戻る


 「業績評価制度」という労務管理方式を官民とも導入しようとしている。しかしコンサルタントが言う「一人一人の能力向上と生産性の向上」を目的にしたものとなっていない。人事当局の制度そのものに対する研究が不足しているからである。そして目的は財政再建・賃下げにある。これでは本来の県民サービスや績向上どころか、行政の停滞・沈滞が進む。県民に対する無責任幹部が多数存在していることを示している。財政危機は幹部職員の怠慢や議会・知事の無計画さが生んだものであり、一方的にそのツケを一般職員や県民に押し付けるのは不当である。

業績評価制度の導入をどう考えるか?
                                                    2005.11

 はじめに
 富山県では、2003年秋闘で、業績評価制度を導入することを労使が合意して以降、労使間での協議や2004.10〜12.の期間で本庁・出先機関の14職場で試行実施がなされた。いま、その試行実施を踏まえて、2005年度における業績評価制度の全職場での試行実施が始まっている。現在行われている『業績評価制度』の試行段階での問題点と課題をより明確化するために業績評価制度研究会を職場段階で立ち上げた。

 研究会では、下記の4つの課題を整理するとともに、職場への全体化をはかり、今後の取り組みにつなげたい。まずは、『業績評価制度』に対する基本姿勢を明確にすることである。「業績評価制度の導入に反対」し、賃金査定への連動反対、相対評価反対等々である。

【研究会で整理する4つの課題】    1「業績評価制度」の導入の経緯と当局の狙い  何故今、「業績評価制度」なのか、県当局の考えは  県が考える制度設計とその問題点は 2 昨年実施した14職場における業績評価制度の試行実施で明確になった問題点は何か? 3「業績評価制度」とは何か? 先行して導入実施されているNTT職場等民間の現状は?   4 私たちの課題は何か。
 
公務員制度改革としての『能力主義の給与・人事評価システム』はどう位置づけられるか?

【従来の公務員の給与体系】
 1 職務と責任に応じた格付け 2 国と他の都道府県との均衡 3 民間企業の給与水準の反映⇒ 年齢、職務が同じなら金額は一律で、年齢とともに給与が上昇する。

【業績評価制度の導入に際する県当局の問題意識】
@ 現在国においては2006年度を目標に新たな人事管理システムを整備するとしており、国の制度
改正に合わせて、能力重視や成果主義に基づく給与体系を導入する。
A 業績のあった職員や労苦のあった職員に対応できていない従来の勤務評定を見直し、やる気のある若手を登用する。
B 質の高い行政サービスを提供するために能力・業績を的確に反映した人事評価制度を確立する。
C 制度の目的は、ア効率的・効果的な仕事の進め方 イ職員の能力・意欲向上である。
  ※ 先進の鳥取県では2004年度から導入済。Eランク評価で「自己都合」退職に追い込まれる職員も発生。

○昨年実施した14職場における業績評価制度の試行実施で明確になった問題点は何か?
 {2004.10〜12月における試行対象とされた職場}
  (本庁) 経営企画部・管財課・集中車庫・広報課  生活環境部・環境政策課
  厚 生 部・食品生活衛生課  商工労働部・経営支援課  農林水産部・農村環境課   土木部・下水道課  議会事務局・総務課  出納事務局・出納課   人事委員会
(出先) 富山土木センター・道路維持班    新 生 園     中央病院

※当局が言っていた「試行によって把握したいポイント」
@ 実効のあがるものなのか?そうでないとしたら、制度のどこに問題があり、どう見直せば良いのか?A このような業績評価制度を導入するにあたり、現在の仕事の進め方をどのように変えていく必要があるのか?B ないと不安に感じる仕組み、例えば不服申し立て制度や360度評価などが必要でないか?※2005.9月試行では「苦情処理制度」に改変。C 事前に修得しておくことが望ましいスキル(技能、技術)があるのか?D 手引きに説明が不十分な部分があるのか など

