は500万人を目指そうということである。こういうことを考えると、羽田と金浦間の航空便を増便することは有効な手段ではないかと思っている。また、来年は日韓友情年2005の成功に向けて、両国民の幅広い参加を得ることが重要である。それぞれ、今、両国で交流事業の企画を計画しており、こういう点についても、幅広い国民の参加を得ながらやっていこうということである。
 北朝鮮については、私から、現状の問題を説明した。特に、拉致の問題について、北朝鮮の対応については、多くの日本国民が強い憤りの念を持っている。そういう中で、対話と圧力という方針で北朝鮮側と交渉を進めてきたが、今後、不誠実な対応ではない、誠意ある対応を求めていくと。そうした中で、北朝鮮がどういう対応をするか、しっかり見極めなければならない。そういう中で、将来の圧力というか、制裁の問題も考えていかなければならない。現在の時点において、六者協議をできるだけ早く再開すべきだということでも一致した。また、拉致問題解決に向けて、盧武鉉大統領も、日本の対応を理解し支持するという力強い表明があった。引き続き、拉致の問題、核廃棄の問題についても、日韓、そして米とも緊密な連携・協力を保っていきたいとのことでも一致した。
 将来の東アジア共同体を視野に入れた取り組みでもお互い協力できるのではないかと考える。来年はマレーシアで東アジアサミットが開催される。現在のASEAN+3と東アジアサミットとがどう違うのか、こうした点についても、来年5月の京都においてそれぞれの諸国の外務大臣会合が行われるが、その場で、お互いの姿勢を明確にしていこうという話し合いも行われた。
 また、イラクの支援についても、「イラク国民の自らの国は自らの力で立ち上げていこう」という、その復興に向けて、支援をしていくことが重要であると、お互い、広範な分野でイラクの復興について協力できるのではないかということでも一致した。
 来年は国交正常化40年目の節目の年になっている。過去の歴史の認識、反省すべきは反省し、将来お互いがますます友好関係を増進していこうということで、未来志向で、政治・経済のみならず、スポーツ、文化、芸術といった幅広い分野で未来に向かってよりよき関係を構築していこうと。そういうことから考えると、シャトル外交、年二回くらいは、お互い率直に意見交換をしようということはきわめて有意義と考える。両国の先人たちのいままで積み上げてきた努力というものを、将来いかに発展させていくかということが、我々両首脳の責任だと思っている。今回のような会談を今後継続して、今後さらに日韓両国の友好関係をさらに発展させていきたいと思う。

【盧武鉉大統領冒頭発言】
 韓国と日本の国民の皆さん、こんばんは。本日は、前回7月の済州島に引き続き、毎年お互いに訪問し、打ち解けた雰囲気の中で話し合いをしていこうという合意のもとで、本日またこの指宿にて再会した。会談の内容について申し上げる前に、ここ指宿に来るまでに、とてもこの地域が美しいという印象を受けた。空港からこちらに向かう中で、とても美しい港湾をみることもできた。特に指宿はとても美しい。私が来ているこの白水館も大変美しいと感じた。このような地方都市にこれだけの設備を整えていらっしゃり、また、このような行事が開かれたことを、大変驚き、またうらやましくも思う。

 先ほど小泉総理が詳しく説明されたとおり、様々な点についての意見交換を行い、かなりの部分で意見の一致があった。ほとんどは、お互いの理解と連帯感の下で、両国関係を発展させることで合意した。また、合意できなかったことについても、隔意なく、率直に話し合いができたのは、非常に大きな成果であった。言い換えれば、合意自体も大事であるが、合意できなかったことについて意見交換ができたこと、隔意なく話ができ、お互いの信頼を厚くすることができたことが大きな成果であった。来年は国交正常化40年目にあたるが、人の年齢にたとえれば不惑にあたる。韓日関係もこれまでの成果に基づき、ゆるぎのない隣国になるべきである。小泉総理と私は、来年の韓日友情年をそのようなきっかけにできるよう、お互い協力をしていくことで合意した。両国を一日生活圏にしていくために、恒久的なビザの免除と金浦・羽田間の航空便の増便を積極的に推進していくこととした。同時に、韓日自由貿易協定の締結の重要性に関してその認識を再確認し、その交渉の促進策について確認した。私は両国がすでに合意している原則に従って、農水産物分野を含む包括的な分野において、高いレベルのFTAが締結できるように、お互い努力しなければならないと強調した。

