安倍内閣は六者協議の合意を誠意をもって履行し、日朝国交正常化を直ちに実現せよ!!


 2月8日から北京で再開された第5回六者協議の第三セッションは、13日、05年9月の共同声明を実施するための「初期段階措置」を中心とする合意文書を発表した。それは、1月のベルリン会談、金融協議などの朝米直接対話で合意した内容を具体化したもので、05年共同声明の内容を具体的に一歩前に進める内容となっている。

 私たちは、この合意を歓迎し、これを契機に朝米、日朝関係の正常化と朝鮮半島の非核化を経て北東アジアの非核化、さらに世界的な核廃絶運動に発展させることを求める。そのために、「非核化」の対象を朝鮮半島にだけ求めるのではなく、特に核保有大国の共同責任を追及しなければならない。

 日本のマスコミは、安倍政権の朝鮮敵視政策と右翼勢力に迎合して「北朝鮮の核放棄」だけを一方的に求めながら、「暴走を押さえる基礎が出来た」(「朝日」)、「悪事に見返りを与える不条理な図式」(「サンケイ」)、「制裁の継続は当然だ」(「読売」)、「警戒心を緩めない共同歩調を」(「毎日」)などの主張を垂れ流している。

 そして安倍政権はその朝鮮敵視政策と制裁措置を継続しながら、在日朝鮮人とその組織(民族学校を含む)に対する政治弾圧を強化し、六者協議の合意に基づくエネルギー支援(初期)への不参加を表明した。こうした安倍内閣の対応に国際的な批判も高まり、日本の孤立化が顕著になりつつある。

 「悪事」をはたらき、「暴走」を続けてきた主犯と従犯が誰であったかはいまや全く明らかではないか。安倍内閣は、対朝鮮政策の抜本的見直しを進めるべきである。

今回の合意文書は、以下の8点を中心にしている。
(1) 寧辺の核施設を60日以内に稼動停止・封印し、IAEA(国際原子力機関)の要員が復帰する。
(2) 米朝の外交関係樹立のための協議を開始し、テロ支援国家指定の解除、対敵国通商法適用の終了作業を開始する。
(3) 日朝国交正常化の協議を開始する。
(4) 60日以内に5万トン重油相当の支援を開始する。
(5) 朝鮮半島非核化、米朝国交正常化、日朝国交正常化、経済・エネルギー協力、北東アジアの平和・安全メカニズムの五つの作業部会を設置し、30日以内に会合を開く。
(6) 初期段階措置とすべての核施設の無能力化を含む次の段階の期間中、100万トンの重油相当の支援。
(7) 初期段階措置の実施後に閣僚会議を開く。
(8) 第6回六者協議を3月19日に開く。

 これらの合意事項と関連して、金融制裁の部分解除に着手することになった。また、文書が「北東アジア地域の永続的な平和と安定のための共同の努力」「朝鮮半島における恒久的な平和体制」をうたったことが重要である。そして今回も、「行動対行動」の原則、諸措置を「並行してとる」ことを確認している。

 今回ようやく05年9月の共同声明の「実施」にこぎつけたが、問われるのは「行動対行動」の同時行動・並行の原則で六ヶ国が歩調を揃えることである。前回の共同声明の直後からアメリカは朝鮮のウラン濃縮疑惑を再浮上させながら、「ならず者国家」の政権打倒を目指す戦争計画の策定や対朝鮮軍事演習の強化をはかってきた。

 このアメリカの行動が、イラク崩壊を眼前の教訓ともしている朝鮮のミサイル発射(06・7)と核実験(06・10)という対抗手段を呼び起こした。その後は、国連決議の採択(06・10)と経済制裁、とくにアメリカは「偽ドル疑惑」をキャンペーンし、金融制裁を主導した。朝鮮は、「偽ドル」をめぐる真相解明とマネーロンダリング防止のための共同行動も主張したが、これらも一蹴して対朝鮮包囲網を強化した。こうした経過を振り返ってみれば、朝鮮半島の危機を深めてきた主因がどこにあったのかも明らかである。

 共同文書は日朝関係について「ピョンヤン宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとるため、二者間の協議を開始する」とした。安倍内閣は当面、制裁を維持しつつ、エネルギー支援(初期)への不参加、エネルギー調査への参加、作業部会での拉致問題の追及を優先させようとしている。

 しかし、拉致問題を優先する日本の立場は、六者協議の場で孤立し始めている。アメリカの助けを借りて作業部会での追及を続けても見通しはない。国交正常化を優先させて懸案事項の解決を追求すべきである。「不幸な過去」の清算、在日朝鮮人の法的地位、拉致事件の解明などである。これらを進めるためにも、安倍内閣が進めている制裁措置を撤回し、朝鮮総聯と傘下組織(民族学校を含む)に対する政治弾圧を即時にやめるべきである。

 イラク侵攻が破綻し、中間選挙で惨敗したブッシュ政権は、対朝鮮政策を多国間関係での対話路線に転換し始めた。94年の米朝枠組み合意を破綻させて、朝鮮崩壊に期待をかけてきたアメリカの政策もまた破綻したのである。
 ベトナム、アフガン、イラク、そして朝鮮。アメリカ主導でこれらの地域で起きた事態は「平和への対話」こそが事態を解決する鍵であることを示している。安倍政権もこのことを肝に銘じるべきである。


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