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第156回通常国会参議院議員又市征治の質問・意見

2003年7月1日 総務委員会
(1)住民・議会の目を遠ざける地方独立行政法人化
(2)自治体の資産喪失につながる独立行政法人化
(3)法案への反対討論

又市征治君
 社民党の又市です。
 先ほど来からのずっと答弁を聞いておりますと、地方でだれがこの法案(地方独立行政法人法案)を求めているのか。ごく一部の公立大学以外は余りいないん ではないかと、こんな感じを受けてしようがない。にもかかわらず、この法案は非常に大きな網を広げているという、こんなふうに思います。
 そこで、法案第二十一条に該当する事業は全体で何件、職員で何人程度、事業規模何兆円程度が適用範囲だというふうにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。

副大臣(若松謙維君=総務副大臣)
 お答えいたします。
 まず、地方独立行政法人制度の対象となります事業のうち、試験研究機関につきましては、都道府県分のみ把握しておりまして、箇所数が平成十四年三月三十一日現在で八百二十七か所、職員数が平成十四年四月一日現在で二万二千五百三十四人であります。
 公立大学につきましては、平成十五年四月一日現在で、四年制大学七十六校、そのうち短期大学部併設大学十七校、そして短期大学三十校で、計百六校でござ います。教職員数が、平成十四年五月一日現在で二万五千百十八人、決算額が、平成十三年度決算で五千百三十六億円でございます。
 公営企業につきましては、平成十三年度決算におきます簡易水道事業を含む水道事業、そして工業用水道事業、交通事業、電気事業、ガス事業及び病院事業 で、地方公営企業法の全部また一部を適用しているものに関しましての事業数が三千九十三事業。職員数が三十四万九百十人と。決算額が十一兆一千九百六十八 億円。土地や償却資産等の有形固定資産総額が三十八兆一千五百十億円。
 最後に、社会保険施設につきましては、平成十三年十月一日現在で、箇所数として三万八百七十七か所、職員数が二十四万六千七百七十二人でございます。

又市征治君
 この法案で、言って みれば地方公営企業法が非適用の企業にもこの法案は政策次第で拡大適用される。これらを含めると約六十九万人ぐらいですよね。これだけ膨大な職員や事業量 について法的位置付けを変えるのに、全体像、そういう意味では必ずしも正確にどこまで適用するかどうもはっきりしていない、こういう感じがするわけです。
 いろいろと聞いてみますと、調べてみますと、先ほど来からずっと出ているんですが、大学についていえば、国立もそうですけれども、公立も随分と反対の声 が多く寄せられています。また、試験研究機関は、国のそれに比べてみますとみんな小規模なものが多いわけでありますから、個々に独立させる財政的基礎も、 あるいはメリットもない。さらに、地方公営企業は、既に現行法で企業管理者や中期計画を持っておりますし、職員も労働組合法などの一定の権利がある。メリットは何もなく、予算等が議決されなくなるという住民側のむしろデメリットがあるのではないか。まして、福祉施設や公共施設関連については、これは必ずしもどうもしっかりと把握をされていなくて、今後の政策委任事務、委任だと、こういうふうにおっしゃっているんだろうと思うんです。
 もっと、そういう意味では、慎重に精査をして範囲をきちっと定めて、そして、どうしても今必要だと言うのならば種類をやっぱりもっと絞って提案されるべきだったんじゃないか、こういう感じがするんですが、その点はいかがですか。

政府参考人(畠中誠二郎君=総務省自治行政局長)
 お答えいたします。
 国の場合は、先生おっしゃるように、ニーズが出てきた都度、個々の法律によって設立するということが可能でございますが、地方の場合はそういうことがで きませんので、この法案の考え方としましては、行革大綱で、国における独法化の実施状況を踏まえて地方への導入を検討するとされておるところから、国にお ける各種の独立行政法人が現に行っている具体の事業と同種のものを基本にいたしまして、それから、地方公共団体独自のニーズも考慮しまして可能性のある事 業をこの法案で網羅したということでございまして、具体的に申し上げれば、試験研究、大学の設置、管理、地方公営企業、それから社会福祉事業、それから政 令で定める公共的な施設の設置、管理という類型を設定したところでございます。
 ただ、これは、先生がおっしゃるように、これがすべて一遍に独法化になるか、そのニーズがあるかということにつきましては、これがすべて短期間に独法化 になるということは私どもも考えておりませんで、大臣も度々申し上げておりますとおり、選択として、選択の可能性として規定したということでございます。

