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三条市における新昇格制度に対する闘い   


1、新人事考課制度の導入−勤勉手当から始まった
 
 概要は「三条市における新人事考課制度の内容と問題点」(既刊「季刊 自治体労働運動研究」<通巻第11号>掲載)を参照してください。

2、ワタリ・現業の特別昇給の廃止

 (1)経過
 
 @現高橋三条市長は2003年4月市長選立候補に際しての公約の一つとして「ワタリ・ウロ抜きの廃止」を掲げた。そして職員に痛みを強いるためには、自らの市長給料を50%削減する必要があると表明し、2期目は無投票再選された。再選後の最初の6月議会に、公約どおり市長給料50%削減提案を行ったが、議会から修正をせまられ「職員の給料とは直接関係ないものとし、30%削減」となった。 *削減条例は「現にその職にあるものに限る」とし、助役や・収入役及び次の市長に波及させないこととした内容。

 A01年7月にワタリ・ウロ抜きの廃止も含めた9項目提案がされた。この時は10分程度しか説明されておらず、廃止にかわる新たな昇格基準が何も示されず、この件についての団体交渉が一切されないままであった。また現業については対象外とされていた。03年8月28日に至って、ようやくワタリ廃止に伴う新昇格運用基準が提示され交渉が開始されたものの、一方的に10月1日から当局案どおりに強行実施してきた。具体的提案から約1カ月の間に行われた4回の交渉は、いずれも現業職員に対する特別昇給の廃止をめぐる交渉であり、昇格運用基準の実質的な交渉がされないまま推移した。

 B当局が強行実施をした背景は、「市職労とは2年以上交渉してきていることであり、私としては10月ころをめどに、ワタリ、ウロヌキを廃止したい」(平成15年6月10日付「三条新聞」)という市長の強い意向が最大限働いたと思われる。職員の給料体系を事実上決定付ける仕組みである昇格運用基準は、労働条件の中でも最も重要なものである以上、十分な交渉が必要なことは言うまでもなく、市長の明確な理由が伴わない単なる意向だけで、労働条件が一方的に決定されることは許されるものではない。

 (2)当局の意図

 何故、社会通念上の常識を超えた市長の給与削減を訴えてまで、廃止しようとしているのか。

 @市場万能主義、新自由主義の貫徹
 市長は、「市場万能主義」「新自由主義」を当たり前のものとしている。小泉構造改革路線に賛成している。民間からみると考えられない給与の仕組み、民間では能力実績主義、と。

 A競争第一主義の職場づくり
 「主任と係長が同じ6級にいるのはおかしい。それではがんばったものが報われない。だから主任は5級までとする。」(当局の主張)…昇格枠を狭めることにより、少ないポストで競争させる。昇格できないものは見捨てられていく。「能力がないから出世できないのは当たり前」視し、「能力を引き出す」「能力を育てる」ことに重きを置かない。能力を引き出すことは自分で行え。
 ※現実には出世レースにおける勝者のみが昇格(成功した者のみに与えられる昇格)し、敗者復活が極めてむずかしい仕組みであり、(40代から諦めていく)一部の人の労働意欲を高めはするが、全体を通してみれば低下している。

 B使用者に都合の良い労働者の育成
 限られたポストの中で昇格を争うことは、使用者(上司)の一方的な勤務評価の結果に基づき昇格させていくことになる。それだけ使用者の裁量が増えることになり、恣意的昇格が高まることを意味する。したがって公務員としての中立性・公平性よりも、使用者に盲目的にしたがうような職員が生みだされていく。
 
 (3)組合側の考え

 ワタリの意味するところをどのように守っていくのが課題
(ア)ワタリは、昇格の最低基準である。生涯賃金の最低基準を明らかにすることにより、生活設計を可能にする。…生活給の視点
(ィ)恣意的昇格をさせないことにより、公務員としての中立性・公平性の確保
(ウ)賃金水準を落とさせない。…生活の確保(ラス指数の堅持)
(エ)現行の勤勉手当に反映させる新人事考課制度がうまく機能しない中で、昇格昇給まで適用を拡張することは、さらなる労働意欲の低下をもたらす。

 (4)04年3月30日に三条市現業労働組合が誠実団交義務違反で不当労働行為として申立

 実質的交渉が無かったため、弁護士と相談し、不誠実団交として申立を行うこととした。その一方で弁護士としての見通しは「使用者側は9月30日以前の状態に戻すということは中々承服できないであろうから、労働委員会も『両者が誠意をもって話し合うように』というあっせん的なものが予想されるので、それを見越した対応を今から考えてもらいたい」というものであった。
 闘わずに相手の土俵で交渉したしたところで結果は見えている。精一杯闘う中(地労委闘争)で、初めて相手の土俵に上がって闘うことができるのではないか(まともな交渉が可能)。こうした立場から自治労中央本部承認に基づき04年3月30日に地方労働委員会へ申立てを行う。