当初立てた問題意識は
Q1・基本システム設計上の問題点は?
  第一評定者を組合員である班長・係長等としていることをどう考えるか?
  事務分担表を基準として進捗目標を設定することについて
  全てを数値化して評価することの妥当性・客観性はどうか
  期首と期末の面接の時間はどれくらい見込むのか?また、期末での面接を通して評価が動く可能性はどの程度見込めるのか?
 (想定される問題点)
@管理職の評価スタンスが問題    管理職自身こそが厳しく評価されるべきである。
       ましてや一部に問題を指摘される管理職が存在する。そのような人がとても「客観的な」評価を下すとは思えない。
       年功序列型管理職の資質
A 目標管理制度自体が持つシステム上の欠陥
・ 目標が数値目標化できる⇒人事、経理、生産管理等の職種では、ルーチンワーク(決まりきった仕事)が99%を占める。
⇒共同作業部門ではチームワークが破壊される。
   ・ 目標のハードルが同じ高さ ⇒担当ごとにてんでばらばらな業務内容であり、結局は担当業務毎の重要度という「裏の基準」で目標設定段階であらかた勝負は決まってしまう。
・ 常に目標が現実にマッチしている ⇒ 目標は常に変更になる。
・ 評価の際に達成度だけで絶対評価が可能(「絶対評価」か「相対評価」か)
⇒ 人事部の立場から言えば、「選抜」をきちんと行い、なお人件費の予算枠を守るために各評価者に相対評価を強制せざるを得ない。そんななかで、従来の年功序列制度と同様に上から一方的な評価が降ってくる。
⇒ 絶対評価による評価インフレとパイの奪い合い
B 年功序列型組織の構造的な問題

Q2.何故、新たな業績評価制度なのか?これまでの人事評価制度はどのような内容で、どのような点に問題があったのか?
・ 五段階の相対評価、各段階への率の割り振り
・ 自分で考えて部下を評価することのなかった管理職と管理職のために評価の基準を作り当て続けてきた人事当局
・ 反論機会のない「結果の事後通告」
・ 個人の成果を測定する習慣も明確な評価の基準も「年功序列型組織の中で形成されてこなかった。」
Q3.それを今回の制度でどのような点で改善を加えようとしているのか?
◎ 14職場試行ではどのような問題が健在化したのか?
◎ 全職場試行でどういう問題点を出すのか?
◎ 組合の方針は?

Q4.種々の問題意識
◎どのような職場の実態になっているか
◎「事務分担をベースに目標」は立てられるか? 何を目標にするのか?
◎何で班長が評価者か
◎管理職はどのように評価される?
◎成果はどのように評価されるか?
◎「苦情処理」は機能するか?

Q5.私たちの課題は何か。
主題 「業績評価制度」の問題点と私たちの課題を整理する。

 二 第一評定者の討論会からだされた問題点
T 『業績評価制度』の試行時期の問題
  被評価者の理解を深め、評価者の負担軽減のためにも、被評価者への説明は丁寧に(昨年1・5h)
  また「少なくとも1年の業務の流れで試行が必要(3月の全職場試行である程度習熟後、年度1年を通しての試行期間が必要)である」と整理してきたが、受け入れられたのか?
そもそも短い試行期間では、問題点の全部が出るし、把握できるわけではないので、年間を通しての試行が必要である。
農地林務事務所でも土木センターでも9月も過ぎ10月に入れば業務の発注はすでにその多くを終え、9月から12月までという試行期間では「現場監督・指導等」が主業務になり、設計書の作成等の多くは目標設定には入らない。

U 人事課の進める『業績評価制度』の設計システムの問題点
1 目標設定について  「事務分担」を機軸に目標を立てることの戸惑い
 ・期首段階で、組織業務マネジメントあるいは個人業務予定にどのような目標を上げるのか?
@「事務分担」での目標設定には無理がある。事務分担は仕事の100%が網羅されているわけではない。
A向こうからやってくる苦情等の仕事にはあらかじめの目標「予定」はない。どのように評価するのか?
Bルーチン・ワークは目標からそもそも除くべきである。定常業務にそもそも未達成があってはならない。定常業務に評価制度は必要ない。しかもやって当たり前で、評価は標準の20点にしかならない。