又市征治君
 そこで、大臣にお伺いをしますが、自治体と住民にとっては、この公営企業だけでも毎年十三兆円余りの議決予算が議決されなくなる可能性があるんではない か、こう思うわけで、議決についていえば、せいぜい三年ないし五年に一度の目標改定や値上げのときだけになる。一般会計等からの交付金が予算議決されると いうわけですが、公営企業でいえば繰入金は年に今一兆五千八百億円、こういう数字なんですが、事業全体の約一割ですね。しかも渡すときにしか議決権がなく なる。その約十倍の現行法上の公営企業の歳入歳出は全く議決がなくなる。これは、議会の権限の縮小であり、住民主権の縮小であり、それと裏腹に首長への権力集中、こんなことになるわけですが、これに代わり得る担保、それはどういうふうにお考えになっているんですか。

国務大臣(片山虎之助君=総務大臣)
 この議会の関与を少なくするということがメリットの一つなんですよ。
 だから、基本的なことは、それは議会がやるんですよ。設立、定款の変更、料金の上限の設定、中期目標の作成、変更、条例で定める重要な財産の処分、ある いは解散、それから毎年議会に報告する事項も幾つも重要なものはあるんです。できるだけ議会や設立団体の関与を縮小して自由にやらせるというのに意味があ るんですよ。日本郵政公社みたいなものですよ。あるいは国の独立行政法人で、がんじがらめにしないというところに意味があるんですよ。それでもやりたいと いうところにそれじゃどうぞということなんで、この制度を、メリットを感じる人、メリットにできるところだけがやりゃいいんですよ。みんなやらせようなん て思わない。
 そこで、委員が言われるように、全く危なくない事業だけに絞って、危なくないような仕組みで関与を一杯にしてやらせるというのは今までのやり方なんです よ。もっと自由にやって、失敗しても責任を取る、それが地方自治なんですよ。失敗するのも地方自治、失敗して責任を取るのも地方自治。失敗したら首長や議 員さん替えりゃいいんですよ、選挙で。それが議会制民主主義なんですよ。
 危なくないように護送船団みたいにやるという今までのやり方を私は直す必要があると思っております。

又市征治君
 首長にとっての効率化が住民の利益に必ずしも結び付かない、こういうケースも、先ほど来から出ているような三セクやいろんなことでもいろいろとあるわけです。
 そこで、歯止めについて一つ見解を伺いたいわけですが、この評価委員会は、法案第十一条で、附属機関としてメンバー等は条例で柔軟に決めろと、こうされているわけですが、しょせんは首長の任命制ですよね。実効性を持たせるためには、長に対する勧告権を持たせるべきじゃないか、こう思います。
 また、八十八条で、長の立入調査権を定めていますけれども、この評価委員会にも調査権を持たせるべきではないかということですね。
 さらに、評価委員会と住民及び議会との関係は、長を通さずに直接にもルートがあり得るものとすべきじゃないか、こう考えますが、どうですか。

政府参考人(畠中誠二郎君)
 評価委員会の人選等については、お答えいたします。評価委員会の委員さんの人選等につきましては、先生御指摘のとおり条例で定めることになっておりまして、その当該評価について経験のある有識者が人選されることになろうかというふうに考えております。
 また、業績の評価につきましては、毎年度の実績について評価委員会が評価し意見を申し上げることになっておりますし、中期目標が終了後につきましては、 設立団体の長がその組織の在り方について廃止、民営化も含めて見直すということになっておりますし、その見直す際に評価委員会の意見を聞くということも規 定されておりますので、この点につきましては国の独法の評価の仕組みと基本的には同じ仕組みになっておるところでございます。

又市征治君
 いや、ちょっととんちんかんな答弁なんで。あなたは、さっき大臣に聞いたことをあなたは今答えている。そうじゃなくて、評価委員会に実効性を持たせる、 そういう方策について私が提案をしたのをあなたはどう考えるかと今のところ聞いているんですよ。そこのところはもう全然食い違いがある。
 もう一遍答弁願います。

政府参考人(畠中誠二郎君)
 失礼いたしました。
 私ども、評価委員会が実効性のある評価ができるように、国の独法の評価について規定されているところに準じた仕組みを導入したわけでございまして、評価 に当たって、例えば設立団体から意見を聞くとか、独立行政法人、いや、地方独立行政法人から直接意見を聞くというようなことも可能であろうというふうに考 えております。可能であるというふうに考えております。

又市征治君
 全く全然答えになっていないんで、私が言っているのは、その評価委員会ね、長に対する勧告権を持たせたらどうか、それから評価委員会にも調査権を持たせ たらどうか、それから長を通さずに住民と議会に対してもこのルートがあっていいんじゃないか、こういう点はいかがかと、こうお聞きしているんで、全然答弁 になっていないですよ。
 大臣、どうですか。

