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富山県における合理化攻撃の現状と反撃の課題
                  

1 はじめに 

 いま、富山県も全国の多くの自治体同様に危機的な赤字財政に直面している。昨年11月、24年間余も続いた中沖県政から石井県政へバトンタッチされた。石井驤齟m事は総務省(旧自治省系で消防庁長官を最後に退任した。)で、自民・公明・民主・連合に加えて、社民も推薦するという総与党体制のなかで37.27%という知事選史上最低の投票率の中で対抗馬の共産党候補を破って誕生した。
彼は『選挙マニュフェスト』で行革断行を宣言していたが、富山県職労も支持したのである。 
        
 石井知事は、就任直後から始まった2005年度県予算編成過程で、「小泉内閣の進める三位一体改革の中での地方交付税の2年連続のカット(富山県では△255億円)、04年度末で9,721億円に達する県債残高に対する公債費の増加、扶助費の増加、80億円と見込める歳入減で、約400億円の財源不足が見込まれる」と発表した。
その後、「シーリングによる減で約50億円、事務事業の見直しで約70億円、増収分47億円を見込んでも230億円が不足」(石井知事)という。

 その不足解消のために、基金の取り崩し等で97億円、50億円の『財政健全化債』の発行、そして県当局は予算案の確定時期が差し迫った1月下旬に、組合に対して「当面3年間給与の3%削減(管理職は5%削減)を提案した。(このことで24億円支出削減できる(県当局))(※この提案をめぐり組合執行部は知事と2回の対話集会を行い、2月17日未明に「この間の県財政運営の責任追及を行わず」、「財政再建に向けて努力する」ということで賃下げ提案を了承した。組合執行部は「闘争」をしていないので、あえて「妥結収拾」という表現は適切ではない。この間の取り組みには多くの問題点が指摘されるがここでは触れない。)

 提案自体、全国的にまず手始めに行われている管理職手当削減にはほとんど手をつけず、新規採用者も含めて全国的にも最低ラインと当局も認めている若年層部分の賃金も一律削減という大きな問題もあった。また50億円の『財政健全化債』の発行についても、今後の人員削減を前提にした借入債であり、今後一層の首切り宣言に他ならない。「一人削減と引換えに2,500万円借り入れするということで、200人の職員削減手形の発行」といった方がわかりやすい。

 富山県の赤字財政は深刻で、ますますの行革の推進が危惧され、県当局から「このままでは赤字再建団体に転落する」という脅しも強まっている。この間、組合は『闘えばますます孤立を招く』という不安で躊躇後退を重ねている。職場にはアキラメと閉塞感が強く、いまの現状どのように打開するかが問われている。

※赤字再建団体とは何か?
 「このままでは赤字再建団体になる」(石井驤齟m事)といわれているが、赤字再建団体とは、正式には「準用財政再建団体」と言い、赤字が大幅に膨らんで自主再建が困難になった自治体を救うために総務省が法律に基づいて指定する団体のことである。具体的には、標準財政規模の5%に相当する赤字を出した自治体のことで、ちなみに、都道府県は5%で赤字再建団体に転落する。富山県では、130億円程度の赤字で再建団体になることになる。
 では、赤字再建団体になると県民にはどんな影響が出るのか。真偽のほどはよくわからないが、「鉛筆1本、箸の上げ下ろしまで指示される」と言われるように「財政再建計画」に基づき、国の厳しいチェックが入ることになる。 最近では1992年に福岡県赤池町が唯一再建団体になっているので、それを事例としてみてみたい。赤池町は当時赤字額のライン5億円に対して32億円の赤字を出した。そこで赤字再建団体からの脱却をするため以下の施策がとられている。

1 人件費の削減  16あった課を13に 行政組織の縮減   169人の職員を155人に、24人の臨時職員を10人に、給与の据置き、時間外手当の削減(7%→3%)、ラスパイレス指数を98.2から87.4%に。町長はじめ特別職の報酬を全国最低レベルに。議員定数を18→16に削減。

2 事業費の抑制   地方債を抑制し、支出を見直す。国や県から助成される補助事業以外の事業を原則禁止。指定されるときに作成した「財政再建計画」に基づいて、国・県の厳しいチェックが入り、毎年度の予算編成に際して、その計画から増減がある場合は、国・県と協議し承認を得なければならない。町は、必要最小限に事業費を抑制した。