・農地林務事務所事務次長会議が9日に開催されて4農地林務事務所の総務・用地班の「組織業務マネジメント」の統一が図られた。

2.ウエイト付け段階で混乱
・ウエイトのトータルは100%にしなければならない。理屈論理として数項目の目標設定であり、業務内容すべてを網羅した100%のウェート付けとはなり得ない。
 ・個々人の経験を考慮しなければならないし、ウエート付けは難しい。
 ・苦情処理業務のウェート付けはどうなるのか?
・評価者が部下のスタートラインの位置の差をウエート付け数値化することになる。
・各自目標設定されて業務に邁進する中で、これまでの協力体制や、係や班として皆で達成しようとなるか。また担当が出した評価を面接でやり取りするので場合に寄れば、評価者と被評価者に不信が生じないか。組合員同士で軋轢が出ないかという危惧がある。

3.仕事の量(密度)が反映されない
 ・ルーチン業務であっても量が多ければ大変であるが、そのことが評価に反映されない?
 ・事務所の規模や業務量の違いは、この制度では表れない。
同じ業務でも、富山土木センターとそれ以外の事務所では、それなりの人が配属されている。
評価制度のウエイト付けと人事課の有している秘密部のウエイト付けは違う。
 ・個々の職場に応じたルーチン業務版の評価制度とし、同種の業務であれば、標準作業量を基準として量を反映させる整理が必要ではないか。

4.「難易度」の客観的判断は?
・「年齢・経験を問わずその部署での客観的評価」というが、年齢や経験等によって仕事の難易度は変化する。経験のある業務は難易度は標準(V)でも、経験がなければ困難業務とならないか。
 それが、数値評価に反映されるので、数値手直しの作業がどこかの段階で生じることにならないか?

5.本人の努力の過程が反映されない仕組み
 ・同じ目標の業務でも、努力をして未達成、たいした努力をしないで達成(能力に差があるということだが)、努力したことを反映させて意欲醸成に繋がる。
 目標に対しての達成度での評価だけでなく、未達成・達成に関わらず、本人の仕事に対する姿勢や努力などについて評価できるようにすべきである。

6.「観的な評価」の確立ははたして可能か? 混乱と疑惑
【判断基準 ものさし】
・難易度・達成度・貢献度には主観が入らざるを得ない。
⇔厳密に評価基準を設けるということもあるが、逆に基準を曖昧にしておくということもある。
 評価の基準は、個々人の主観に任せてもらったほうが良い。皆がんばっている。皆同じ点数にすれば良いのではないか。現業はその方向で整理している。

、また、評価段階でほぼ達成と未達成、難易度、貢献度の基準モノサシが曖昧(同種職場での一致、部内での一致が必要)。
・(職訓)訓練指導の評価は、職セが6ヶ月訓練、技術専門学院が2年制と訓練期間も異なる。どのような基準を設ければいいのかわからない(3職セ・技専で統一したものが必要)。

【制度運営のあり方について】
・「所属内で評価が完結、所属間のレベルあわせはない」という人事課は説明するが、そのようなことは考えられない。結局本庁優遇ではないのか。人事課は「フル・オープン」というが、例えば土木事務所間や農地林務事務所間のウエイト付け・偏差値は明らかにしていない。ブラック・ボックス部分である。
・相手の出方で達成できるもの、できないものがある。難易度で調整するのか。
・事務分担で既にスタートラインが違う。不平等。担当したい業務、したくない業務の取り合いになる。
 ・ルーチン業務にこの『業績評価制度』はあわないし、導入しなくていい。どうしてもなにがなんでも
導入したいというのであればルーチン業務に応じたルーチン業務版マニュアルを作るべきである。
⇔ 人事課が示した『業績評価制度試行のための事例集』には、内部管理業務として庶務(給与・支払)課内予算の例が示されているが、庶務業務(給与・旅費・支払)の難易度は「標準」なので、できても20点にしかならない。出先機関の庶務の業務内容は「標準」に位置づけられることになる。一方で、本庁で行う予算編成業務は「やや困難」となっており、スタートですでに差ができる。

・所属内で完結する評価基準では公正な評価制度とはとてもいい難い。本来ならば県庁全体で一つの物差しであるべきであるし、本来それを追求すべきである。
しかし、物差しの統一は難しい問題である。「評価のモノサシを統一するとすれば、まずは同種業務所属間、部内、県庁全体へと基準の統一をする必要がある。しかも「モノサシが仮に統一されたとしても常に見直しが必要である」というが、そもそもモノサシの統一は可能なのか?評価者の主観を完全に排除できるか?公務職場の業務の質が常に変化する中にあって統一ははたして可能か?常に評価者被評価者が入れ替わり異動する中でそれは可能なのか? 統一するためのマニュアルの作成、見直し作業の労力だけが増えていかないか?