国務大臣(片山虎之助君)
 評価委員会というのは、やっぱりその専門家を入れて、いろんなことをそこで専門的な議論をしてもらって、サジェスチョンしてもらうんですよ、長に。長の これは言わば諮問機関的なあれなんですよ。国も同じですね。そこで、権限は長なんですよ、やっぱり。だから、その評価の結果をどう生かすかは長なんで、そ の長が決める場合のしっかりした専門的な意見をもらうと、こういうことなんで、調査権という権限はありませんけれども、しかし、それは、資料の提供は長か ら求めれば独立行政法人はいろいろ出すようになると思いますから、この辺は国の動向を見ながら、どういうのが一番有効な評価委員会の利用の仕方かというこ とについては検討いたしてまいりたいと思っております。

又市征治君
 ちょっと中途半端な答弁だったのが、今、大臣の答弁で、評価委員会の権限や住民及び議会との直接の関係を妨げないという、こういうことだというふうに私は解釈をしておきたいと思いますし、確認しておきたいと思うんです。
 それで、併せて大臣、情報公開についてお伺いをしますが、総務省研究会の二〇〇八年の報告書は、地方独法について透明性が極めて重要だから情報公開せよ と、こう書いているわけですよね。ところが、今の法案の第三条第一項は業務を公表するよう努めなければならないという、どうも一般的な努力義務しか書いて ない。情報公開とは明記していないわけですね。これは少なくとも、ちゃんとやっぱり進んだ形で研究会でそこまで出しているのになぜ後退しているのか、少な くとも情報公開と明記すべきじゃないかと、こんなふうに思うんです。これが一つと。
 もう一つは、また独立法人が第三条二項の自主性尊重を盾にこの情報公開を拒否した場合はどちらが優先するのか。少なくとも私は、同条第一項冒頭の公共上 の見地にかんがみて当然情報公開の責務が優先をされるべきじゃないかと、こう思うんですが、その点、大臣、いかがですか。

国務大臣(片山虎之助君)
 この法律には御承知のように、重要項目の公表制度を御承知のように中に書いておりまして、例えば、業務方法書、財務諸表、中期計画及び年度計画、評価委 員会による評価の結果、それから役員報酬の支給の基準等を、ここまで全部公表しろと言っていますから、公表はさせてもらう。しかし、それだけでも不十分だ というんで情報公開を求めるケースがありますよね。そういうものは、根拠はやっぱりこれは地方ですから、情報公開条例に決めてもらわなきゃいかぬと。
 だから今、情報公開条例の見直しもお願いしておりますけれども、もし情報公開条例がないところ、あるいは今条例はあるけれども、その中の情報公開機関に この地方独立行政法人が入っていないところ、まあ入っていませんわね、法律まだできていないんだから。それで、そういうものについては入れてもらって、そ の条例の仕組みの中で公開してもらおうと、こういうふうに思っておりますし、その場合、どの範囲を公表、公開して、どの範囲が非公開にするか。それ非公開 にした場合のこの一種の異議の申立てみたいなことについてはどういう扱いにするか、これはちょっと慎重に検討させていただこうと、こう思っております。

又市征治君
 国としては施行通知で情報公開条例に独法を含めるように要請をしていくと、こういうお答えだったんだろうと思います。
 さてそこで、実際に考えられるちょっと地権制の問題についてただしておきたいと思うんですが、財産の処分問題ですね。自治体の財産のうち、独法に移行可 能な公営企業分だけでも土地が約四兆円、それから出資金などの投資が一兆八千二百三十億円余り、これだけでざっと大枠六兆円ぐらいですね。独法になれば、事業体が今所管する土地や施設は当然に独法へ出資その他の形で移転をされるということになろうかと思います。旧国鉄のように膨大な土地の投売りや住民の財産の解体になるおそれがある、そういう意味ではあり得る。
 そこで、法案の第四十四条で独法の条例で定める重要な財産は譲渡するには議会の議決や評価委員会の意見が必要だというふうにされています。これには何が 一体全体該当するのか、条例次第で例えば土地を外すこともできるのかどうか、この点、一つ。それからまた、法案提出に当たり移管する土地や資産、またその うち近い将来譲渡可能な分はどのくらいだというふうに試算をされているのか、この点、二つ目。この点についてお伺いをします。