3 市民負担の増大   水道料金は5年毎に12%増、体育施設使用料は5年毎に25%増、町営住宅家賃は23.2%増、学校給食費は町の助成や軽減措置をなくし国の基準まで引き上げて15%増、商工会など各種団体への補助金は半分以下に削減などの措置をした結果(もちろんこれだけではありませんが、赤池町では赤字解消が順調に進み)2001年12月13日に総務省より再建完了の確認を得て、2000年度で再建期間を終了している。赤池町では猛暑のさなかに、庁内にクーラーさえ設置されていなかった。また道路の簡単な補修工事は職員自らが行った、と報告されている。同町には全国の自治体や議会から視察に訪れその数は400件に上ったという。マスコミによる報道も頻繁に行われ全国唯一の不名誉な体験をした自治体が、財政再建の先駆的な取り組みとして紹介された。 「再建団体になってイチからやり直せ」と言う人もいますが、「再建中に当該地域の産業・経済は壊滅的になる」可能性もあり、再建に向けた道のりはまさに「いばらの道」といえる。
 
2 より一層の『行革』断行
 いま、富山県でも赤字財政を背景にますますの行革合理化が推し進められている。以下に列挙する。
1) 賃下げ 
  赤字財政に至った行政運営の責任を棚上げし、その一方、ますますのスリム化・効率化で行革を推進し、今年4月から当面3年間とする一般職3%、管理職5%の賃金切り下げを行った。
  いま、地域給の導入や評価による昇給差別や給与制度の大改悪等が2005年人勧の焦点になっているが、これが導入されれば50歳代では10%を超えるさらなる大幅な賃金ダウンであり、退職金や年金も含めて大きな生活の打撃を蒙る。自治労組織を上げての全国的な反撃の闘いが求められている。  
  加えて、県的にはこれまで改善を積み上げてきた特殊勤務手当の改悪も継続課題で、今秋闘の課題の一つである。
  時間外労働の削減もこの間連年「対前年度比10%削減」が毎年目標に掲げられている。

2)「新年度から5ヵ年で10% 416名の職員削減」を一方的にマスコミ発表し、有識者・民間経営者等で構成する『富山県行革推進会議』に諮るなど一方的に人員削減合理化を進めようとしている。『富山県行革推進会議』ではますますの行革推進について言いたい放題である。

3) 組織のスリム化 出先機関の見直し
  地方独立行政法人化の検討   県立大学 農業技術センター 工業技術センター
  指定管理者制度導入検討    管理委託の66施設に
                  現在直営の  132施設にも導入検討  
  ※ まずは、施設の存続の必要性について検討し、引き続き行政が設置管理する必要があると判断するものについて、管理主体を見直し(市町村への以上の検討)。その上で県の施設として存続する必要があるのと判断したものについて、原則として指定管理者制度に移行する。
  民営化又は廃止検討     福祉施設 流杉老人ホーム、学園等
  市への施設移管検討     青少年の家
出先機関の集約合理化   3県税事務所を10月から富山総合庁舎に集約統合し、さらには土木センターと土木事務所の統合なども検討

4) 成果主義賃金の導入
業績評価制度の試行実施(2004.10〜12. 2005.7〜12.想定)
  相対評価で差別分断し、評価結果を賃金に反映を目指す。現在、14職場での試行結果を踏まえて問題点の検討協議実施。

5)研修体制の強化
選択必修研修単位取得を昇格査定に結合するなど研修制度の強化。(詳細は『自治体労働運動研究』2003年 月号に掲載)

6)OA化推進
『電脳県庁』をめざし、一人一台のパソコン体制整備と電子決裁・庶務事務の合理化推進
  ICチップ入り名札の全職員配布  →(着用義務を付け)

7)外郭団体の統廃合
  業務公社に対する「庶務事務委託契約」の継続廃止で土木センターや土木事務所で働いていた事務職員11名全員に対して解雇攻撃
  『富山県行革推進会議』はますますの外郭団体の見直しを求めている。

 8)「道州制」(府県合併)の動き
進む市町村合併の影響で、県から市への事務移譲が図られ、組織の縮小が進み、「道州制」(府県合併)の動きも加速している。
          
 このようななかで、職場では健康破壊が進み、心身の健康不安で働き続けられず定年前に退職する人が増加し、職場に欠員も多く生じている。また本庁を中心とする一部職場に限定して職員駐車場有料化(月額3,500円)が提案され、実施されれば支出増でますます生活に影響が出る。

安心して働き続け生活し続ける条件がますます奪われることに対し、職場からの行革合理化との対決が求められている。



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