 小泉総理と私は、北朝鮮の核問題の速やかな解決が東北アジアの平和と安定のために、とても重要な課題であり、これは六者協議の枠組みの中で、対話を通じて平和的に解決されなければならないという認識をともにした。また、六者協議の早期開催と実質的な議論進展のため、韓日、そして韓日米間の連携をより強化し、北朝鮮の早急な協議復帰と核放棄のための戦略的な決断を促していくこととした。私は、南北関係、そして日朝関係の将来についても小泉総理と意見を交わした。北朝鮮の変化を導き出すためには、忍耐心をもって、対話と説得を持続する必要があるという点を協調した。この点と関連し、小泉総理は、日本人拉致問題に関し、厳しい状況におかれているということを理解し、そうした状況においても話し合いを続け、制裁措置について慎重な対応をされている点を高く評価し、支持する。韓国政府も、日朝間の拉致問題の早急な解決を期待し、必要な場合にはそれを支援するための努力を傾けていく所存。

 東北アジアさらには東アジアの地域協力の発展は、韓日両国の繁栄において大変重要。両国は韓日中三カ国の間における協力を真摯に推進し、11月に開かれたASEAN+3首脳会議で合意された東アジア首脳会議開催の成功のために、緊密に協力することとした。また、韓日中首脳会議の三国内開催の必要性についても認識をともにした。
 小泉総理と私は、イラクにおける早期の平和の定着と復興支援のために国際社会が引き続き努力する必要があるとの認識で一致し、今後、イラクの国民が自ら選択した合法的な主権政府の樹立に向けて、国際社会とともに、協力を行うことで一致した。また、国際社会の環境の変化により、安保理を含む国連改革の必要性で共感して一致し、国際社会の合意が円満に導き出されるよう両国が協力していくことにした。

 本日、私と小泉総理は大変率直かつ真摯な協議を通じて、両国間の未来志向的な発展の可能性を実感した。7月の済州島に引き続き、本日ここ指宿での会合を通じ、韓日首脳間のシャトル外交が定着したことを大変うれしく思う。来年上半期中、ご都合のよろしいときに、韓国の地方都市にて、小泉総理と再会できることを期待している。

【質疑応答】

【質問】 総理にお尋ねする。今日の会談では、北朝鮮を巡る問題で、核と拉致の同時解決を目指す日本の立場と、核問題の解決を優先すべきであるとの韓国の立場と、若干の違いがみられたと思う。今後、日本の立場に、韓国をはじめ各国の理解を得ていくか、どのように調整を進めていく考えか、総理のお考えをお聞かせ願いたい。併せて、今日の会談で、拉致問題の現状に対する、日本の国民感情、特に(北朝鮮に対する)経済制裁を求める声が高まっている日本の世論について、大統領の理解を得られたとお考えか、お答えいただければ幸いである。

【小泉総理】 北朝鮮との拉致の問題、核の問題についてのご質問であるが、日本としては、核の問題も拉致の問題も、総合的に解決していかなければならない問題である。両方とも重要である。盧武鉉大統領は、韓国の立場、日本の立場、それぞれ協力できるところは多いということから、日本側の拉致問題に対する対応についても理解と支持を表明された。私としては、拉致問題は、日朝間における、「二国間」の問題であるが、核の問題はいわば韓国のみならず、米、中、露、日と、共通の課題である、その共通の課題について、六者協議の枠組みをこれからも重視していく、そしてできるだけ早期に、この六者協議を開くことが重要であると考える。なおかつ、北朝鮮とねばり強く交渉していくことも必要ではないかと。私としては、これまで北朝鮮に対して、安否不明者の問題を含めた真相解明、そして北朝鮮に対しては「対話と圧力」でやっていくという方針を説明した。そこで、まず、現状においては、事実を明らかにするということが第一に重要であるので、日本側の拉致問題に関する納得できない点について北朝鮮側に事実関係を明らかにするよう求めていくが、その点について、北朝鮮側が、どのような対応をするのかを見極める時も必要だと思う。その対応をみて、それでは経済制裁をするときはどういう方法があるのかという点も考えて行かなくてはならない。まずは誠意ある対応を北朝鮮側に求めていくという私の立場を説明し、盧武鉉大統領からも、理解と支持をいただいたと思っている。今後、核の問題については、できるだけ早期に、六者会合の場を活用するためにも、北朝鮮側の責任ある対応を求めていくということでも一致したと思っている。