政府参考人(畠中誠二郎君)
 先生御指摘のように、この独立行政法人法第四十四条で、条例で定める重要な財産については議会の議決を得ると、失礼しました、条例にゆだねられている と。規定の、条例にゆだねておるところでございますが、この重要な財産につきましては、この四十四条の規定の趣旨にかんがみれば、その業務に、地方独立行 政法人の業務に供している施設や土地などが想定されるところでございます。
 それから、どのぐらいの財産が移管されるのかと、試算をしているのかというお尋ねでございますが、まだ制度が発足しておりませんで、まだ今のところ地方 公共団体の要望を鋭意把握しているというところでございますので、残念ながら恐縮でございますが、そういう試算はまだできてございません。

又市征治君
 この財産の実態が明らかにならないまま移管され、いつでも処分される、こ ういう可能性を持っているというわけで、この法案を出す以上、たとえ自治体のものであっても、それくらいの調査はやっぱりなさっておくべきじゃないです か。それから、土地や、土地も外せないみたいな話ですけれども、これはやっぱり条例でできるだけそういうことは明確にすべきじゃないですか。その点は注文 を申し上げておきたいと思います。
 時間の関係で次に移りますが、次に、公務員型、非公務員型の選択については先ほど来からも出ていますし、衆議院でも最終的に自治体の判断でやるという答 弁がされていますね。国においては六十二のうち五法人を除いて公務員型と、こういうふうになっているわけですね。大臣認可に当たって非公務員型を強制しな いというさっきの答弁をまず一つは確認をしておきますが、その上で、一般職に関して同意抜きの身分変更ではやっぱりこれは人権侵害、契約違反で すよね。郵政を含めて国の多くの機関が公務員型に落ち着いたというのはここが重要だったからだろうと思います。特にこの点は労働団体との合意というのが大 事でありますから、国の中央省庁改革法第四十一条には、労働関係への配慮の条項がありますね。地方独法でもこれを国と同じに適用すべきじゃないかと思いま すが、いかがですか。

政府参考人(森清君=総務省自治行政局公務員部長)
 法案の第五十九条に規定がございまして、地方独立行政法人への移行に伴いまして設立団体から地方独立行政法人に業務を引き継ぐ場合には、設立団体の条例 で定める一定の内部組織の職員は別に辞令を発せられない限り自動的に当該地方独立行政法人の職員になるという、そういう仕組みとしているところでございま すけれども、これは設立団体の業務と同一の業務に従事する者につきましては、当該地方独立行政法人の職員として引き続いて身分を自動的に保有し続けること ができるという形を法律上措置したものでございます。
 このことはつまり、同意を不要とするこの取扱いは、国の独立行政法人に係る各個別法における取扱いと同様の取扱いとなっているものでございまして、法律 的な問題はないと考えておりますけれども、なお中央省庁等改革基本法第四十一条の規定に関係する部分でございますが、地方独立行政法人への移行が行われる 場合には地方独立行政法人の設立前に関係者が十分な話合いをされて、意思疎通を図りながら移行をされていくものではないかというふうに考えております。

又市征治君
 改革法四十一条の配慮とはちょっと違う趣旨のようにお聞きをしましたけれども、善意に解釈して、合意の上で全員が移行すると、こういう答えだったというふうに確認をしておきましょう。
 そこで、先ほど来も一つ出ていましたが、水道の問題についてお伺いをしておきたいと思いますが、上水道は独立法人化する案になっておって、下水道は現状 どおり公営企業のままになっていますけれども、両者は正に文字どおり流れ、水循環の一環でありまして、一つの部局で運営している自治体も多いわけですね。 水道局、こういう格好の中で上下水道一緒にやっている。こういう格好の中であるわけですが、この経営形態の二分化というのは正にそういう意味では効率化を 含めて実にマイナスではないかと、こう思えてしようがないんです。水道と一般行政の関係については、総務省の三月の研究報告で水道は更新時期を迎えて多額の投資も必要だと、こう言っているわけですね。一般会計の支援が必要なときにわざわざ自治体の外側、議決予算の枠外へ移すというのは住民の議会への理解を遠ざけるものじゃないかと、こんなふうに思えるんですが、その点いかがですか。

