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武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案について

1 目的
武力攻撃事態等における特定公共施設等(港湾施設、飛行場施設、道路、海域、空域及び電波)の利用に関し、その総合的な調整を図り、もって対処措置等(事態対処法第2条第7号イ(1)及び(2)の措置並びに合衆国軍隊が実施する日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動並びに国民の保護のための措置)の的確かつ迅速な実施を図るため、指針の策定その他の必要な事項を定める。

2 対策本部長の責務等
対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るためには特定公共施設等の円滑かつ効果的な利用の確保が不可欠であることにかんがみ、(1) 対策本部長は、特定公共施設等の利用に関する総合的な調整を図るに際しては、国民の理解と協力を得つつ、適切にこれを行うものとする。
(2) 港湾管理者及び飛行場施設の管理者は、港湾施設及び飛行場施設を管理運営するに際しては、これらの利用に関する指針を踏まえ、対策本部長との緊密な連携を図りつつ、適切にこれを行うものとする。
(3) 指定行政機関、地方公共団体、指定公共機関及び指定地方公共機関は、対処措置等を実施するに際しては、対策本部長がそれぞれの特定公共施設等ごとに定めるその利用に関する指針を踏まえ、適切にこれを利用し、又は利用させるものとする。

3 港湾施設・飛行場施設の利用
(1) 対策本部長は、武力攻撃事態等において、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、特定の地域における港湾施設又は飛行場施設の利用に関する指針を定めることができる。
(2) 利用に関する指針には、特定の者の優先的な利用を確保する必要がある対処措置等の概要及びその期間等基本的な事項について定めるものとし、また、利用に関する指針を定めるに際しては、以下の手続等に従うものとする。(以下道路、海域、空域及び電波の利用に関する指針の策定において同じ。)
イ対策本部長は、利用に関する指針を定める場合には、関係する地方公共団体の長等の意見を聴くものとする。
ロ対策本部長は、利用に関する指針を定めるため必要があると認めるときは、関係する地方公共団体の長等に対し、必要な情報の提供を求めることができる。
ハ対策本部長は、利用に関する指針を定めたときは、関係する地方公共団体の長等に通知するとともに、公にすることにより国の安全が害されるおそれがある事項を除き、その内容を公示するものとする。
(3) 対策本部長は、特定の港湾施設又は飛行場施設に関し、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図る上で特定の者の優先的な利用を確保することが特に必要であると認めるときは、港湾施設又は飛行場施設の利用に関する指針に基づき、当該施設の名称、対処措置等の内容及びその期間等具体的な事項を明らかにして、港湾管理者又は飛行場施設の管理者に対し、特定の者に優先的に利用させるよう要請することができる。
(4) (3)の要請を受けた港湾管理者又は飛行場施設の管理者は、当該要請に関し、対策本部長に対して意見を申し出ることができる。
(5) 港湾管理者又は飛行場施設の管理者は、(3)の要請に基づきその管理する港湾施設又は飛行場施設を利用させる場合において、必要があると認めるときは、港湾施設又は飛行場施設の利用に係る許可その他の処分を変更等することができる。
(6) 港湾管理者又は飛行場施設の管理者は、港湾施設又は飛行場施設の利用に係る許可その他の処分の変更等をした場合において、現に停泊中の船舶又は駐機中の航空機の移動が必要であると認めるときは、当該船舶の船長又は航空機の機長等に対し、当該船舶又は航空機の移動を命ずることができる。
(7) (3)の要請に基づく所要の利用が確保されない場合等においては、事態対処法第15条に定める内閣総理大臣の権限(指示、国土交通大臣を指揮しての措置の実施)を行使することができる。(6)の規定は、この場合において準用する。
(8) 国は、(5)及び(7)の規定により港湾施設又は飛行場施設の利用に係る許可その他の処分の変更等が行われたときは、当該処分により通常生ずべき損失を補償するものとする。

4 道路の利用
対策本部長は、武力攻撃事態等において、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、特定の地域における道路の利用に関する指針を定めることができる。

5 海域・空域の利用
(1) 対策本部長は、武力攻撃事態等において、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、特定の海域又は空域の利用に関する指針を定めることができる。
(2) 海上保安庁長官は、海域の利用に関する指針に基づき、船舶の航行の安全を確保するため、特定の海域において船舶の航行を制限することができる。
(3) 国土交通大臣は、空域の利用に関する指針に基づき、航空機の航行の安全を確保するため、航空法に定める飛行禁止区域の設定等の措置を適切に実施するものとする。
(4) (2)の海上保安庁長官の処分に違反するような行為をした者に対する罰則を設ける。

6 電波の利用
(1) 対策本部長は、武力攻撃事態等において、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、特定の電波の利用に関する指針を定めることができる。
(2) 総務大臣は、無線局が行うイの無線通信のうち特定のものを、他の無線局が行うイ又はロに掲げる無線通信に優先させるため特に必要があると認めるときは、電波の利用に関する指針に基づき、当該特定の無線通信を行う無線局について、免許の条件の変更その他当該無線局の運用に関し必要な措置を講ずることができる。
イ事態対処法第2条第7号イ(1)若しくは(2)に掲げる措置又は国民の保護のための措置を実施するために必要な無線通信ロ電波法第102条の2第1項各号に掲げる無線通信(3) (2)のイに掲げる無線通信を行う無線局は、(2)の総務大臣の措置に基づき無線通信を行う場合を除き、(2)のイ及びロに掲げる無線通信を行う他の無線局に対し、その運用を阻害するような混信その他の妨害を与えないように運用しなければならない。

7 緊急対処事態における特定公共施設等の利用
政府は、緊急対処事態においては、これに適切に対処し、特定公共施設等の円滑かつ効果的な利用を確保するため、特定公共施設等の利用に関する指針の策定その他の必要な措置を適切に講ずるものとする。
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