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困難を極める富山県財政(第2回)

2004年度の地方財政は小泉内閣の「三位一体改革」によって極めて苦しい状況になっています。特に、地方交付税の削減が大きく響いています。富山県も例外ではありません。でも、苦しいのは「天災」なのでしょうか?何かにつけて、「これまでも『適切に』運営されており・・・」と言われますが、はたして、本当に「適切」だったのでしょうか?

○     富山県も2005年度は予算編成不可能?

 全国の自治体が2004年度の予算編成に苦労しました。富山県も含め、極めて多くの都道府県知事・市町村長が政府に対して「文句を言う」、かつてなかった事態になっています。総務省へ抗議の意味を込めて赤字予算を編成する自治体まで出る状況です。一度作った予算を組み直し、基金を崩し、何とか格好をつけたが、財源の確実な見通しのない「カラ財源」での予算編成を行った自治体が少なからずあるようです。中には、寒冷地手当のような生活費にまで手を突っ込むところ(長野県)もありました。「長野県のように、予算削減方法として一律カットをするのは、どの事業も質が劣化するだけで一番悪い。長野県は基金取崩で2004年度は予算編成をしたが、基金がないので2005年度の予算編成は無理でしょう。」(澤井勝奈良女子大学教授)との見方があります。富山県も大半の基金を取崩した以上、2005年度予算編成は極めて困難となりそうです。

○     富山県も例外でない地方交付税の大幅削減

「財源がない」のは、地方交付税の大幅削減という事態になるからです。2004年度地方財政計画では、約16兆8,900億円(前年度比1兆1,800億円減)、「自治体にとりあえず借金してもらい、あとで交付税の計算に入れる」臨時財政対策債が約4兆1,900億円で、合計約21兆800億円(前年度比2兆8,589億円減、11.9%減)となる予定です。こんなに減るとは思わなかった各自治体が蒼ざめてしまったのが、今回の予算編成です。

地方交付税のうちのほとんどを占める普通交付税は、基準財政需要額(計算上の行政需要額)から基準財政収入額(計算上の収入額)を引いた差額となります。税収が落ちると計算上の収入は落ちるので、自ずと普通交付税は大きくなります。2003年度一般会計当初予算の段階では、現ナマの普通交付税が1,555億円、現ナマが足りないのでとりあえず借金してあとで交付税の計算に入れる「臨時財政対策債」が380億円、合計1,935億円の交付税相当額がありました。これが、2004年度当初ではそれぞれ1,400億円、280億円で、合計1,680億円と、255億円の減少となりました。県税収入が増える見込みがないため、一気に苦しくなりました。

 地方交付税の減額要因の大きなものに「地方交付税特別会計」の赤字があります。2002年度時点で46兆1,000億円の赤字があり、うち30兆3,000億円は地方負担分とされています。しかし、1991年度末には、少なくとも地方負担分の借金はゼロでした。1992年度の政府の補正予算で法人税の落ち込みによる交付税減額があり、その補填のために借入が復活し、今日に至っています。歳入面では企業・高額所得者減税が続き、歳出面では景気対策のために公共工事を総動員すれば、結果は明らかです。

○     富山県の取り崩した基金の実態

基金については、3種類に分けられます。2002年度までの県の基金残高の推移を見ると、借金返済のための減債基金は、1992年度には645億円あったのが2002年度で165億円まで減少しています。単年度収支の過不足の調整に使う財政調整基金も、2002年度で28億円しかありません。この2つの基金について、2004年度当初予算で150億円取り崩したのですから、あとのない状況になりました。

一方で、2004年度は減税政策の財源不足の補填のための借金「減税補填債」の一括償還の時期となっています。富山県では対象分元金が71億9,900万円あります。借金したあとで返済用に交付税の計算に考慮されたため、建前上は借金返済用資金が減債基金に入っているはずですが・・・基金の実態をみれば、実際はどうか、一目瞭然です。

○     1億円の元手で10億円分の公共事業

特に公共事業(工事)については、「真水」のお金が100%来るわけではありません。例えば自前で1億円の資金を用意し、残り9億円は借金でまかない、その借金のかなりの部分があとで普通交付税の計算に組み入れられる、という仕組みです。できるだけ多く交付税で面倒見てもらえるものを「有利な借金」と言ってきました。しかし、借金は借金です。あとで返さねばなりません。やってくる普通交付税額はあくまでも計算上のものなので、借金返済用資金も必ずしも100%来たかどうかはわかりません。それでも国は「あとで計算上面倒を見る」としてきたわけですから、一応の借金返済用資金は県に入って基金にあるはずです。しかし、「有利な借金」にどっぷり浸かってきた結果、借金も多ければ、基金も底をつくことになっています。

さらに、2004年度以降は交付税の大幅減が続くとみられます。「あとで面倒をみる」と約束された借金返済用のお金も全部は入ってこないことが確実になりました。

自治体は、これまでも、財源不足や減税政策の補填のため、地方債を発行しています。これでできた財源は大半が公共事業に回されたとされます(地方自治総合研究所 高木研究員 評)。

特に1990年代、土木協や農林協では「次から次へと補正予算が来る。いくら残業しても処理できない。こんな予算は受けないでもらいたい。」と言い続けたものですが、土木・農林の部当局は「やらねばならぬ。受けてくれ。」の一点張りであったことは、記憶に新しいところです。無理を続けた各部中枢の判断が今日の財政状況の大きな原因であることを、今一度確認しておくべきでしょう。

○     賃金へのツケ回しがある?!責任者出て来い!!

地方交付税は定期的に自治体に渡されます。年度の1回目は7月頃といわれます。だいたいいくら入るかは、事前に見当がついていますが、地方税収入や歳出状況等の要因もあるため、実際に入ってくる交付税金額を見て「お金が足りない。事業停止。」という掛け声のかかる自治体も全国的に出てくる(澤井教授見解)可能性があります。澤井教授は「そうなったら、不要不急の事業を見直す意味でも思い切って事業を止めてみるべき。」と述べています。しかし、実際にそうなったら、職場では相当戸惑うことになるでしょうし、社会的影響も大きくなりそうです。私たちの賃金への「ツケ回し」もあるかもしれません。

「交付税」なんて普段考えることのないものを何で考えなければならないのか。このままでは、財政運営の破綻が目に見えているからです。「有利な借金」を合言葉に、将来のことも考えないで事を動かし続け、出来上がった財政危機のツケは、一般職員、県民で処理させられることになるのでしょうか?誰かのせりふではないけれども、「責任者出て来い」と大声で言いたい。(以下次号)







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