政府参考人(林省吾君=総務省自治財政局長)
 公営企業型の地方独立行政法人制度の対象といたしまして、水道事業を始めとして八事業を対象と考えているわけでございますが、これらを独立行政法人に移 行するか否かということは、繰り返しになりますが、地方公共団体の自主的な判断にゆだねられるものでございます。が、水道事業につきましては、公営企業と しての定着度等を考えまして、制度上、公営企業型地方独立行政法人の対象として位置付けることが適当である、こういう判断をして御提案をさせていただいて いるわけであります。
 御指摘の法人への議会の関与につきましてでありますけれども、設立団体の長が議会の議決を経た上で、中期目標におきまして住民に対して提供するサービス その他の業務の質の向上に関する事項等を定めることといたしておりますし、それから、お触れになりました施設の更新等につきましても中期目標、中期計画に 盛り込まれることになっておりますが、これにつきましてもあらかじめ議会の議決を経なければならないこととする等、設立団体の一定の関与を保ちつつ事務を 行わせることといたしているところでございます。
 水道施設につきましては、確かに大量の更新期を迎えておりますが、その更新に当たりまして多額の投資を要することが予想されるわけでありますが、こうし た場合におきましては設立団体からの長期借入れを認める等、現行の地方公営企業の場合と同様の財政制度となるように検討いたしているところでございまし て、必要な施設の更新等に、設備の更新等に支障を来すおそれはないものと考えているところでございます。

又市征治君
 こうして聞いてまいりますと、今どうしても独立行政法人を地方に導入する理由、どうも明らかでありませんし、範囲も可能最大限広げるだけ広げた格好、こ ういう格好に見えるわけですね。国がやれと言うからやりますという式に自治体がこれに移行して、混乱を招きかねない、小さな自治体なんというのはそういう ことになりかねません。
 改めて、業務の効率性であるとか質の向上、透明性の確保などの観点から、大臣が重ねておっしゃっておりますけれども、選択肢をあくまでも広げたものだ と。そういう意味で、自治体がこれを導入するかどうかは、あくまでも自治体側の主体的、自主的な判断、慎重にそれは判断されるべきものだろうと思います が、そうした自治体の判断を強制をしたり、ゆがめることがあってはならない、そのことを強く要請をして、私の質問を終わりたいと思います。(中略)

又市征治君
 私は、社会民主党・護憲連合を代表して、地方独立行政法人法案及び関係法律整備法案に対し反対の討論を行います。
 元々自治体の公共事務として、生活用水を不自由なく供給したり、過疎地を含めて市民の交通の足を確保し、また医療サービスを提供するなど、住民の生活に密着したニーズにこたえることは、極めて地道な、地方自治法のうたう住民の福祉の仕事そのものです。
 だからこそ、公営企業の形を取っていても、病院を始め赤字部門もあり、一般会計補助を含めて成り立っています。それでもあえて効率化をというなら、住民や議会の目から遠ざけるのではなく、むしろ首長や特権官僚の専断を抑え、住民の民主的監視を強めることによって達成すべきです。
 この法案により自治体から分離させられる可能性がある事業、職員数、財産や事業規模は、いまだにその概要さえ総務省から示されていませんが、法的には最小でも職員六十数万人、事業費十二兆円以上になります
 ところが、この法案は、この膨大な職員と事業について、

第一に、議会の関与と住民の監視機能を著しく後退させるものです。独立法人化すれば、議会の関与は三年ないし五年に一度の抽象的な中期目標などに限られてしまいます。住民監査請求や住民訴訟の前提となる監査の範囲も、自治体からの支出分に限られてしまい、住民によるチェック機能が失われる危険性があります。

 第二に、事業評価の在り方です。理事長人事は首長の一存で決まるし、法人の実績等を評価するという評価委員会も首長の附属機関にすぎないため、財務会計や経営効率のみを重んじて、住民の福祉やサービスが軽視されることが懸念されます。

 第三に、事業の存廃そのものの危険です。地域において確実に実施される必要のある事務事業でありながら、三年ないし五年ごとに解散、清算のおそれが生じ、安易な民営化や事業廃止に拍車が掛かる危険性を内包しています。
 職員も、独法化によって一方的に身分が変更され、雇用は継続される保障がありません。給与決定も、公共事業であるのに経営実績次第となり、全体の奉仕者ではなく、法人経営、収益のために働くことになりかねません。

 第四に、公立大学、試験研究機関の扱いです。これらはそれぞれの地域の文化、産業の長い伝統や地域ニーズを踏まえて公立で運営されてきたのです。しかし、独法化により教育研究よりも効率性が優先され、誤った成績主義、無用な競争、ひいては独創性の喪失、大学の自治の破壊につながりかねません。

 第五に、地域住民の財産である公有地や出資、分かっているだけでも六兆円が独法への移行に伴って自動的に移管される可能性があります。効率化や赤字解消の美名の下に、これらが売却等で失われるおそれは強くなります。
 以上、この法案は自治体の本来の責任の放棄、安上がり化、住民サービスの危機につながることを指摘し、反対討論といたします。


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