 3、新昇格制度の内容

 (1)制度の概要

 @三条市における昇格運用基準は、モデル賃金(高校を卒業後、すぐに現業職員となった場合から定年までの仮定の賃金)を行政職二表の給料表の中に設定し昇格させている。(ただし、中途採用者、勤務成績不良者等により昇格できない者も実際にいる。)今回の提案は、昇格ラインを変更しないものの、昇格予定に達した者が昇格する場合の基準を、勤勉手当で実施していた新人事考課制度(平成13年度から実施)の利用によって行うものであった。したがって今までのように昇格基準の号級に到達したからといって昇格されるものではなく、一定の評価を受けたものでなければ昇格できなくなる仕組みであった(今までとは比較にならないほどの厳しい評価基準)。

【昇格ライン】
 *一般行政職 1級7号→2級、2級7号→3級、3級10号→4級、4級12号→5級、5級14号→6級
 *技能労務職 1級10号→2級、2級6号→3級 3級7号→4級、4級8号→5級、5級11号→6級

 A昇格決定までの仕組み
 昇格予定の号給に達してから1年間の勤務評価が一定の点数以上である場合に昇格させる(勤勉手当の成績率決定のために半年ごとに評価している直近の点数2回分の平均)。具体的には以下のとおり。

【一般職係員の例】
(ア)第1次評定結果×昇格時のウエー ト=昇格時の配点=【表1】
 この場合、すべてBだった人は70点となり、1級から2級へは昇格できるが、2級から3級へは73点必要なため昇格できない。つまり普通の能力・業績では昇格できない制度であった。
(ィ)昇格に必要な配点=【表2】

表1

評定区分 評定要素 第一次評定の評価及び配点表 すべてB
の場合
昇格の場合
のウエート
すべてBの場合の
昇格時の配点
S A B C D
業績(45) @仕事の質 20 15 10 7 5 10  ×50%  5
A仕事の量 20 15 10 7 5 10  ×50%  5
 ・加算評価 5  0
態度(50) B規律性 10 5 3 10  ×100%  10
C協調性 10 7 5 3 7  ×100%  7
D積極性 20 15 7 3 1 1  ×100%  7
E責任制 10 7 5 3 3  ×100%  7
能力(60) F知識力 20 15 10 7 5 5  ×100%  10
G判断力 15 10 7 5 3 3  ×100%  7
H企画力 15 10 7 5 3 3  ×100%  7
I指導力 10 7 5 3 1 1  ×100%  5

表2

 級 1→2級 2→3級 3→4級 4→5級 5→6級
 職名 主事補→主事 主事→主事 主事補→主任 主任→主任 係長→係長
一般行政職 70点 73点 76点 79点 82点
保育士 61点 64点 67点 70点 73点
技能労務職 61点 68点 72点 76点 90点

 (2)10月1日の昇格状況(一方的に実施により不利益を被った状況)

 @昇格ラインに到達した者9名(現業職員1名)のうち、昇格しなかったもの4名(内現業職員1名)。特別昇給制度が受けられなかった者3名であった(現業職員のみ)。
 A9月30日に示された点数別人数(新たな基準:過去2回の平均)は【表3】から【表5】<66〜67頁>のとおりである。
【表3】を例に表の見方を説明する。【表3】によると現在5級の係長が6級へ昇格するためには82点以上必要であり、11人中10人が昇格できることになる。
 しかし4級の者は49人中24人が5級への昇格が可能となるが、ポストがないと昇格できなくなっているため、実際には24人を下回ることが予想される。なお、網掛けのある欄の者が上位級への昇格が可能となる。
 参考の表は、すでに昇格したものの点数を示したものである。6級の係長級は現在90人いるが、その内61人は新基準に照らすと6級には昇格できないことを意味しており、おそらく今後、こういう人たちの取扱いの変更を提案してくるものと思われる。
 B組合の試算では、一般行政職の6級までについては、現在よりも14%程度、保育職にあっては17%程度の賃金水準の低下が見込まれている。また技能労務職については、16%程度の賃金水準の低下が見込まれる。

 表3 一般行政職

67点
未満
67点以上
70点
未満
70点以上
73点
未満
73点以上
76点
未満
76点以上
79点
未満
79点以上
82点
未満
82点以上
85点
未満
85点
以上
昇格
可能
5級
係長職
1 3 7 11 10
4級 1 1 10 6 7 3 8 13 49 24
3級 1 3 5 11 6 8 3 14 51 31
2級 4 5 8 3 4 2 26 22
1級 1 1 2 2
2 4 21 22 21 15 18 36 139 89
参考
6級係長職 3 3 14 12 20 7 10 19 90
6級主任 5 6 37 16 14 4 10 9 101
5級主任 2 3 6 1 4 2 18


(3)昇格運用基準の改悪によって生涯賃金は?