・ この制度が動き出せば事務所の課長は必要なくなるのではないか。班員の第一次評価者は班長で最終評価者は次長、班長の第一次評価者は次長であり、最終評価者は所長となっていて、管理職となっていない出先機関の課長は飛び越えられている。
・「業績評価の手引き」の管理職バージョンは、オープンにされていないのではないか?管理職はどのような目標をたて、どのように評価がなされるのか?
・人事課は、期中での項目追加可能、ウエイト変更可能と言っている。点数が操作できる意味のない制度だ。「どうせやるのなら少しでも良い制度にした方が良くないか?」と人事課に言っても「そう思うが、上の人がどうしても入れろと言っている。」と。

7.事例などの豊富化が必要
 ・『業績評価制度試行のための事例集』の事例がまだまだ少ない。特にルーチン職場の目標設定・達成度・難易度・困難度について事例を豊富化することが必要である。

8.「成績の本人開示」は管理職の責任で
・ 本人開示は、管理職がすべきである。(部下の育成に最終的に責任を持つのは所属長)。
・出先の場合、第一評価者は班長で、最終評価者は次長。出先の課長は必要なくなるということか?
・『『組合員が組合員を評価」するのはおかしい』と地区から言っているが本部は受け止めきれていない。従来から「本庁では組合員が勤務評定をつけている」という常識のためか、組合本部は問題認識をもたない。

 目標を設定し、進捗度を管理し、達成度・難易度・貢献度を検証するのは直属の上司であっても、本来、部下の育成は管理職の仕事である。
最終評価の本人開示は、所属長か若しくは管理職がその責任で行うべきである。

V 職場への負担増 検討課題
1.負担増問題
 ・人事課は、当該制度の試行実施に伴い、「時間外が増加する」など職場に負担がかかることを認めているし、評価者個々への精神的負担も認めると言っている。
 ・また一人が、多くの職員を評価しないといけない実態も職場によっては生じることを認めている。
いずれにしても業務や負担が増えるのは大変ということがある。
 事例の豊富化や、評価基準の統一など、職場の負担軽減について常に追及することが必要ではないか。

2 時間外勤務手当については完全支給を  請求もきちんと運動的に取り組もう。
 (要求)制度の試行にかかる時間外労働に対する時間外手当は予算措置すること。
・人事課は業務の一環だから面談なども時間外手当全額支給というが、その前に人事課に時間外予算要求の説明をしたくない管理職等が「なぜ時間外が増えたのか」などがしつこく聞いてくる事態が想定され、結局、予算要求が人事課に上がりきれない実態も生じるのではないか?
・人事課も所属から時間外の請求がないことを分かっているから、交渉では「(請求のあった)時間外は全額支給」と言うのだ。
・職場で組合員がきちんと時間外をした分については、時間外手当を請求するという職場からの運動が問われることになる。組合運動としてこのことを展開する必要がある。
・農林では、今回の『業績評価制度』試行にあたり時間外の増加が想定されるので、1,000時間・前年比の10%増の時間外手当を人事課に請求したことも全体化を図ればいい。

W 全職場試行実施に踏み出すための留意点は?
1  試行段階での組合の基本スタンスは?
@ 当局が示した『業績評価制度』には大きな問題があるので、組合としては、事務分担を基に目標設定し、評価する」という人事課策定の『業績評価制度』システムに対する問題点の検証と改善要求を推し進め、技術的な改善要求等を行うなかでこの『業績評価制度』の形骸化をめざし、『業績評価制度』の持つ毒素を薄め、無害化することをめざそう。

A また、『業績評価制度』という新たな業務量の増加による労働加重(負担)を軽減させることと。制度の負担を軽減させるためには、 ア ルーチン版マニュアルをつくる イ 目標設定や評価の基準についてマニュアル化する ウ 評価基準(物差し)を曖昧にするまたは幅を大きくする ということで、負担軽減する。

