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アメリカ発 食糧危機 原因はイラク戦争とドル安  大儲けの石油・穀物メジャー 世界に生存不安

 小麦、コメ、大豆、トウモロコシなど主要穀物価格が高騰し、世界的な食糧危機が到来した。

 この危機は、アメリカ主導のグローバル経済の特殊な一局面で、飽くことのない受益者がいる一方で、途上国の貧困調をはじめ飢餓の恐怖にさらされている人びとが増え、その数は8億5000万人。日本は自出貿易体制のもと、食料自給率30%、飼料自給率25%の輸入依存体質からの脱却へ、本格的な農業再建に乗り出すチャンスとしなければならない。

 世界は穀物争奪戦による修羅場の様相を見せている。保護主義が台頭し、昨日までの自由貿易体制が嘘のようだ。食料確保は国民生存の絶対条件であり、その可否は体制の存亡に関わるからだ。

 ロシア、中国、アルゼンチンなど11カ国が穀物の輸出規制に乗り出し、EU(ヨーロッパ連合)も輸入増を当て込んで関税の切り下げに入る。インド、ベトナムもコメの輸出を禁止、停止した。
 価格の指標であるタイ米の輸出価格は1年で2.5倍、世界銀行によるとこの3年間に主要穀物価格は8割方上昇した。

 争乱が同時発生

 この世界的な食糧高騰により、33カ国が社会不安を抱えるに至った。エジプトではパンの奪い合いで死者が出た。ハイチでは暴動が起き、市民と平和維持車が衝突しここでも死者が出た。

 そのほか、チュニジア、イタリア、モーリタニア、アフガニスタン、バングラデシュ、カンボジア、フィリピン、メキシコ、.エルサルバドル等で、食料を求め暴動、デモなど、争乱状態が世界中で同時発生している。

 日本の場合、輸入小麦の政府買入価格の上昇、大豆や飼料用トウモロコシの価格上昇を受け、パンやめん類、植物油、牛乳・バターが値上げされた。4入世帯で5000円近い支出増だが、今のところ暴動もデモも起きる気配はない。

 食糧高騰の原因

 食糧高騰の原因は言い尽くされている。中国・インド等の経済成長に伴う食料需要増、オーストラリアの干ばつ、原油高による生産・輸送コスト増、バイオ燃料需要増、資源・穀物市場への投機資金の流入、2030年には83億人ともいわれる人口増予測、などだ。

 だが、この間の経過を追うと、食料高騰を先導したのは原油高。1バレル=120ドルを突破したその原油高は、米国のイラク戦争が引き金となった。また、原油等資源や穀物の商品市場にヘッジファンドなど投機マネーの流入を促したのは、米国のサブプライムローン問題に始まった利下げ・ドル安だった。

 戦争と食糧不安という人類生存2大危機を招き寄せた主犯こそ、アメリカ型新自由主義経済なのだ。食糧危機が叫ばれるなか、石油、穀物・バイオ燃料・遺伝子組み換え各メジャーとヘッジファンドは大儲けで笑いが止まらない。そして、この儲けは還流し、米国金融を潤す仕組みだ。

 6月中旬に「食糧サミット」が聞かれ、7月の洞爺湖サミットでは食糧問題が主要議題に上り、食糧増産や価格安定ルールの策定が問題になる。

 しかし、バイオ燃料や遺伝子組み換え産業を国家利益とする米国スタンダードを押し付けて他国農業を潰すWTO・FTA体制を見直すとともに、イラク・アフガニスタンからの外国軍の撤退をセットで求めなければ、小手先の対策論議で終わるだろう。

                     (週刊新社会より)