【質問】 今日本では北朝鮮が横田めぐみさんの遺骨を偽って送った事実が明らかになったことにより、経済制裁を実施しなければならないという強硬な世論が提起されており、又米国もこれを支持するとの立場を明らかにした。又大統領もそれについて支持することができるとの意見を明らかにされたと報じられたが、その点についての意見をお聞かせ願いたい。

【盧武鉉大統領】 私のこの問題についての基本的な認識として、なるべく、日本の経済制裁により、北の核問題解決のための六者協議に支障があってはならないというのが希望事項である。しかし、その2点は必ず別のものとして考えることはできない。私は日本の立場から、拉致問題と遺骨問題において、経済制裁を加えることもできると思う。絶対的に反対をしたり、不可能であると言ったりしているわけではない。しかし、できるといっても、それはとても冷静に且つ慎重になされるべきで、それが日本と北朝鮮の国交樹立問題、六者協議に影響がないことを希望している。

 今回の問題について、日本の国民の方々が受けた衝撃を私は十分によく理解している。又遺族が受けた衝撃は最も大きいと思う。本当に遺族たちにとっては二重三重の苦しみになっており、慰労のお言葉を申し上げる。しかし、だからといって、即時に制裁を加えるとなると、私としてはそれについては軽く申し上げることはできない。というのは、北朝鮮がどういった意図をもってこのようなことをしたのか、いくら考えてみてもその意図がわからない。北朝鮮がわざとこのようなことを仕掛けて利益になるようなことは一つもない。従って、日本が結果的に受けた衝撃は大きいが、北朝鮮がこれを故意に日本国民を侮辱するためにこういったことをしてはいないのではないか、との考えも持っている。過ちやミスによる出来事なのではないかと考えざるを得ない。私は意図がわからないのでこのようなことを申し上げている。もし、わからない状態なのであれば、性急に経済制裁を行う前にもう少し事実を確認する必要がある。私は北朝鮮がこの問題について誠意をもって解明をしていく必要があると考える。

 又、指導者たちは時間をおいて冷静にこの問題を確認し、又北朝鮮にもそういった機会を与え、過ちやミスによった場合、わざとそういったことを仕掛けた場合にわけて対応をする必要がある。そのため、より時間をかけて、冷静に且つ慎重にこの問題を判断したいという日本政府の立場について、適切な判断であると評価をしている。北朝鮮と日本が国交を樹立するということは、北東アジアにおいて将来、同地域の平和と共存繁栄のためには避けられない選択である。また、六者協議を通じて、北の核問題を解決していくということも避けられない選択である。これは宿命的に受け入れなければならないと思うし、又必ず求めていかなければならない日本の目標であると思う。そうであれば、もしも性急な判断が北朝鮮との国交樹立や六者協議に悪い影響を及ぼした場合、これは日本の国益にも適わない。日本の国民の方々がこの点について感情に傷を受け、憤りを覚えておられるのもよく理解できる。しかしそれは国民の立場であり、日本の責任のあるリーダーたちは、この問題の解決の出口に至ったときの解決策を常に念頭に置きながらアプローチしていかなくてはならないので、国民とは異なる判断をせざるを得ないと見ている。

 国民は気持ちに従って話すことができるが、指導者はそういうことができないのが宿命である。そのため、日本政府が慎重に且つ冷静に対処されているという点を大変適切且つ国民とは異なる選択として尊重されなければならないと考える。私たちは指導者を選ぶとき、指導者の判断と国民の判断とは常に異なりうるものである。どのような時かと言えば、例えばこのような問題においてである。そのため私はこのような戦略的問題については、より指導者にその問題を委ね、時間をかけて冷静に選択ができるように時間を与える余裕を日本国民に持っていただきたい。制裁について全てに反対しているわけではなく、こういった問題についての事実関係を明らかにしていく中でその結果を北側との国交樹立、核問題の解決などを通じた北東アジアの平和と繁栄の秩序を成し遂げなければならないとの目標を念頭におきながら、この問題を考える方がいいということをご理解いただければいいと思う。