B 処遇への反映は、この制度による賃金差別(処遇の反映)は絶対に認めない(あるいは反映する範囲を小さくなど)。
ア 反映しない範囲をいかに大きくさせるか イ 現在の勤務評定で行われている処遇差別の範囲内にとどめさせることではないか。

2 全職場試行で何を問題にするのか?
 評価の物差しをあいまいにし(曖昧という物差し)、「誰が見ても優秀」「普通」「誰が見ても悪い」程度がよいという考え方もある。例えば「達成」「ほぼ達成」「未達成」で良いとしておき、はっきりした線引きを敢えてしない。10点から80点は経験や年齢・個性の範囲内であり気にすることはないことを、当局にはっきり表明させれば、評価者と被評価者の負担と不安を軽減することにならないか。現業協が議論しているように、組合としてはこの制度を形骸化することをめざすという選択枝もあるのではないか。
 ・「被評価者への説明は、十分に時間をとってやってほしい(評価者の負担軽減)」といっていたが、結局は1時間強程度。時間が足りず不十分である。人事課としてはともかく職場に説明したという既成事実づくりか?

3 解決すべき障害のハードルを高く設定することに全力を
現時点で『業績評価制度』の全職場試行を判断せざるを得ないとしても、組合としてこの全職場での試行にどのようなスタンスで臨むのか?が大きなポイントとなる。

 それは、試行の中で人事課の考えている『業績評価制度』の矛盾や問題点をできる限り顕在化させることで、このまま速やかに次の段階へと進ませないよう解決すべき事項を多く取りまとめた上で、次の段階へ進むことでの障害ハードルを高く設定することに全力を傾注すべきである。
・ 組合本部は「問題点を書いてくれ」と『業績評価制度全職場試行問題点記入カー
ド』形式を作成し職場におろしているが、今の状況下でどれだけの職場から集約できるのか?
 それよりも職場にいる各級役員がそれぞれ個々の職場の具体的ないろんな角度からの意見を聞き取り、メモして本部へ伝えるほうがいいのではないか?そうして掴んだ具体的事例や事実を人事課に突き付ければ、おそらくは納得のいく答えはいえないだろう。そうすることで、次の段階に踏み込ませない歯止めが、高いハードルができるのではないか?

4 当局のこだわる「本格実施」に対して
 処遇への反映は、この制度による賃金差別(処遇の反映)は絶対に認めない(あるいは反映する範囲を小さくなど)ことである。
ア 反映しない範囲をいかに大きくさせるか イ 現在の勤務評定で行われている処遇差別の範囲内にとどめさせることではないか?

X 今後の課題
1 評価の偏りが大きく懸念
 「評価が職場単位で完結」としているが、処遇に反映される場合にあっては、評価結果が部に上がり、部から人事当局に挙がり、そこで処遇への反映が判断されることとなる。その際かって「特別昇給制度」がそうであったように、人事課や財政課等に在籍する職員はA評価、あるいは部の連絡課や本庁の一部に処遇反映が偏り、出先機関等に所属する職員の評価がどうなるのかという、偏らないのかという危惧がある。
「透明性・納得性」といったところで、本人開示は、所属機関での評価結果のみであり、あとはブラック・ボックスの中での「処遇への反映」であり、6月・12月の一時金の支給時や1月の昇給時に初めて「自分がどのような評価されたのか」がわかるのである。
庶務担当者から「この制度で給与の昇給等に大きな差ができるのならその内容に触れる事務担当は管理職でやってほしい」という声がある。
 このような『業績評価制度』の運営は、絶対に認められるものではない。

2 青年部の課題
青年部の課題は、チャレンジ研修や業績評価制度により、50代の人たちは、現給保障で今の水準を確保されるが、20代、30代、40代の人たちがまともに影響を受けることになり、県庁生活をこのような制度の元で送るのは、大変だと思う。
 何のためにこの『業績評価制度』が導入されるのか?についても不満を持つ青年がいるのでないか?せめて役員だけでも評価制度について話し合う機会を持てばいいのでないか?