 @一般行政職の場合、1級で定年を迎えた場合8千4百万円、2級で定年を迎えた場合6千万円、3級で退職した場合3千6百万円、4級では1千7百万円、5級では1千2百万円の生涯賃金の減少となる。
 A技能労務職の場合、1級で定年を迎えた場合5千7百万円、2級の場合4千4百万円、3級の場合3千2百万円、4級の場合2千6百万円、5級の場合1千7百万円、生涯賃金の減少となる。
 Bさらにこの昇格運用基準の導入によって、類似都市と比較して給与水準は、大幅に低下していくことは明白であり、人事課長が交渉時に言っていた「結果として下がるかもしれない」という程度の範囲を大きく逸脱している。

 4、03年12月期の勤勉手当は管理職にだけお手盛り

 (1)03年の勤勉手当成績率の配分割合を人事当局に求めたところ、以下の資料提出があった。これによると評価5は3%以内にも関わらず、課長補佐以上は6%となっており、基準に違反している(評価4のところも同様に課長補佐以上で基準を超えている)。その一方で技能労務職には評価5が誰もいないことが判った。

参照 表6 勤勉手当の乗率と職の割合  80/100とは乗率のことである

区分 人数 評価5 評価4 評価3 評価2 評価1
80/100 75/100 70/100 65/100 60/100
3%以内 5を含め10%以内 80% 無制限 無制限
課長補佐以上 84 100% 5 6.0% 5 11.9% 72 85.7% 2 2.4% 0.0%
係長・係員・保育士関係 492 100% 8 1.6% 33 8.3% 429 87.2% 17 3.5% 5 1.0%
技能労務職 130 100% 0.0% 10 7.7% 116 89.2% 3 2.3% 1 0.8%
706 100% 13 1.8% 48 8.6% 617 87.4% 22 3.1% 6 0.8%


 (2)誠意なき交渉態度
 早速、団体交渉を申し入れ、04年1月9日に交渉した。@職種別の評価配分にもかかわらず何故技能労務職に評価5がないのか?課長補佐以上は10%を超えた理由は?A技能労務職評価4の者はすべて同じ点数なのか?B職員の不信を取り除くために、納得いく資料を提出すること、を求めた。@については事実説明を行わずに、仮定の話ばかり繰り返す。Aについては、評価4はすべて同じ点数でないことを明らかにしたが、これ以上の説明を拒む(更に恣意的運用の疑いが強まった)。Bについては、新たな資料についての提出が可能かどうか持ち帰るとした(後日、新たな資料は出せないと回答)。
 
 5、331名(対象組合員の76.1%)が公平委員会へ措置要求する

 市職労委員長と現業労組委員長が代理人となり、1月19日及び3月15日に非現業職員併せて331名の措置要求を公平委員会に行う。措置要求書の論点は、以下の@からCまでである。
 @お手盛りであり、差別的取扱いでないか−憲法第14条の「すべて国民は、法の下に平等であって……社会的身分……により、経済的又は社会的関係において、差別されない」及び地方公務員法第13条の「平等取扱の原則」に違反しているのではないか。
 A公務員の中立性確保の視点から問題はないのか−いかなる理由があろうとも自ら定めたルールに反した成績率の配分を行うことは恣意的という批判を免れえるものではない。その時々の人事当局の裁量に左右されるのなら、市長や上司に盲目的に従う(全体の奉仕者でなく、当局にゴマをする)職員になっていくのではないか。
 B労働意欲の低下につながる−「客観的で信頼性の高い人事情報による公正な人事管理」「職員のモラル・士気向上」と謳われている。しかし残念ながら、所期の目的に反して職員の労働意欲は低下していることは、政策推進課のアンケートによっても明らかであった。そうした状況に加えて、公平性や信頼を失わせる行為を人事当局が行ったことは、日々、一生懸命働いている職員の気持ちを裏切るものであり、人事当局に対する不信と労働意欲の低下は計り知れない。
 C未払い賃金の発生−管理職の一部に必要以上の勤勉手当を支給したことは、本来、正しく評価されることによって最終評価が変更されることになるであろう管理職員以外の職員の利益を損ねたことになり、同時に未払い賃金債権を発生させてしまった。