【質問】 今日本では、韓国のテレビドラマが国民的人気を集めるなど、韓流ブームと呼ばれ、日韓友好ムードが高まっている。その一方で日韓両国間では歴史問題という重い課題が残されている。来年は日韓友情年であるが、大統領はこうした歴史問題にどう向き合い、どう克服し、真の友好関係を築くおつもりかお聞かせ願いたい。

【盧武鉉大統領】 とても雰囲気のいい中で、話しにくい問題だと思う。しかし、私の方からお答えする。私たちは歴史を学び、歴史問題を解決してゆこうとしている理由は、正しい理解のためである。韓日間の正しい未来のためである。

 韓日の未来のために、肯定的な寄与をしていくために、私たちは歴史を顧みながら、歴史問題を取り上げているのだと思う。韓国と日本の間で展開される未来というのは、疑うまでもなく平和と共存である。更に協力していかなければならないし、又、大きな枠組みのなかで東北アジア共同体の建設の中でもお互いに協力をしていくと思う。歴史の問題であれ、他の問題であれ、このような新しい秩序の構築の為になるものでなければならない。

 私たちは韓国の立場から、又韓国の国民の立場から、一面においては感情的なレベルから、もう一方では未来志向的なレベルから日本との関係のなかで、日本が歴史問題を快く解決してくれることを求めてきたし、日本の指導者達から数回に渡り、その点について大変前向きな立場の表明をしていただいた。にもかかわらず未だに解決されていない問題が残されているのも事実である。

 韓国が日本に歴史問題を頻繁に提起し、また謝罪の要求や様々な要求をした場合に、それが果たして韓国と日本の友好親善のためにあるのか、と考えると、それについては否定的な立場である。なぜかと言えば、過去の歴史問題において、日本国民の間における道徳的な決断によって問題提起がされた際にそれに反応する日本国民の気持ちと、韓国が問題提起した際の日本国民の気持ちは異なりうると思う。従って、心よりこの問題を解決するためには、感情的に韓国側からこの問題を提起し解決を要求するのではなく、日本国内で自らその問題提起があり、国民間でその問題が話し合われることを望んでおり、韓国側でそれを見守る必要があるとの考えを持っている。そのため私は今回訪日する際にも歴史関連の問題については、様々な日本国民の方々が感情的に反応しうるような問題提起はしないとの考えをもっていた。

 歴史問題について共同研究を日韓間で進めている。これは問題解決の方法として両国で合意しているし、又客観的な事実を発見し、歴史的事実を確認する中で、両国の間の感情的問題を合理的に克服していくという方向なので、歴史共同研究は引き続き行われていくことを希望する。又、これから東北アジアの新たな平和と共同繁栄の秩序を求めていくのに日本国民の役割が非常に大事である。日本国民が東北アジアの指導国家の国民としてその責務を果たしていくことを求めている。

 世界における前例を踏まえ、指導的な姿を示してくだされば、それは他の国の国民の要求によって何らかの措置をとるよりも遙かにいいことだと思う。私は日本の国民の方々が何らかの形で決断をする時に来ていると思う。一部の国民の間では、この問題に逆行するような発言をする方もいるが、これは望ましくないことだと思う。日本は強大国である。東北アジアでも強国であるし、世界の中でも強国である。

 自国を離れ、東北アジアという枠組みのなかで、指導的な国として又その国民として、謙遜な姿勢を示し、こういった問題について寛大な姿勢、譲歩する姿勢を自らもっていくことが東北アジアの秩序のためになると思われる。弱い国の寛大さは卑屈にもなり得るが、強大国の寛容は謙遜になり、美徳である。私はこの問題に限っては日本の方々が、21世紀の新しい世界秩序の中で、又東北アジアの秩序のなかで、自らの位置を求めていくというレベルからアプローチをしていくのがより望ましいと思われる。過去の問題によって、隣国でそのような感情的な問題を引き続き提起するというのが、未来の為にならないと考えている。未来の目標に向けて、達成のためになるような方向で、みんなが自制をしながら、積極的に努力する必要があると思う。