三 2005年度人事院勧告・県人事委員会勧告の問題点(抜粋)
2 勤勉手当への反映

6月期 12月期
2005年度
 期末手当 1.4月(支給済) 1.6月(改定なし)
 勤勉手当 0.7月(支給済) 0.75月(現行0.7月)
2006年度
 期末手当 1.4月 1.6月
 勤勉手当 0.725月 0.725月

※ 1 2006年度以降の勤勉手当は勤務実績の拡大により実質0.71月となり、
その差分の0.03月は、下記の成績区分「特に優秀」「優秀」の原資に充当になる。

 【成績区分】

成績率 人員分布比
特に優秀 145/100以下  86/100以上 5%以上(10%程度)
優  秀 86/100未満  78.5/100以上 25%以上 (30%程度)
良好(標準) 71/100
良好(標準)未満 71/100未満


  ※()内は特定幹部以外の職員   ※「特に優秀」や「優秀」の基準がなんら示されていない。

3 昇給への反映 2006年版俸給表から

昇給区分 極めて良好 特に良好 良  好 やや良好でない 良好でない
昇給幅 8号俸以上 6号俸 4号俸 2号俸 昇給なし
初任層 20% 絶対評価 絶対評価
(〜新2級) (「極めて良好」5%以内)
中間層 5% 20% 絶対評価 絶対評価
(新3〜6級)


 ※給与区分を4倍に細分化し、「実績」に応じた昇給差をつけやすくする。
 ※昇給時期を1月に統一。勤務成績の判定期間を前年の1月1日から12月31日とする。


四 問題点と課題の整理
1 事前研修が不十分     班員の全員が受けられたのか?
また時間的に不十分で一方的な話で終わっていないか?
「質問を出したが、答えが返されていない」という声がある。

2 人事課の思うような『業績評価制度』の試行になっていない実態
《「面談」がなされていない》   なぜか?
  人事課は制度設計をして民間講師が面接手法等を時間をかけて説明する。しかし試行段階で今のところ研修した「面接」が生かされていない、面談がされていない実態がある。その原因は?「仕事が忙しく、面談に充てる余裕がない」
  「班長は班員の仕事を詳しくわからないので、何を聞いていいのかわからないし、せいぜい仕事の中
身のヒヤリング程度で終わる。」
  面談は大事と言うが、面談する評価者も仕事の内容に熟知していないと仕事の困難度やウェート付けがわからず、何を面談していいのか戸惑う。したがって面談抜きに試行に入っている職場が多い。
  「困難だ」と面談者に強く主張すればそれがとおることにならないか?

≪その他 出された疑問点・問題点・意見等≫
・ 期末ぎりぎりに成果をあげたらその業績は評価に反映されるのか?ましてや4月に異動したらどうなるのか?
・ 期間内に成果を挙げられず異動で替わり、後に成果があがったらその成果の評価は後から来た人につくのか?前任者につくのか?
・ 試行の3ヶ月足らずで何をするか目標にして試行し、どのくらい進捗したかで評価する?
・ 新たな目標・仕事ができれば期中・期末で目標の変更やウェート付けの変更が可能というがそれなら何でもありではないか?
・ 点数の高い仕事にウェートをかかればおのずと点数が高くなる。そういうことでは余計な仕事をしなくなるのではないか?三遊間ゴロは誰も取らない。
・ 如何に点数をあげるかに問題意識が行ってしまう。「困難業務」といっても他人から見れば低く評価されるかもしれない。
・ 評価で差をつけて給与に差をつける。点数をとることばかり気にする職場がつくられないか?そのことは本当に「質の高いサービスの提供」につながるとは思えない。
・ 要領で言っている「質の高いサービス」提供と個人の点数が高くなるということは相反するのではないか?点数が低くても県民にとっては必要なサービスが存在する。
・ 今回は半年仕事をしたから中身がわかったが、4月に替わってきたばかりの人では果たして判るのか?3月に作って異動の際に引き継がないと目標の立て方が判らない。
・ 「困難」「やや困難」は自分自身が自己評価するということでいいのか?
・ 点数の高い職場は『業績評価制度』は賛成、低いところでは絶対反対となる。本庁は賛成ということになるのではないか?
・ 点数をつけるにしても点数の上限と下限の範囲を決めるべきではないか?
・ なぜ差をつけるのか?人事課はともかく点数化したい。では本庁の30点と出先の30点では同一なのか?人事課の見解を求めても出てこない。
 期末の評価段階で多くの問題点が出るのではないか?
  出先の30点と本庁(人事課)の30点ではおのずとその重みが違うと整理されるのではないか?
部署間のランクウェート付けは非開示とされてしまうのではないか?
点取り虫の育成促進になる恐れがある。それで良いのか?
  70点、80点という評価は困難な仕事がほとんどのウェートを占めないと達成しない。
  出先では企画立案の仕事がない。
  本課のための制度ではないか?人事課・財政課など3階族はどんどん上がる。
  ルーチンワーク中心の職場と企画立案中心の職場ではそもそもスタートラインが違う。
  こんな制度で「人材育成を行う」と果たして言えるのか?人事課の建前ではないか?
 誰かが上がれば誰かが昇給延伸になる。

