焦点のテロ特措法

いかなる派兵・参戦も許すな

 第168臨時国会では、テロ特措法の延長問題が大きな焦点だ。海自による給油=参戦の内容が明らかにされ、米国によるアフガン攻撃の根拠、アフガン情勢、安保理決議と国際治安支援部隊(ISAF)の実態など、すべての検証が必要だ。

 先日、江田憲司衆院議員(無所属)が示した米第5艦隊のHPによると、インド洋に派遣中の海上自衛隊の艦艇が外国艦艇に給油してきた約38万klのうち33万kl(86%)が「イラクの自由作戦」にも従事する米第5艦隊に対するものと認めていた。日本政府が「テロ対策」と称しつつ、その内容をひた隠しにしてきた給油・給水の実体のごく一部が明らかになった。
 テロ特措法は、「9・11」直後に米国が始めたアフガニスタンへの「対テロ戦争」を支持し、海上自衛隊がインド洋で給油して後方支援するために小泉内閣が強行成立させた。
 米政府はこの戦争を「自衛権の行使」と称し、NATOは「集団的自衛権の行使」として参戦したから、自衛隊の行動が憲法違反の集団的自衛権の行使にあたることは明らかだ。
 政府は、対テロ戦争は国際的要請であり憲法違反ではないと強弁し、特措法にも「9・11」に関わる安保理決議を強引に援用した。だが、給油の相当部分がイラク戦争にも使われてきた事実だけでも欺瞞性は明らかだ。
 政府・自民党は臨時国会での野党の追及で同法の延長が難しくなると見て、「インド洋とペルシア湾はつながっており、海軍の作戦は分けられない」とか、「テロリストはアフガンからイラクにも行っている(!?)」「日米関係のためには何が何でも延長を」などと弁解し、高村正彦防衛相は「給油新法」にも言及している。いずれも国民と立法責任を無視するもので許せない。

対案は民生か派兵か

 他方、参院で第一党となった民主党は延長反対では大勢は一致しているようだが、「対案」の内容もまだまとまっていない。民生支援に限るのか、民生支援を増やしつつISAFへの新たな軍事支援に踏み込むのか、注目する必要がある。
 なぜなら、シーファー米大使に特措法延長反対を表明した小沢一郎代表は、ISAFを安保理決議に基づく「PKO的なもの」と評価、参加の意向を伝えたという。もしISAFに参加となれば、政府・防衛省さえ断ってきた陸自部隊のアフガン派兵になりかねない。ISAFは「安定と平和維持」を掲げて出発したが、その後アフガン全土に活動を拡大、今では米軍とともに掃討作戦を行っている。
 最近、佐藤正久参院議員(サマワの元陸自隊長)は、「情報収集」を口実に戦闘中の外国軍に駆けつけ、「あえて巻き込まれ」応戦する意思があったと語ったが、個人的意図ではなく計画文書が存在し、それは92年のカンボジアPKOの時から検討されていたともいう。
 小泉前首相はかつて「自衛隊がいる所が非戦闘地域」と答弁したが、実は自衛隊が故意に戦闘に参加するシナリオが存在したのだ。
 テロ特措法は失効させるだけでなく、いかなる形の派兵新法も許さず、非軍事の国際協力を進める必要がある。


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