【質問】 小泉総理は、昨日、韓国特派員団との懇談において、韓日関係が友人関係のようになるとよいと述べられたと伺った。韓国人たちも、韓日関係が、未来志向的な関係に発展していくことを期待している。ところで、中山文部科学大臣が、先月、日本の歴史教科書において、従軍慰安婦や強制連行のような表現が減ったことはよいことであり、これまであまりにも自虐的であったと述べ、また、盧大統領の訪日の前に、自民党の政調会長が、創氏改名は韓国人が望んだので行われたとの暴言を述べられたことにより、会談の雰囲気に水を差したということがあった。総理は、日本の政治家・閣僚がこのような暴言を続けておられることについて、どのようにお考えか。それを防ぐ考えはないのか。また、総理の靖国神社参拝について、多くの韓国人が反対している。(A級戦犯の)分祀するという方策について述べられたこともあったが、これについて明確な立場をお聞かせ願いたい。韓日関係の発展のために、果敢にこれを中断する意向はあるのか。

【小泉総理】 だいぶ指摘された点が多いのであるが、要するに、日韓関係、過去の歴史というものから、どういう点を学び取るか、これが大事だと思っている。友好の歴史が長いのであるから、これからの将来に向かった、日韓の協力関係、歴史的な基盤というものを尊重して行かなくてはならないと思う。過去の歴史について、それぞれの政治家がいろいろな意見を発言する場合があると思う。中には韓国の方々の気持ちを不愉快にさせる発言があったと思うが、こういう問題についても、盧武鉉大統領が指摘されたとおり、歴史の共同研究、客観的に両国の過去の歴史がどういうものであったかという研究が続けられている。これからの将来の友好協力関係に活かすという視点が必要と思う。対立点をことさらあげつらうのではなくて、そういう対立点を含めて、あるいは摩擦も含めて、将来の友好協力関係にこの過去の歴史をどのように活かしていくかという視点が大事ではないかと思っている。
 私が靖国参拝するというのも、何度も話していることであるが、二度と戦争を起こしていけないという気持ちから参拝しているわけである。これも歴史を紐解いてみれば、多くの日本国民、当時の状況をみると、好き好んで戦場にでたわけではない。多くの当時の国民は、心ならずも戦場に行かざるを得なかった、そして命を落として、家族と別れてあの過酷な戦場に赴いた。現在の日本の平和と繁栄というのは、現在生きている人だけで成り立っているわけではない。現在生きている人たちの努力はもちろんであるが、先人たちの尊い努力と尊い犠牲の上に成り立っているのだということを、我々、現在生きている人々、そして将来の若い世代は片時も忘れてはならないと思っている。そういう過去苦難の道をたどった、命を落とさなければならなかったという戦没者に対する敬意と感謝の念を持って、靖国神社に参拝している。決して、軍国主義になろうとか、その準備をしようとか、あの戦争はよかったなどと思っていることはない。戦争はしてはならないと、そして、現在の日本の発展と繁栄というのは、世界の平和と安定の中にあるのだと、そういう気持ちから、これからの将来、過去、苦難の道を歩んだ戦没者たちに、日本国民として、敬意と感謝の誠を捧げる気持ちから、靖国神社に参拝している。

 A級戦犯の分祀問題は、(靖国神社は)一宗教法人であるから、政治として政府が関与すべき問題でもなく、関与できる問題でもない。将来の日韓の友好関係をなによりも重視していかなければならないので、私は靖国の問題だけをことさら取り上げるというのはいかがなものかと。それよりも、未来に向かって、過去の歴史を振り返りながら、どのような友好協力関係を維持して発展させていくかという視点から、幅広い分野にわたって今後も協力を続けていきたいという気持ちでいっぱいである。
                                     以上

 「私が靖国参拝は、二度と戦争を起こしていけないという気持ちから参拝している」という小泉の発言を文字通り受け止めるものはいない。もしそうだとすれば狂人としか言いようがない。「戦争を起こしてはいけない」のであれば天皇制と軍国主義の象徴たる靖国神社に参拝はできない。いつまでも「私が靖国参拝・・・・戦争・・・」との主張は、他国に馬鹿にされるだけだから、やめて欲しいものである。諸外国に対して「小泉が日本の総理」というのは恥ずかしく思う。
 「A級戦犯の分祀問題は、(靖国神社は)一宗教法人であるから、政治として政府が関与すべき問題」ならば、尚のこと政治家は参拝してはならない。小泉が自己矛盾に陥っていることに気づかないのだろうか。

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