  『手引き』には組織の目標達成に個人がどれだけ貢献したのかとある。組織の目標に対して、個人がどれくらい貢献したかを点数化する制度になっていると「手引き」に書いている。
  評価点数が70点、80点ということになるには困難な仕事がほとんどでないと到達できない。


こんな制度で本当に良いのか?
   事務量の多い少ないはこの制度に関係がない?多ければ計画段階で「できない」としておけば良い。
   「率」か「金額」かは「組織マネジメント表」で設定が決まる。
   「一人500件がノルマなら自分はできない」とすべき。その分は人事配置の問題なる。人事課の課長補佐も「業務量の問題は人員配置」と言っている。
   「500件以上はやらない」と言うのがこの『業績評価制度』ではないか?
   自分の仕事についてどうやったら評価点数が高くなるか考えた。自分の守備範囲をきちんと決める制度である。
   『業績評価制度』とからむ人勧が出たが、試行中の制度がそのままに本格実施に入るわけではない。
   自分の事務分担をベースに業務目標を立てると言うが、総合県税事務所はスタートしたばかりで事務分担もまだきちんとしていない。
   通常業務をコナなして突発的なイベントもやり遂げたら「よくがんばったボーナス」ぐらいほしいと思うが、この『業績評価制度』はそういうことを評価しない。
   この制度は人事課が考えたものなのか?であれば制度説明研修でなんで外部講師を呼ぶのか?
   NTTの『評価制度』は当初、本来業務をベースにしていたが、本来業務はこなして当然ということで問題があると言うことになり、今は本来業務ではないで営業成績や資格取得等になっている。
   民間委託講師は制度に今の民間の状況を反映させたいのでは。
  事務分担を元にするのはおかしい。事務分担はやって当然のもの。
  事務職の一人職場は誰にも教えてもらえない。隣の人に聞けない。
  「標準業務」ではやって当然、できなければ「未達成」でゼロ点になる。
  なにが「未達成」でなにが「達成」なのか?
  「未達成」になりそうなら期末段階で日程・目標・ウェート付けを見直して点数をあげることも可能な制度になっている。
  日報をつけているわけじゃないのにウェート付けの比重が大きくて点数が大きさ左右される。
 
点数はどうすれば高くできるかを人事課は説明していない。
わけのわからないものを点数化して意味があるのか?
  ウェートに進捗状況を掛けて何の意味があるのか?
  点数を取るために働き方が変わってくる。自分の目前に来たゴロは捕る。三遊間ゴロは関係ないから捕らない。
 『業績評価制度』における「個人業務予定表」は、一年間でこれだけのことをしますと契約をむすぶことではないか? それ以上のことはしなくても良いのか?行政が停滞しないか?
 点数を高くすればいいというのがこの制度である。点数を高くすることを目指せば行政が停滞するかもしれない。
 低い点数にしかならないけれども行政にとって必要なセクションがある。
 事前に「ここまでやったら達成」ということを確認しておかないといけない。期末になって「達成」や「未達成」を話し合うことがおかしい。最初の段階でどのような状態が達成かを確認しておく必要がある。
こんなことは「手引き」には示されていない。後で何とかつじつまを合わせようとなっている。
 こんな制度にどんな意味があるのか?このままで4年も5年も試行が続くかもしれない。
 人事課は「明らかに優秀」「明らかに劣っている」ことを客観的に見たいのではないか?そんなことは今まで勤務評定でやってきている。しかしそのうえでということは金と時間を賭けてその刻みをさらに細分化したいのではないか?
 今でも人事課は、丸秘データを持っている、所属はすでにランク付けされている。このことを公開するとはならない。人事課は示さない。
 植出経営管理部長がいう「一生懸命にやったものに報いる」とは「本庁にいるものに報いる」ということではないのか?