 6、現業労働組合は裁判闘争を検討

 措置要求対象外である現業労働組合は、@評価5及び4を決定する際に「管理職は端数切り上げ」にもかかわらず、現業職員に限っては「端数を」切り捨てており、現業差別ではないか、A本来5の評価を受けるべき者(現業の評価4の者で、最上位の点数の者)から未払い賃金の請求を行えるかどうか、以上の点から弁護士と裁判闘争を相談中である。
 
7、新人事考課制度からの教訓

 (ア)組合による点検活動の強化がお手盛りをなくす。
 *お手盛りや差別的取扱いを許さないためにも、できるだけ細かい資料の提出を要求する(個人情報保護を理由に断ろうとする)。
 *組合員から給与ばかりでなく、評価内容の開示同意を取り付ける。
 (イ)当局の裁量可能な範囲を少なくさせる。
 (ウ)新人事考課制度を是とした上での手直しでは、闘いきれない。
* 能力実績主義に基づく賃金は、究極的には労働者の団結よりも他人との競争を奨励し、勝者(支配する側)にだけ都合の良い思想であり、この思想との対決を通してこそ、働く者の人間性が確保されるのではないか。


【資料】

措置要求書

                            平成16年3月15日
 三条市公平委員会委員長
       ア山 興紀 様

         措置要求代理人 
         措置要求代理人 

 地方公務員法第46条の規定により、下記のとおり措置の要求をします。

                          記

第1 措置要求者及び代理人の表示
   別紙「措置要求者及び代理人目録」記載のとおり

第2 措置要求する内容
 1 課長補佐以上の区分で「被評定者の評定上位3%以内」を超えて評語5を受けた者及び「被評定者の評定上位10%以内から評語5を付与した評定者を差し引いた数以内」を超えて評価4を受けた者の評定を新人事考課制度で定められた内容に基づき正しく最終評価をし直すこと。
 2 1によって生み出された勤勉手当の原資額の範囲内において、課長補佐以上を除く職員の最終評価を見直し、成績率の変更によって生じた勤勉手当の差額(未払い賃金)を支給すること。
 3 少なくとも職位・職種・配点別に人数を明らかにするなどの情報提供を行なうこと。

第3 措置要求の理由
 1勤勉手当の成績率の決定方法
 勤勉手当の成績率の決定にあたっては、組合との合意に基づく新人事考課制度評定者マニュアル(13年10月改正、資料1、以下「マニュアル」という。)により実施してきた。そのマニュアルの5ページの「3 被評定者及び評定者・調整者(2)職位・職種の区分」を見ると「成績率を設定するため、職位・職種につき次のとおり8つの区分を設定します。それぞれに区分の中で、成績率の配分を検討します。」とし、「部長級」「課長級(主幹含む)」「課長補佐級(参事含む)」「係長級(副参事、主査含む)」「係員級」「保育所長・児童館長」「保育士、幼稚園教諭」「技能労務職」に区分されている。
 そして「評語5」については、「被評定者の評定上位3%以内」で成績率100分の70、と定めている。また成績率100分の65の「評語4」については、「被評定者の評定上位10%以内から評語5を付与した評定者を差し引いた数以内」としている。なお注意書きによると「成績率の計算にあたっては、各部局(課)単位の縦割りではなく、各職位や職種間という横割りで行うこととする。」と定めている。
 なお、2003年人事院勧告にもとづき勤勉手当が条例改正されたため、「評語5の成績率は100分の80」に「評語4の成績率は100分の75」に変更された。

 2 「平成15年12月期勤務評定5段階評価の配分表」について
マニュアルに基づき成績率が定められ、2003年12月10日に勤勉手当が支給された。そこで政策推進課が三条市職員労働組合及び三条市現業職員労働組合に提供した「平成15年12月期勤務評定5段階評価の配分表」(資料2)によれば、「評語5」の課長補佐以上の者のグループにあっては5人となっており、定められた「3%以内」をはるかに超えた配分割合(6%)となっている。また、「評語4以上は10%以内」と定められているにもかかわらず、課長補佐以上の者のグループは、それを上回る人数(10人)及び配分割合(11.9%)となっていることが明らかになった。
 そこで更なる事実関係が必要と判断し、12月10日に詳しい資料を要求したが、年を越えても提出がなかった。そのため1月9日の団体交渉で、資料提出を催促したところ、「出せるかどうか検討している。その結論がいつになるのかは何とも言えない」などと不誠実な対応に終始した。交渉責任者である政策推進課長の団体交渉時のこうした態度は、あいまいで消極的であった。むしろ、かえって何か隠すべきもの(労働組合や職員に知られたくない何かの事情)があるのではないかという疑念を逆に抱かせるものであった。(その後、1月15日には「開示できない」回答があった。)
使用者の責務として我々の疑念を晴らす意味でも、少なくとも職位・職種・配点別に人数を明らかにするなどの情報提供が必要といえる。