3 「仕事のやり方が制度導入で大きく変わる」(人事課)・・「そのとおり!」
 でも本当にそれでいいのか?
・ この『業績評価制度』によって職場でどういう働き方をしないといけなくなるのか?三遊間ゴロは誰も取らない。点取り虫でなかった人も点取り虫にならざるを得ない。
・ 小さな仕事は誰もやらなくなる。
・ 本庁と出先の関係はどうなるのか?
   本課は出先の尻をたたいて「いい資料を早く作れ」、出先は、「本課はより的確な指導をしろ」ということにならないか?
・ 他の職員の指導業務はもともとウェートが小さいので評価点数が低い。逆に低いから「やらない」事態が懸念される。
・ 点数を取るテクニックが、問題視される。
・ 職場での評価点数は本人開示されるが、しかしそれと昇給が良い・勤勉手当が多いこととは直接にはつながらない。最終的には必ず人事当局で一致のモノサシで修正がかかる。しかもそのモノサシは決して公表されないブラックボックスである。

4 労働組合としてどうすべきか?がぼやけていないか?
○ 業績評価は勤勉手当に反映、能力評価(勤務評定)は任用・処遇に反映」と当局が主張。
 人勧の査定昇給と『業績評価制度』は別物と当局は考えている?
 当初人事課と話したときは、今停止されている特別昇給を『業績評価制度』でがんばった人に充てたいといっていた。 県も特別昇給財源を3短などに使っている。それを今回から評価制度の処遇反映の財源に充てるので?
 査定昇給に関しての人事課の回答は現段階ではファジーである。人事課に回答を求めると「今のところ勤勉手当にのみ反映を考えている。」と。
 『業績評価制度』では、ABランクもそうだがむしろDEランクが職場であぶりだされることになる。鳥取県のように悪い評価を受けた人は職場に入れなくなるのではないか?
 一時金のために人事課はこんなに「金」と「時間」はつぎ込まない。
 組合は、「毒を薄める」といっているが、「毒をすでに飲み始めている」。 組合本部は「納得して差別される制度」の完成に向けて話し合っている。とりあえずやってみようと言うのはおかしい。スタートラインが違う、所属先で評価点数に差が出る。出先に行きたがらない、評価が高くなる企画立案部門に異動希望が多くなる、

・ 『業績評価制度』は大きな問題をはらむ制度であり、 多くの管理職から「組合は反対してほしい」との声がある。一方で組合は反対できなくて、『業績評価制度』を認める方向で動いている。何かおかしくはないか?
・ 先の中央委員会での本部見解は「管理職にも訴えながら」というが、組合本部の見解や運動の方向性が見えない。
・ これまで一番議論してきている本部が方向性を出して各分会に意見を求めるべきではないか?そうしないで職場に意見を求めると「賛成」「反対」に分かれないか?
・ この『業績評価制度』は問題であるので、@点数を大きく差をつけてそれで問題にするのか A現業のようにメニュウ化しみんな同一点数として問題を顕在化させるのかということか。
・ 組合本部でもこの『業績評価制度』を試行してみたら良い。そうすれば問題が把握できる。
・ 各個人の「個人業務予定表」をみせあい職場で討論すれば良い。そうすれば他者と比較して問題点がわかる。

5 われわれが制度試行で明確にしたい問題点は何か?
  組合としては試行に当たって職場から意見を求めているがなかなか上がってこない。方向性を示しきれないという本部の弱さがあるのではないか?
この研究会の場だけでも多くの問題点が出されている。組合として今すすめられている『業績評価制度』についてこういう問題がある、こう考えている、と言うことを明確に示して、職場でどのような問題が生じているか集約していくことが必要ではないか?
□ 試行における問題点の中間整理をしよう
@ 期首段階  面談がされていない実態のその原因
        第一評定者が何を聞いて良いかわからない。
        直接の担当者のほうが中身を良く知っている。質問するとしても業務の内容程度あり、突っ込んだ話ができない。
        職場が忙しくて面接の時間が取れない。
A 期中段階
B 期末段階(12月中旬)  個々で評定結果をめぐって問題がより顕在化するのではないか?