 3 12月10日に支給された勤勉手当の不当性について
 (1)地方公務員法及び条例に違反しているのではないか
「三条市職員給与条例」に基づき「三条市職員の期末手当及び勤勉手当支給に関する規則」が定められている。その第14条において、一定の割合を超えない範囲内で勤勉手当の成績率を「市長が定める」とし、それに基づき成績率決定のための手順がマニュアルに定められている。このマニュアルは人事当局が改定し、職員に周知したものである。にもかかわらず、人事当局自ら、この取り扱いに違反して、一部の管理職員に対してのみ勤勉手当を必要以上に支給したことは、いかなる理由があろうとも許されるものではない。
また、このことは「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」(地方公務員法第24条第6項)及び「給与に関する条例に基づいて支給されなければならず、又、これに基づかずには、いかなる金銭……も職員に支給してはならない。」(同法第25条1項)に反しているのではないか。
 (2)成績率決定にあたっての差別的取り扱い
資料2によれば係長・係員・保育所関係職員は評価5が1.6%、評価4以上が6.7%  となっている。また技能労務職員は評価5が0%、評価4以上が7.7%となっており、課長・課長補佐グループ以外は極めて厳しい評定結果となっている。
 係長・係員・保育所  関係職員、技能労務職員への評語5及び評語4の配分は定められた範囲内にあるものの、課長・課長補佐グループと比較して不自然である。一部管理職に対してだけ、制度に反して必要以上に勤勉手当を支給したことは、まさに「下に厳しく上に甘い」「お手盛り」「恣意的運用」と言われても仕方がなく、公平性や透明性を自ら歪めてしまった。
 こうした不平等な取り扱いは、憲法第14条の「すべて国民は、法の下に平等であって…社会的身分…により、経済的又は社会的関係において、差別されない」及び地方公務員法第13条の「平等取扱の原則」に反して、不当かつ差別的な取り扱いであると言える。
 (3)一部管理職員へのお手盛りによって、職員が蒙った不利益について
勤勉手当の計算は、原資となる職員全員の支給額総額が先に決定される。簡単にいうと所属全職員の基準日現在の給料、扶養手当及び職務別加算額の合計額に100分の70を乗じた額が12月分の勤勉手当の支給額となる。ところが勤勉手当の個人配分にあたっては期間率と成績率が用いられる。
 したがって、勤勉手当の総額は最初に定められているため、勤務期間が不足する者の減額分や評語1や評語2の者の減額分によって生み出された額分を、評語5(100分の80)や評語4(100分の75)の者へ配分を行うことになる。
 このことからすれば、マニュアルの定めに違反して管理職の一部に必要以上の勤勉手当を支給したことは、本来、正しく評価されることによって最終評価が変更されることになるであろう管理職員以外の職員の利益を損ねたことになり、同時に未払い賃金債権を発生させてしまった。
 (4)新人事考課制度への信頼を失わせしめた責任の重さについて
 新人事考課の目的は、「客観的で信頼性の高い人事情報による公正な人事管理」「職員のモラル・士気向上」とうたわれている。しかし残念ながら、所期の目的に反して職員の労働意欲は低下していることは、政策推進課のアンケートによっても明らかであった。そうした状況に加えて、公平性や信頼を失わせる行為を人事当局が行ったことは、日々、一生懸命働いている職員の気持ちを裏切るものであり、人事当局に対する不信と労働意欲の低下は計り知れないし、その責任は非常に重いものである。

【資料】
新潟県地方労働委員会
会長  西野喜一     様
                         申立人
   不当労働行為救済申立書
 労働組合法第7条2号違反について、労働委員会規則第32条により、次のとおり申し立てます。
第一 請求する救済の内容
 被申立人三条市は、申立人自治労    組合との間における平成15年10月1日に実施した新昇格運用基準の実施及び見直しにかかる団体交渉について誠意をもっておうじなければならない。
との命令を求める。
     
  (以下省略します)

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